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ランエボに搭載されたミスファイアリングシステムとは?仕組みからデメリットまで解説!

三菱ランサーエボリューション(ランエボ)とはどんな車なのか?

ランサーエボリューションVIII

三菱から販売されていた「ランサーエボリューション」シリーズ。
1992年から販売され、2015年の「ランサーエボリューション ファイナルエディション」の販売を最後に、2016年に販売を終了しました。

スポーツカーの不人気や三菱自動車自体の不祥事など、さらにはリーマンショックの影響など様々な要因から経営的判断により三菱自動車の公式カタログから消されてしまった伝説の車です。
販売が終了してからも通称「ランエボ」と呼ばれ世界中の車好きから慕われていました。

今もなお人気が高く、日本の車歴史に確実に名前を刻んだ車でもあります。

2,000ccハイパワーターボエンジンを搭載したスポーツモデルであり、販売当時は、公道最強とも謳われていました。
ラリーカーとしても活躍し、ラリーカーの世界大会「WRC」でも数々の功績を残しています。

第一世代(ランエボⅠ~Ⅲ)

三菱 ランサーGSRエボリューション

■ランエボ1
1992年に初代ランエボが誕生しました。

WRC(世界ラリー選手権)で勝利するために開発され、ギャランVR-4から引き継いだ4G63型2L直4ターボユニットは250馬力を発揮。
軽量かつコンパクトな車体はラリーシーンにベストマッチし、活躍しその名をとどろかせました。

■ランエボ2
1994年に登場した2代目。

先代より10馬力アップした260馬力の最高出力となり、高速化するWRCへの適合から空力パーツが変更されました。
さらに標準装着タイヤのサイズアップが図られ、ターマック(舗装路)でのスピードアップを果たしました。

■ランエボ3
1995年に登場した3代目。

空力パーツをよりいっそう改良し、フロントからサイド、リアエンドまでエアロパーツが装着されました。
大型のリアスポイラーにより高いダウンフォースを得ることに成功し、世界的なラリードライバーであるトミ・マキネン氏によりWRCのドライバーズタイトルを獲得します。
これが偉業への足がかりを築きました。

第二世代(ランエボⅣ~Ⅵ)

三菱 ランサーエボリューションⅣ

■ランエボ4
1996年に登場した4代目。

ベースモデルであるランサーがフルモデルチェンジを受けたことにより、進化した第二世代となります。
最大のトピックスとしては最高出力が大台の280馬力となり、電子制御ディファレンシャルのAYCが初採用されました。
これにより、コーナリング性能が引き上げられました。

また、販売台数は過去最高の1万3134台を記録し、商業的にも成功を収めました。

■ランエボ5
1998年に登場した5代目。

ランエボの進化の歴史の中で最も大きな性能向上を果たしたのがこのモデルです。
軽量アルミ素材の採用やボディ補強に加え、タイヤサイズやトレッドの拡大など速く走るための改良が多く施されました。

■ランエボ6
1999年に登場した6代目。

高速性能の向上に合わせエアロダイナミクスを大幅に見直し、空力特性を最適化しています。
先代の5で大幅な改良が施されたためこのモデルでは大きな変更点は無いですが、さらに熟成が図られました。
また、WRCでの活躍を記念したトミ・マキネンエディションモデルが登場し、現在ではプレミアムモデルとなっています。

第三世代(ランエボⅦ~Ⅸ)

■ランエボ7
2001年に登場した7代目。

ベースモデルのランサーが再びモデルチェンジしたことでランエボも第三世代へと進化します。
ボディサイズが肥大化したことにより存続が危ぶまれましたが、ボディ剛性の大幅な強化やACDの採用により旋回性能と駆動力性能を高次元でバランスをとることに成功。

先代以上の速さを証明し、歴代最多販売モデルとなりました。

■ランエボ8
2003年に登場した8代目。

ACDとAYCというふたつの電子制御ディファレンシャルが搭載され、WRCに参戦するレーシングカーに近い運動性能が与えられました。
また、ビルシュタイン製ショックアブソーバーの採用やアルミ製のルーフなどより効果的なチューニングが施されました。

