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アッパーマウントとは?点検方法から費用・異音が鳴ったときの対処法まで
アッパーマウントとは?
上部のナットが取り付けられている部分
アッパーマウントとは、車のサスペンションの上部を、車体に固定するためのパーツです。サスペンションの上側(アッパー)を据え付ける(マウント)という意味でアッパーマウント。
主に金属とゴムを組み合わせた構造をしており、乗り心地やハンドリングを左右する重要な役割を持っています。常に車重を支え続けなければならないため、車に使われるブッシュの中でも、最もへたりやすい部品です。
アッパーマウントの役割
ブッシュとしてのアッパーマウント
アッパーマウントは多くの場合、金属とゴムで構成されています。路面から車体へと伝わる振動や衝撃は、タイヤからサスペンション、そして車体へと伝わります。
サスペンションとボディを肉厚のゴムのを使用したアッパーマウントを介することで、その振動や衝撃を吸収するブッシュの役割を果たします。
ハンドリングパーツとしてのアッパーマウント
スポーツ走行を目的として、シャープなハンドリングを目指した硬めのサスペンションを装備したとしても、アッパーマウントが柔らかくては、サスペンションの性能を使い切ることはできません。
スポーツ走行向けの車高調などには、金属とベアリングで固定されるピロアッパーマウントが採用されています。
アッパーマウントから異音が鳴ったらすぐ交換しよう
サスペンションを車体に固定するパーツであるアッパーマウントですが、他の部品と同様に、時間や走行距離が経過すると劣化が進みます。使用期間が伸びるほどアッパーマウントの周辺から軋む音がして、他の部品の劣化も早めてしまうのに繋がりかねません。
アッパーマウント周辺から違和感のある音がし始めたら、すぐにパーツ自体の交換をお勧めします。この項目では、なぜアッパーマウントを早く交換するとよいか、2つのメリットと補足ポイントを取り上げてみました。
【理由1】乗り心地や走行安定性を改善できる
1つ目のメリットは、「乗り心地や走行安定性を改善できる」です。
長く使用していて消耗したアッパーマウントは、劣化の影響で路面の振動や衝撃が吸収できなくなり、乗り心地の悪化に繋がります。
また、アッパーマウントのブッシュはサスペンションの働きにも影響を与えるでしょう。ブッシュにヘタりが出てしまうと、サスペンションの性能を発揮できず、乗り心地や走行中のハンドル操作にも影響が出てきます。
アッパーマウントを早めに新品へ交換すればサスペンションの性能を生かし、多彩な路面状況でも快適な乗り心地と走行安定性を手に入れられるでしょう。
【理由2】車にかかる負担を軽減できる
2つ目のメリットは、「車にかかる負担を軽減できる」です。
アッパーマウントは、路面からの振動や衝撃を吸収する役割を担っている上に、ゴム樹脂でできていることから劣化しやすいパーツです。劣化したアッパーマウントを使用し続けると、振動や衝撃が車体の他のパーツにも影響を与えるでしょう。サスペンションの故障をはじめ、駆動系のパーツにトラブルが発生しやすくなるため走行に支障が出るかもしれません。
車自体の寿命を短くするのにも繋がりかねないことから、アッパーマウントは早めの交換がおすすめです。
【補足】「新車購入から10年」もしくは「走行距離10万km」が目安
アッパーマウントで一般的に交換タイミングの目安とされているのが「新車購入から10年」もしくは「走行距離10万km」です。劣化を避けられないパーツとなるため、車検や点検、修理の際にアッパーマウントの状態をチェックするのが欠かせないでしょう。
ただし、サーキットなどでスポーツ走行を楽しんでいたり、毎日長距離走らせていたりと負荷の大きい使用を繰り返している車両であれば、アッパーマウントの劣化も早まります。もし、車検や点検の状態でアッパーマウント周辺に錆などが発生していたら、早急にパーツを交換するとよいでしょう。
アッパーマウントの点検方法
この項目では、アッパーマウントの点検方法を4つの段階にわけて解説します。
上級者になればDIYでのアッパーマウント交換も可能ですが、今回は状態チェックができる手順まで解説しています。いずれも車の整備には中級者や上級者が当てはまるため、最寄りに自動車ディーラーやカー用品店、整備工場があれば、アッパーマウントの交換まで依頼するとよいでしょう。
点検前に用意したいアイテム
アッパーマウントの点検前に用意したいアイテムは以下の5つです。
- フロアジャッキ
- ジャッキスタンド
- メガネレンチ/ソケットレンチ
- インパクトレンチ
- スプリングコンプレッサー
アッパーマウントをチェックするには、車の車体をジャッキアップしなければなりません。その際に使用するアイテムが「フロアジャッキ」「ジャッキスタンド」です。
フロアジャッキには手動のパンタグラフタイプ、あるいは油圧で持ち上げるタイプの2種類が存在します。パンタグラフタイプは車体に装着されている車輪の近辺にいずれも備え付けなければなりませんが、油圧で持ち上げるタイプなら車体の前後に1つずつ備え付ければ車体を持ち上げられるでしょう。
アッパーマウントをチェックできるようにするには、タイヤおよびサスペンションを取り外さなくてはなりません。その際、「メガネレンチ」(ソケットレンチ)や「インパクトレンチ」を使用することとなります。
インパクトレンチが用意できなければ、手作業用の「十字レンチ」を使えばホイールナットの取り外しが可能です。
