更新
【シムカ 1000 ラリーシリーズ】波乱のフランスメーカーが生んだスポーツモデル
目次
紆余曲折を繰り返した「シムカ」の歴史
シムカは、1934年にアンリ・ピゴッツィが設立したフランスのメーカー。当初はフィアットの販売をフランスで実施できる権利を得ますが、当時のフランスは国産車メーカー育成のため、そのまま輸入しては高い関税がかかるしくみとなっていました。
ピゴッツィは関税を避けるため、ほぼ完成に近いフィアットモデルを輸入。最終組み立てをフランスで行うことで国産車として販売。ヒットを出します。
通称トポリーノと呼ばれたフィアット 500 初代
そんななか、フィアット500の初代であるトポリーノがデビューすると、シムカ5(サンク)の名で販売。同車はフランスで爆発的ヒットを記録し、ルノー・プジョー・シトロエンに次ぐ第4位の規模へと成長します。
大戦後に販売したシムカ アロンドの販売も順調で、フォード・フランスとの合併や高級車メーカー・タルボの買収にも乗り出したシムカでしたが、フォードが合併に際し取得していたシムカの株式をクライスラーに譲渡したことから、シムカには暗雲が立ちこめます。
大株主であるフィアットがシムカの株式売却を始めたのを機に、クライスラーは買収をしかけ、ついに筆頭株主に。1970年にシムカはクライスラー・フランスとなります。その後はクライスラー自身の経営不振により、1979年にはシムカをグループPSA(プジョー・シトロエン)に売却。タルボブランドとしますが、1986年残念ながらその歴史を終えることとなったのです。
熱を感じるネーミング「シムカ 1000 ラリーシリーズ」とは?
シムカ 1000は1961年にデビューし、1978年まで約17年にわたり生産されたモデル。直線基調の箱型をもつ4ドアセダンで、トランクスペースを考慮しエンジンは後方置きとなるRRレイアウトを採用したため、前後重量配分は35:65となり走行はトリッキーな反面、乗りこなせば軽快によく走り人気を博しました。
そのシムカ 1000に、スポーツ仕様となるラリーシリーズが追加されたのは1970年。シリーズはパワーアップを重ね、こののち「ラリー1」「ラリー2」「ラリー3」へとバージョンアップされていき、なかでも最終版であるラリー3は究極のホットモデルともいわれ生産台数1,000台となる稀少車です。
ラリーシリーズは、ホットチューンで知られるアメデ・ゴルティーニ率いるゴルティーニを意識したモデルであったといえます。それというのもゴルティーニはかつてはシムカと契約し、シムカモデルをチューンしレース参戦した間柄。しかし1956年からはルノーと契約し、すでにラリー常勝モデル「ルノー 8 ゴルティーニ」を作り出していたのです。
対抗意識と熱を感じる「シムカ 1000 ラリーシリーズ」。今でもクラシックカーを対象としたヒルクライム競技に、参戦するオーナーもいるようです。
最終バージョン・ラリー3は究極のホットモデル
シムカ 1000のラリー1・ラリー2は、1962年製1000 ベルリーナをベースに誕生したモデルで排気量はともに1,3L。エンジンは後方置きとし、ツインキャブ化することでパワーアップをさせています。
最高出力はラリー2で86HP、最終バージョンとなるラリー3では、103HPまで上げられ、ブレーキには当初はまだ珍しかった4輪ディスクブレーキが採用されました。
また、内装はインパネの計器類は5連メーターと精悍に。シートにはフルバケットシートが採用されるなど、随所に走りを実感できる仕様に仕上げられていることがわかります。
相場価格は稀少であるため高め
シムカ 1000 ラリーシリーズは、今は無きメーカーであり稀少であるため流通量は少なく、出回ったケースでも価格は高くなる傾向にあり、参考価格は500万から600万円ほどでしょう。
オートモビルカウンシル2019に、ワールドヴィンテージカーズから出展された「1972製シムカ 1000 ラリー2」では569万円となっていました。
シムカ 1000 ラリー2のスペック表
エンジン | 直列4気筒OHV |
---|---|
最高出力 | 82PS/6,000rpm |
最大トルク | 11.0kgf・m/4,400rpm |
ボディサイズ | 全長:3,800mm 全幅:1,485mm 全高:1,335mm ホイールベース:2,220mm |
車両重量 | 730kg |
トランスミッション | 4速MT |
駆動方式 | RR |
乗車定員 | 4人 |
新車車両価格 | – |
- 執筆者プロフィール
- 石黒 真理