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「麻美スペシャル」って知ってる?“軟派と硬派”で女性の心を虜にした2代目スズキ アルト【推し車】

初のモデルチェンジで女性ユーザーを重視した2代目アルト

スズキ歴史館に展示されている、2代目アルト 麻美スペシャル

1979年、「軽自動車ユーザーのほとんどは1~2名乗車のパーソナルカー用途」という割り切りから、物品税が安い軽商用登録、標準装備の徹底的な簡素化で「47万円」という超低価格を売りにして大ヒット、軽ボンネットバンブームを巻き起こした初代アルト。

長らくスズキの看板車種だった軽乗用車フロンテから主力の座を奪い、ライバル各社が後追いしたFF軽ボンネットバンが出揃った1984年、アルトは初のモデルチェンジを敢行、2代目となりました。

特徴的だったのは、単に特別仕様車を設定するだけでなく、明確に女性をターゲットとした装備充実に力を入れたことで、化粧品やファッションブランドのCMへ出演し、同年には「雨音はショパンの調べ」で歌手としてもヒットしていた小林 麻美のCM起用。

美しく儚げな女性と軽自動車を結びつけるイメージがなかった時代には斬新で、「麻美スペシャル」という特別仕様車を3回もリリースしています。

回転ドライバーズシートなど女性向け装備充実の軟派路線

どちらかといえば古風なクールビューティー系の小林 麻美と雰囲気は異なるが、とにかく女性向けをアピールしたかったのであろう明るい内装

安さが魅力の初代アルトでも女性ユーザーは意識したものの、単に安くてお財布に優しく、運転しやすいだけでなく、デザインや装備面でも明確な女性志向を打ち出した軟派路線のモデルチェンジを決行した2代目アルト。

小柄な女性でも運転姿勢を最適に調整しやすくするよう、ハンドル位置を上下させられる「チルトステアリング」や、リクライニングだけでなくシート座面の高さを調整可能な「運転席シートリフター」を採用していました。

それまでの国産車では、内外装のカラーリングなどで女性に似合いそうな配色を施したり、バニティミラーをサンバイザーへ組み込むなど「オシャレ」に気を使った特別仕様車はありましたが、女性の「使い勝手」へ配慮したものはそうそうなかった時代です。

特筆すべきはスカートを履いた女性が足を揃えたまま乗降するのに便利な「回転ドライバーズシート」を備えたことで、服やシートをこすって摩耗させることなくスマートに乗車でき、3代目でもスライドドアを追加(スライドスリム)しつつ踏襲されています。

さらに、ペラペラで取り付け金具もむき出しだった初代から一転、ホールド性が良さそうでソフトな表皮を使用し、フロアやトリムともども明るい色合いを使ったシートも好印象で、ただ安いだけのクルマから品質を高める努力がなされていました。

軟派なだけじゃない!硬派で過激なスポーツグレードも充実

硬派向けにはアルトワークス以前にもこんなのがあった!アルトツインカム12RS(画像は4WD車だが、FF車はかなり速かったらしい)

ただ女性向けの軟派路線だけではなく、初代では他社のライバルに出遅れていた硬派なスポーツグレード充実も図り、軽自動車初の電子制御インジェクション&インタークーラーターボ車「アルトターボ」や、DOHC4バルブエンジンの「アルトツインカム」を追加。

1987年2月には、「ターボもDOHCもあるなら、次はツインカムターボでしょう!」と言わんばかりの最強モデル、DOHCインタークーラーターボの「アルトワークス」を発売しました。

アルトターボやアルトツインカムもそれなりに高性能なホットモデルでしたが、1985年にダイハツが2代目ミラへ追加した、50馬力のインタークーラーターボとエアロパーツで武装した「ミラTR-XX」のインパクトは相当なもので、スズキも対抗した形です。

ただしアルトワークスの最高出力は64馬力、一説には70馬力以上出ていたのを運輸省(現・国土交通省)からの要請で64馬力へ抑えて認可され、そのまま現在に至る「軽自動車64馬力自主規制」のモトになったと言われている、ぶっ飛びの高性能モデルでした。

2代目アルトのキャラクターを決定づけた「麻美スペシャル」

麻美スペシャルはボディ同色のフロントグリルや前後バンパー、カラードホイールキャップなど外装も地味な素のアルトとはだいぶ印象が異なり、ツートンカラーなどバージョンを変えて何度か設定された

しかし、アルトワークスは別格として、2代目アルトといえばもっとも話題に上るのは「麻美スペシャル」や「麻美フェミナ」といった特別仕様車で、もちろん由来はCMで起用された小林 麻美であり、2代目アルトはしばしば「麻美アルト」とも呼ばれます。

麻美スペシャルはその代表格で、当時の軽ボンネットバンではオプションだったエアコンやAMラジオ、熱線入りリアウィンドウガラスといった装備をお買い得価格で充実させたほか、黒一色だった前後バンパーやフロントグリルが塗装されていました。

(麻美スペシャルではボディ同色、麻美スペシャルIIIではツートンなどで、ホイールキャップも明るくカラーリング)

もちろん基本的には女性向け特別仕様車ですから、明るい色合いの内装、回転ドライバーズシートなども装備されており、現在のアルトラパンほど徹底してはいなかったものの、アルトのままで可能な限り実用車から雰囲気を変え、女性にアピールしようと頑張っています。

実際、当時は「アルト麻美スペシャル」または「アルト麻美フェミナ」を街でよく見かけたもので、女性向け特別仕様車は他にも「アルトジュナ」があり、「軽自動車は女の子が乗っていることが多い」と、ナンパの対象にもなっていました。

軽乗用車版の6代目「フロンテ」もひっそりと…

6代目後期型フロンテ。2代目アルト後期とデザインはほぼ同一だが、麻美スペシャルと同時に紹介するとすさまじく地味で影が薄く、どちらが商用登録のバンだかわからない(一応、フロンテが軽乗用車登録)

この頃には既にアルトへ主力の座を奪われ、影の薄かった乗用登録の「フロンテ」もひっそりと6代目へモデルチェンジしており、回転ドライバーズシートや、内外装はともかく装備面では麻美スペシャルなどと同様の特別仕様車「ウィット」を設定。

DOHCエンジンのフロンテツインカムもありましたがフロンテワークスまではなく、1985年にはユーザーの要望に応じた5ドア版アルトをアルト100万台国内販売達成記念の特別仕様車として設定、後にカタログモデル化したため、さらにフロンテの影は薄くなります。

安いだけでなく装備も充実、女性からスポーツ派、さらに5ドア車追加で子供を送迎したい主婦層まで支持層を広げたアルトはますます大ヒットして名を上げ、次のモデルチェンジではわずか数カ月後にフロンテを吸収合併、バンも乗用車も全て「アルト」になるのでした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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