■ランエボ9
2005年に登場した9代目。

エクステリアはより機能美を追求したデザインとなりました。
ショックアブソーバーにはモータースポーツシーンで数々の実績を残してきたアイバッハ社製コイルスプリングを採用し、従来よりも高めのスプリングレートにしつつも穏やかな挙動と接地感を実現しました。

結果的に、このモデルがランエボ史上最速のモデルとなりました。

第四世代(Ⅹ~ランエボファイナルエディション)

三菱 ランサーエボリューションX

写真の一枚目から順に、第一世代(ランエボⅠ~Ⅲ)、第二世代(ランエボⅣ~Ⅵ)、第三世代(ランエボⅦ~Ⅸ)、第四世代(Ⅹ~ファイナルエディション)と、世代ごとにベースを変えながら進化してきた車です。

そして最後に
■ランエボ10
2007年に登場した10代目。

エンジン、車体、足回り、新型トランスミッションの採用に至るまで全ての面で一新され、新世代のハイパフォーマンスマシンに相応しい内容となりました。
車体剛性の向上や前後重量配分改善、低重心化を図るなど徹底的な基本性能の向上が図られています。

最大の特徴は新開発された「ツインクラッチSST」が採用されたことです。
これは、クラッチ操作不要な2ペダル式の6速自動MTです。
AT感覚の「オートシフト」と、MT感覚の「マニュアルシフト」を設定。

さらに通常走行用の経済的な「ノーマル」、ワインディング走行向けの「スポーツ」、サーキット走行を想定した「スーパースポーツ」と、変速タイミングやアクセルレスポンス等まで変わる3つの変速制御モードを選択出来るようになっています。

しかし、国内でのスポーツカーの低迷に伴い、販売量も伸び悩みます。
そして2015年3月、ついに生産終了が発表されました

進化するにつれラリーカーの雰囲気は希薄になってはいくものの、根底にある公道最速のコンセプトは受け継がれ、生産・販売が終了した今もなお、三菱の代表車して存在しています。

ランエボ最後の一台が米国オークションに出品

三菱自動車の米国法人、三菱モータースノースアメリカは2016年9月8日にランサーエボリューションの最終仕様車である「ランサーエボリューショ ファイナルエディション」の最後の一台を同年9月15日までチャリティーオークションに出品する旨の発表をしました。

日本では2015年4月に限定1000台、米国では2015年10月に日本を600台上回る1600台を限定発売された「ランサーエボリューション ファイナルエディション」。

この大人気のランエボ、ダイヤモンドホワイトパールの最後の一台が高値で落札されることは間違いないでしょう。

ミスファイアリングシステムとは?

ランサーエボリューションと言えば、「ミスファイアリングシステム」が有名でしょう。
先ずは、ミスファイアリングシステムがどのようなものか動画で見てもらいましょう。

ミスファイアリングシステムの動画(8秒)

一瞬でしたが、銃声のような音と共に、マフラーから火が噴出しています。
これがミスファイアリングシステムです。

ミスファイアリングシステムの構造・仕組みとは?

強烈な爆発音とマフラーから火を噴くのが印象的なミスファイアリングシステム。
ミスファイアリングシステムはランサーエボリューショの代名詞とも言えるものでしょう。では、ミスファイアリングシステムとは何なのか?

これは、ターボチャージャー(過給エンジン)において、アクセルオフ時に発生するターボラグを解消するシステムです。
スロットルをオフにした時に、わざとエンジンを失火(ミスファイア)状態にすることからミスファイアリングシステムの名前が来ています。

ターボチャージャー(過給器エンジン)は、エンジンから廃棄される排気ガスのエネルギーにより、排気タービンを回転させ、その回転力によりコンプレッサーを駆動し、車に通常のエンジンパワー以上のもの与えてくれます。

しかし、排気ガスが一定量なければ、ターボは作動しません。なので、コーナー進入時等の、スロットルを弱める時などはパワーを発揮せず、スピードやトルクを大いに落としてしまいます。

ラリーカーや、ダートレースは常に中低速でのアクセルスロットルの調整が勝負のカギになりますが、それでは、ターボチャージャーは全く作動せず、重い過給器を積んでるだけの状態です。

そこで、タービン直前のエキゾーストマニホールド内で未燃焼ガスをあえて燃焼させ、排気ガスのエネルギー不足を補い、過給器のタービンを回転させることにより、パワーダウンを防ぎます。

このシステムがミスファイアリングシステムです。

銃声音と火を噴くのは正しい状態ではない?

