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ミニスカートブームに対応「車の乗り降りを楽にする仰天装備」3代目スズキ アルト【推し車】

規格改正は珍車やレア車が生まれるビッグチャンス?

スズキ歴史館に展示されている3代目スズキ アルトのスライドドア車、アルトスライドスリム(660cc版)

現在もスズキの軽ベーシックカーとして9代目が販売されている「アルト」ですが、1988年に登場した3代目では、アルトと同様に安価なFF軽ボンネットバンが他社からも出揃ってきました。

その一方、税制改革で税金面から見た軽商用車のメリットが薄れ、今後の売れ筋が軽乗用車へ移ると考えられたため、軽自動車の枠内でライバルに対し可能な限りの差別化と、新たな価値観の創出が望まれた時期でもあります。

そんな中で生まれたユニークな軽自動車が、スズキ歴史館にも展示されている「アルト スライドスリム」で、回転ドライバーズシートと組み合わせたスライドドア車でした。

660cc化を見越した外観やエンジンで登場した、3代目アルト

展示車は660cc化された後なのでバランスの取れたデザインだが、まだ550ccの前期型はバンパーが短い寸詰まりだった

1988年9月にモデルチェンジした3代目アルトは、税制改革で翌年に控えた自動車関連の税制改正、翌々年の規格改正による排気量上限引き上げで660cc化を見込んだ、かなり大規模なモデルチェンジが行われました。

後の規格改正で全長が100mm伸び、フロントバンパーが大型化するのに合わせたようで、モデルチェンジ時点でのデザインは若干寸詰まり感があったものの、可能な限りボディ表面を円滑化するフラッシュサーフェイス化が図られます。

さらにドア後方のリアクォーターガラスは、ボディ上方まで回り込むほど面積が広く取られて採光性や開放感を向上、ホイールベースも当時のクラス最大となる2,335mmへと160mmも延長され、軽自動車にありがちな狭苦しい感覚を改善するよう努力されました。

エンジンも550cc以内は変わらないものの、排気量543ccの「F5A」から、ボア(シリンダー内径)を660cc化後のF6Aに合わせ、ボア×ストローク65.0mm×55.0mmで547ccの「F5B」へと更新(これをロングストローク化で65.0mm×66.0mm、657ccとしたのがF6A)。

先代末期に登場して人気だったアルトワークスも、丸目2灯の独自デザインで継続、背高ノッポの貨物用ウォークスルーバンは廃止されたものの、660cc化後にフルゴネットタイプの「アルトハッスル」が登場するなど、バリエーションは豊富でした。

わずか半年で軽乗用車版フロンテ(7代目)を統合

2代目アルトの途中で5ドア車も登場していたが、フロンテの廃止で5ナンバー(乗用)登録の5ドア車も全て「アルト」になった

しかし最大の変化は1989年4月、税制改正による物品税廃止で、物品税が軽乗用車の15.5%に対し2%と格安で安く買えた軽商用車も、一律で3%の消費税(当時)がかかるようになり、購入時のメリットが消滅、軽自動車メーカー各社は軽乗用車を販売の主力に据えました。

それまで軽商用車(軽ボンネットバン)「アルト」、軽乗用車「フロンテ」の2本立てで販売していたスズキでは、双方の車名を主力車種として定着していた「アルト」へ統一。

これで1962年以来、約27年続いた伝統の車名「フロンテ」は消滅、3代目アルトと同時にモデルチェンジした7代目フロンテは、わずか半年で廃止という国産車市場でも稀な短命車となりました。

なお、同時期にダイハツも国内向け軽乗用車名から「クオーレ」を廃止、「ミラ」へ統一しています(海外向けではその後も存続)。

ユニークな左右両側スライドドア、アルトスライドスリム誕生

助手席側もスライドドアだった、初期のアルト スライドスリム

アルトでは2代目の途中から販売していた女性向け特別仕様車「ジュナ」に、「回転ドライバーズシート」を備えていました。

ただし現在の福祉車両が装備する助手席回転シートとはコンセプトが異なり、「スカートを履いた女性が足を揃えたまま乗降するのに便利」というもので、3代目アルトでは女性向け要素をさらに強化したスライドドア車、「スライドスリム」を設定します。

一般的な後ろ開きヒンジドアだと、回転ドライバーズシートで両足を外へ振り出す際に引っかからないよう大きくドアを開ける必要があり、少しだけドアを開けても足が当たった勢いでドアパンチになりかねませんが、スライドドアならそんな心配は無用!

両側スライドドアだから、幅が狭い場所でも停められて「スリム」というわけですが、回転しない助手席側までスライドドア化した理由は、小さい子どもの同乗を見込むとドアパンチのリスクを考えたのか、あるいは福祉車両への応用を考えたのかもしれません。

いずれにせよ、開閉アシストのないスライドドアだったので、勾配がきつい坂へ停めた場合にスライドドア自体の重みで急に開閉したり、逆に開閉しにくい、半ドアになりやすいなど、実用性には難があったと言われています。

660cc化とスライドスリムの左右非対称化

スズキ歴史館のアルト スライドスリムは660cc版で、運転席側だけスライドドアなのに他のクルマの陰になっており、わかりにくいのが残念

1990年1月に軽自動車が規格改正、660ccへの排気量上限拡大と、全長の100mmアップが認められると、同年3月にアルトもマイナーチェンジして、660cc化されます。

前後バンパーの大型化で見た目のバランスは整い、アルトワークスも乗用登録の5ナンバー化されますが、もっとも変わったのはアルトスライドスリムで、スライドドアは運転席側のみ、助手席側は5ドア車と同じ前後ヒンジドアの左右非対称4ドア化されました。

回転ドライバーズシートがないため、必要性の薄い助手席スライドドアを廃止するだけでなく、確実に大人が乗降する運転席側スライドドア以外は、事故のリスクを減らそうとしたのかもしれません。

電動パワースライドドアこそなかったものの、半ドアを防ぐオートクロージャーが設定されたのもこの時らしく、実用性は多少上がったとはいえ、これだけ特殊な仕様で通常の5ドア車より3万2千円高いだけでは、コスト的に厳しかったと思われます。

結果的に、3代目後期660cc版の途中でスライドスリムはカタログから消え、その後のアルトには設定されていません。

ボンネットタイプのFF軽乗用車へ再びスライドドアを設定したのは、2006年9月に2代目へモデルチェンジした三菱 eKワゴン(助手席側後席のみ)で、ボディ外部にスライド用の溝がないインナーレール式の、近代的な電動パワースライドドアでした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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