詳しい状態を確認するとき「スプリングコンプレッサー」があると安全
また、アッパーマウントを取り外してより詳しい状態をチェックすることとなった際、「スプリングコンプレッサー」があると安全に作業を進められます。
何も施さない状態でアッパーマウントを取り外そうとすると、サスペンションスプリングが飛び出して怪我をする可能性があります。その際にスプリングコンプレッサーを取り付けてから取り外す作業をすれば、サスペンションスプリングが急に伸びて飛び出してくるのを防げます。
アッパーマウントを自身で点検する際は、上記のアイテムを揃えてから行うのがおすすめです。
手順1:車体をジャッキアップする
1つ目の作業は「車体をジャッキアップする」です。
車体下部を見渡し、ジャッキの使用が可能である“ジャッキアップポイント”を探します。ジャッキアップポイントが見つかったら、フロアジャッキを差し込んで車体を持ち上げる流れです。
十分に車体を持ちあげられたら、ジャッキスタンドをそれぞれの車輪の近くに差し込み、急に傾くなどの事故を防ぐようにしましょう。
手順1:車体をジャッキアップする
1つ目の作業は「車体をジャッキアップする」です。
車体下部を見渡し、ジャッキの使用が可能である“ジャッキアップポイント”を探します。ジャッキアップポイントが見つかったら、フロアジャッキを差し込んで車体を持ち上げる流れです。
十分に車体を持ちあげられたら、ジャッキスタンドをそれぞれの車輪の近くに差し込み、急に傾くなどの事故を防ぐようにしましょう。
手順2:タイヤを取り外す
2つ目の作業は「タイヤを取り外す」です。
ジャッキアップができた状態で、インパクトレンチを使用しホイールナットを取り外します。インパクトレンチを使用しないのであれば十字レンチを使い、ホイールナットをジャッキアップ前に緩めておき、ジャッキアップが済んだあとに取り外すのも有効な手段です。
手順3:サスペンションを外す
3つ目の作業は「サスペンションを外す」です。
タイヤを取り外したら、車体からサスペンションを外します。アッパーマウントの取付部やサスペンション本体と「ナックル」と呼ばれる車軸を取り付けている部分のねじ、サスペンション上部に備わった「ABSホース」の固定ボルト、タイロットの固定部分が対象です。
メガネレンチとインパクトレンチを使い分け、最後にアッパーマウントの取付部を外すように進めてみてください。最初からアッパーマウントの取付部を外してしまうと、サスペンションが脱落して破損の原因となります。
手順4:アッパーマウントにダメージがないかチェックする
4つ目の作業は「アッパーマウントにダメージがないかチェックする」です。
サスペンションを取り外すと、アッパーマウントがサスペンション上部に取り付けられているのが見受けられます。錆や摩耗具合が目視で確認できる状態です。
補足:新品のアッパーマウントを取り付ける
ここからは補足となりますが、新品のアッパーマウントを所持していて、自身でのDIY作業で交換する際の解説です。
手順は以下の4段階となります。
- サスペンションスプリングに、スプリングコンプレッサーを装着する
- 古いアッパーマウントを固定しているナットは、インパクトドライバーなどで緩めて外す
- 新品のアッパーマウントに差し替えて、再びインパクトドライバーでナットによる固定をする
- サスペンションを取り付ける→タイヤを取り付ける→ジャッキを下げる、取り外しの手順とは逆の順番で車両を元の状態に戻す。
アッパーマウントを新品に差し替える以外は、取り外した際の作業手順をひっくり返しにして車両を元に戻す流れです。
ただし、古いアッパーマウントを取り外す際に、スプリングコンプレッサーを装着して固定するのを忘れないようにしましょう。サスペンションスプリングが飛び出して怪我をする可能性があるからです。
アッパーマウントの交換費用
この項目では、アッパーマウントの交換費用を解説します。
自動車ディーラーや整備工場にアッパーマウントの交換を依頼する際、目安となる費用は以下のとおりです。なお、1ヶ所分の交換にかかる費用の目安となります。
- 部品代:7,000円~10,000円
- 交換工賃:7,000円~10,000円
4輪乗用車ですべてのアッパーマウントを交換するとなると、およそ6万円から8万円程度はかかると考えてよいでしょう。
車体の片側だけ交換すると車体のバランスが悪くなることから、少なくとも左右両輪、2輪分は交換するのが定説となります。加えて、アッパーマウントでも車種や使用している種類により部品代が異なるため、部品1個あたり、1万円以上を請求されるケースも稀にあるようです。
また、4つの車輪全体のバランスを整えるため、「アライメント調整」の作業をする可能性もあります。アライメント調整をすると、上記の金額より費用負担が追加される可能性があるため、作業見積もりの際、整備担当者に問い合わせるのがおすすめです。
アッパーマウントは縁の下の力持ち
ゴム製のアッパーマウントは常に車重を支え続けるため、まさに車の縁の下力持ちといえる部品です。メーカーが10年10万kmを想定していても、へたりはそれ以上の早さで進行するでしょう。
特にフロントアッパーマウントは、重いエンジンがフロントオーバーハングに搭載される前輪駆動車では、ブレーキ時の荷重とエンジンの熱も相まって、最もへたりやすい箇所です。へたったら車を動かせなくなるわけではないのですが、異音や異変を感じたら、早めに交換したい部品であります。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...