ミスファイアリングシステムの原理や仕組みはお分かりいただけたでしょうか?

ここで勘違いしてはいけないのが、ミスファイアリングシステム独特の銃声音と火を噴く現象についてです。

実はこの現象が起きている時はシステムの制御が不十分であったり、燃料の燃焼がシステム内でしきっていない時に起きる現象なのです。

システムが正常に作動している時は、太鼓を叩いた音がします。それが銃声音であると燃焼が不十分で作動しているのです。

火を噴かず破裂音ではない音が聞こえているのが、実は正常に作動している時の状態です。

ミスファイアリングシステムのメリット・デメリットと豆知識!

ミスファイアリングシステムのメリット・デメリットは?

では、ミスファイアリングシステムのメリット・デメリットとはなんでしょうか?

先ず、メリットは上のシステムの説明でも書きましたが、ターボラグを防ぐことが出来ます。
ですので、中低速コースでのレースや、初速を大事にするドラッグレースなどに使用されています。

アクセルのオンオフが激しいとターボ過給が不安定になります。常にターボを正常に作動させるには、オフ状態で排気が少ない状態でも、二次燃焼をこのシステムでさせる必要があるというわけです。

ではデメリットは?

先ずは、ターボ車が付いていない車や、低中速でエンジンスロットルを常に回し続けない状態での走行では全く効果が発揮されません。
次に、燃焼しきっていない状態で火を噴く現象ですが、派手で、これぞミスファイアリングシステムと思いがちですが、あれが起きてるときは車にダメージが発生しています。
火が発生し、タービンやエンジンを著しく損傷しています。
また、マフラー音が激しいかったり火を噴く現象もあり、周りに対しても被害を加える可能性があります。

なぜ市販車のランエボにミスファイアリングシステムがついているのか?

このミスファイアリングシステムは、市販のランサーエボリューションにも付いていますが、実は公道では危険と見なされ無効化されています。
また、ミスファイアリングシステムを公道で作動させるのはほぼ有効性がありません。

では何故、ミスファイアリングシステムを外さずに販売しているのか?

それはランサーエボリューションが「WRC」に参加するグループAという競技車両カテゴリに関係あります。

このカテゴリーは市販車を改造してレースをするというもので、改造範囲が狭い事が特徴です。

市販車を基本ベースに限られた改造をしなければいけないので、三菱側もこのレースの事を考えると自社が販売する一般車をある程度ラリーカー・レースカーとして開発しなければなりません。

なので、それを前提に作られたランサーエボリューションⅢ等には搭載されているというわけです。

実は三菱は「ミスファイアリングシステム」と呼んでいない?

ランサーエボリューション=ミスファイアリングシステムと思いがちですが、三菱はこのシステムを「二次エア供給システム」と名付けています。

ミスファイアリングシステムは実はスバルが付けたものです。
ちなみにミスファイアリングシステムは世界共通のものでなく、世界でこのシステムが通づるのは「アンチラグシステム」のようです。

恐らく、頭文字「D」で出て来たものが印象付け、広まったのではとされています。

レースの為に開発された市販車「ランサーエボリューション」

ミスファイアリングシステムは名前だけや、火を噴くインパクトが強烈ですが、実は間違った見解をしている方も多かったと思います。

三菱が世界と戦う為に市販車に搭載せざるを得なかったシステムなのです。
そう意味では、ランサーエボリューションが車好き、特にドライバーに愛されていた理由も分かります。現在はもう公式に販売はされていませんが、中古車等は沢山出回っています。これを機に、乗ってみてはいかがでしょうか?

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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