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【大型免許とは】取得条件やかかる費用・乗れる車など解説
大型免許とは?
「大型免許」(大型自動車運転免許)は、以下の条件に満たした車種を運転できる免許です。
- 車両総重量:11t(11,000kg)以上
- 最大積載量:6.5t(6,500kg)以上
大型免許を保持していれば、ほとんどの四輪乗用車・貨物車を運転できますが、同時に取得までの道のりや条件が厳しいです。
しかし、大型免許を得ていることで就職の際に職業選択の幅が広がったり、給料アップに貢献したりするケースもあります。特に、荷物の配送や人の輸送などの仕事で求められる資格に大型免許の所有が優位に働くでしょう。
大型免許の取得条件
大型免許の取得条件で課せられているのは、以下の4点です。
- 年齢が満21歳以上
- 下級の運転免許を取得している
- 運転経験が通算3年以上ある
- 身体能力をクリアしている
これらは、「道路交通法:第85条の5」にて条文が示されています。
第85条の5:大型免許を受けた者で、二十一歳に満たないもの又は大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許若しくは大型特殊免許のいずれかを受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して三年に達しないものは、第二項の規定にかかわらず、政令で定める大型自動車、中型自動車又は準中型自動車を運転することはできない。
e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)
年齢が満21歳以上
1つ目は「年齢が満21歳以上」である点です。
2007年の免許制度改正により、「中型免許」(中型自動車運転免許)が新たに導入されたため、「満20歳以上」から年齢設定が改められました。
下級の運転免許を取得している
2つ目は「下級の運転免許を取得している」です。
大型免許にチャレンジする前に、以下の運転免許を取得していることが条件に課せられます。
- 普通免許(普通自動車運転免許)
- 準中型免許(準中型自動車運転免許)
- 中型免許(中型自動車運転免許)
- 大型特殊免許
運転経験が通算3年以上ある
3つ目は「運転経験が通算3年以上ある」です。
取得可能年齢が21歳以上であると同時に、下級の運転免許を取得後、車を3年以上運転していた経験がなければ大型免許の取得権利が与えられません。
例えば、満18歳を迎えて直ぐに普通免許を取得し、3年以上一定の車両を運転していれば、大型免許の取得資格である「満21歳以上、運転経験が通算3年以上」を満たすでしょう。
身体能力をクリアしている
4つ目は「身体能力をクリアしている」です。
身体能力の詳細は、「道路交通法施行規則」第23条の“適正試験”に受験資格が示されています。特に、クリアしているべき条件は以下の5点です。
e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)
- 視力が両眼で0.8以上、各眼で0.5以上(裸眼、または視力矯正器具の使用も可)
- 赤色、青色及び黄色の識別ができる
- 三桿法の奥行知覚検査器の3回検査にて、平均誤差が2cm以下(「深視力検査」)
- 両耳の聴力が10mの距離で、90dB(デシベル)の警音器の音が聞こえるものである(補聴器により補われた聴力も含む)
- 身体の障害がない
下級の自動車免許同様、視力が両目もしくは片目で一定の基準をクリアしている、信号の赤・青・黄の判別ができるといった条件をクリアしなければなりません。免許の取得試験を受験できる資格が与えられないため注意です。
“特例”で19歳から取得できるケースも
大型免許の取得には4つの大まかな条件が課せられていますが、近年では職業ドライバーの不足により、「満19歳以上、通算の運転経験が1年以上」であれば取得試験の受験資格が与えられるチャンスが設けられました。
「受験資格特例教習」と呼ばれる制度を利用すれば、早いうちに大型車両の運転が可能となるチャンスがあります。2022年5月の「令和2年改正道路交通法」にて、高齢運転者対策の推進・第二種免許等の受験資格の見直しに伴い、誕生した新しい免許取得制度です。
▼年齢要件に関する特例を受けるための教習▼
第二種免許等の受験資格のうち、年齢要件を19歳以上に引き下げる特例を受けるための教習の課程では、旅客自動車等の運転に必要な適性(自己制御能力)に関し、座学や実車を含む7時限以上の教習を行います。
▼経験年数要件に関する特例を受けるための教習▼
第二種免許等の受験資格のうち、経験年数要件を普通免許等保有1年以上に引き下げる特例を受けるための教習の課程では、旅客自動車等の運転に必要な技能(危険予測・回避能力)に関し、座学や実車を含む29時限以上の教習を行います。
警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/jyuken_tokurei.html)
大型免許の取得方法
大型免許の取得に挙げられる方法は、2種類に分かれます。
- 自動車学校で教習を受ける【通学or合宿】
- 免許センターで一発試験を受ける
免許取得までに費やせる時間や予算に応じて大型免許の取得に差があるため、状況に応じた選択が求められるでしょう。
この項目では、2種類存在する大型免許の取得方法を解説してみました。
自動車学校で教習を受ける【通学or合宿】
1つ目は、「自動車学校で教習を受ける」です。
他の運転免許と同様、自動車学校(教習所)に入校して教習を受けるのがオーソドックスな選択となるでしょう。
免許取得までの流れは以下のとおりです。
- 入校
- 教習(第1段階)
- 仮免許検定
- 教習(第2段階)
- 卒業検定
- 適性検査
- 免許交付
大型免許の教習に対応した自動車学校へ入校して、2段階の教習と「仮免許検定」「卒業検定」を受ける流れは他の運転免許と同じです。
ただし、大型免許の取得前に所有している運転免許の種類によって、「技能教習」を受ける回数が異なります。「学科教習」は既に下級の運転免許を取得する際に受けているため免除されているものの、技能教習はそれぞれの状況に応じて取り組まなければなりません。
自動車学校にて卒業検定を受けたのちに視力や聴力などの「適性検査」を受けて合格すれば、晴れて大型免許を得られます。
技能教習の目安時限数
大型免許の取得で、技能教習にかかる時限数の目安を提示してみました。
通学or合宿から選べる
自動車学校に通うケースでは、「通学」もしくは短期集中型で「合宿」と、いずれかの方式から選択します。
通学方式なら、日常からの生活リズムに合わせ、仕事や学校の合間に通いたいならおすすめです。
一方、合宿方式は、都心から離れた郊外の自動車学校で、長期休暇などを利用して受講するのが特徴。短ければ2週間程度と、集中したスケジュールで教習を受けられるのがメリットです。まだ学生であったり、長期休暇が取れたりする立場の人であればおすすめです。
免許センターで一発試験を受ける
もう1つが「免許センターで一発試験を受ける」方法です。
自動車学校で教習を受けずに、それぞれの都道府県にある最寄りの免許センターへ出向いて運転免許試験に臨みます。自動車学校へ通う費用を抑え、早期に大型免許を取得したいなどの理由がある人が受験します。
免許取得までの流れは以下のとおりです。
- 適性検査
- 仮免許技能試験の受験
- 路上練習
- 本試験の受験
- 講習の受講
- 免許交付
1つ目にパスしなければならないのが適性検査。受付で受験申し込みを済ませたのち、視力や聴力などの適性検査に問題がなければ、そのまま「仮免許技能試験」へ進める流れです。
仮免許技能試験を受け合格すると、仮免許が交付され、路上での練習が可能となります。
ただし、路上練習は「本試験前の3ヶ月以内に5日以上行うこと」が定められており、練習時に大型免許を保有しているなど一定の条件を満たす人が同乗しなければならないルールがあります。
そして、路上練習を経たのち、本試験を受験します。「場内」と「路上」、2つのシチュエーションで技能試験が行われる流れです。
本試験に合格すると、「大型車講習」(所定:4時間)と「応急救護処置講習」(同:3時間)を受講したのち、正式に大型免許の取得が確定。免許証が受け渡される仕組みです。
一発合格するのは難しい
残念ながら、一発試験はその名のとおりに“一発合格”をするのが難しいです。
1回で合格できる可能性は低く、同じように一発試験を何度も繰り返し受ける人が多いです。自動車学校で該当の車両を使い、繰り返し構内や路上で練習できるのとは異なり、練習時間も限られているのが実情です。
配送などの仕事に就いている人で、会社側が大型のトラックやバスを貸し出し、練習をサポートしているなどの状況でなければ一発試験での合格は難しいでしょう。
大型免許の取得でかかる費用
この項目では、大型免許の取得でかかる費用を「自動車学校で教習を受ける」もしくは「一発試験」のケースに分けて解説してみました。
時間や金銭面の負担をかけて取得するか、確実性はないものの短時間かつ節約を目指すかで、かかる費用に違いがあります。
自動車学校で教習を受けた場合
大型免許を自動車学校での教習を通じて取得した場合、およそ20万円から40万円の負担が求められます。
既に所有している免許の種類によっても金額差があり、より中型免許に近ければ金額負担も少ないのが特徴です。
- 中型免許:20万円程度
- 中型免許(8t限定):25万円程度
- 準中型免許:30万円程度
- 準中型免許(5t限定):35万円程度
- 普通免許:40万円程度
ただし、自動車学校へ通って大型免許の取得を試みる際、「教育訓練給付金制度」や「人材開発支援助成金」を利用できるケースがあります。特に、会社へ所属していて業務上の都合で大型トラックやバスを運転しなければならない人はチェックしたい補助制度でしょう。
【補助制度1】教育訓練給付金制度
「教育訓練給付金制度」は、 雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とした、雇用保険の新しい給付制度です。
一定の条件を満たしていれば、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、 教育訓練施設に支払った教育訓練経費の「最大20%、上限10万円」がハローワーク(公共職業安定所)から支給される仕組みです。 大型免許も指定する教育訓練に含まれています。
ただし、以下の条件のうち、いずれかを満たしていなければ制度の利用ができません。
- 在職者であって、支給要件期間(被保険者として雇用された期間)が1年から3年以上ある。
- 離職日の翌日以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ支給要件期間が1年から3年以上あること。
- 過去に教育訓練給付金を受けたことがある場合、それから3年以上経過していること。
制度を利用する流れは以下のとおりです。
- 制度を利用できるか「教育訓練給付金支給要件照会票」へ記入し、ハローワークへ確認手続きを行う。
- ハローワークより回答書が届く
- 教習費用を全額分支払う
- 自動車学校で教習を受け、免許を取得する
- 「教育訓練修了証明書」「領収証」を発行してもらう
- 必要な書類を揃え、ハローワークにて給付金を申請する
【補助制度2】人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、会社などの事業主が雇用している社員といった労働者に対し、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるべく職業訓練を実施した際、訓練にかかった経費や期間中の賃金を助成する制度です。
人材開発支援助成金では以下の仕組みで補助金が下り、大型免許を取得する人のサポートを行います。ただし、大型トラックやバスを使った業務を行う会社に所属していなければ、利用できる権利が与えられません。
- 「受講料金」の45%分を助成
- 「受講時間」×760円=合計金額分を助成
一発試験の場合
一発試験で大型免許を取得するケースでは、仮免許試験と本試験で以下の費用が必要です。
注意しなければならないのは、「受験料」と「試験車使用料」の支払いです。
受験料と試験車使用料は受験する回数に応じて支払わなくてはなりません。ただし、免許証の交付手数料は仮免許試験と本試験に合格した際に支払います。
また、本試験に合格したあとは取得時講習を受けることとなり、受講料を別途支払うのを頭に入れておきましょう。
大型免許を取得すると乗れる車
大型免許を取得すると運転が可能となる車種の範囲は以下のとおりです。道路交通法第85条および第85条の2でも同様の内容が示されています。
e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)
- 大型自動車
- 中型自動車
- 準中型自動車
- 普通自動車
- 小型特殊自動車
- 一般原動機付自転車
大型免許には、他の運転免許では運転できないジャンルや大きさの車が存在します。以下の車両が代表例です。
- 大型トラック
- 大型バス
- ダンプカー
- タンクローリー
大型トラックや大型バス、ダンプカー、タンクローリーといずれも、“働く車”として代表的な車種たちです。物品の配送や人員輸送に携わる人には、大型免許の取得が欠かせないでしょう。
大型免許を持っていても運転できない車がある
ただし、以下の車種は大型免許を所有していても運転できません。
- 大型特殊自動車
- 普通二輪車
- 大型二輪車
「大型特殊自動車」を運転するためには別途「大型特殊免許」が求められます。ただし、小型特殊自動車は大型免許の範囲内で、運転可能です。
また、普通および大型の「自動二輪車」も大型免許の対象範囲外です。別途該当する二輪免許が求められます。しかし、「原付二輪車」であれば大型免許でも運転可能です。稀に誤って50cc以上の二輪車を運転してしまうと交通違反となるため注意しましょう。
大型特殊免許を取得するとどんな車に乗れる?条件や費用など解説
車の免許を取得できる年齢は?年齢の上限はある?
運転免許の取り方と取得の流れ・費用など解説
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...