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i-MiEV

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「世界で初めて」偉大な第一歩を踏み出した三菱の力作、i-MiEV(アイ・ミーブ)【推し車】

EVの日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞へ至る、偉大なる一歩

2000年代に作られた軽EVとしては画期的な性能だったi-MiEV

2022年12月、日産 サクラと姉妹車の三菱 eKクロスEVが「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

世界で初めて、リチウムイオンバッテリーを二次電池に使ったEV、三菱 i-MiEVが2009年7月に発売されてから13年、ようやくここまで来たか、と話題になりました。

高い目標とは裏腹に、日本でのBEV普及にはまだまだ超えねばならないハードルが多数あるものの、ここまでに至る偉大な第一歩を踏み出した三菱の力作、i-MiEV(アイ・ミーブ)を今回はご紹介しましょう。

ベースとなった、いかにも未来的なi(アイ)

EVというだけでなく、 ガソリン車どころか日本車離れした未来的なデザインも魅力的だった

i-MiEVのベースとなったi(アイ)は2006年1月に発売、エンジンを後輪軸前に搭載したリヤ・ミッドシップレイアウトの軽乗用車で、フロントエンジン車よりタイヤを四隅に置けるので、2,550mmという超ロングホイールベースは2020年代に入っても軽自動車最長です。

それでいて、前輪の切れ角も大きくできるため最小回転半径が小さい(4.5mと、ホイールベースが30mm短いホンダNシリーズと同等)、軽1BOX車のようにボディ先端ギリギリまで車内スペースも長く取れて、デザインの自由度も高く、スタイリッシュなクルマでした。

ただし価格は当時としては結構高めで、前後で異なるサイズのタイヤが必要だったことなど維持費も負担がかかり、安いゲタ代わりというより、豪華な軽スペシャリティカー的要素が強く、販売面では成功と言いがたかったのも事実です。

特殊なレイアウトのため派生車種も作りにくく、一時は「パジェロミニ後継のベースになる」という噂もあったものの実現しなかった事や、eKシリーズへ転用されるまでエンジンも専用だったことから、収益性もあまり良くなかっただろうと思われます。

後にi-MiEVのベースになったため、「最初からEV化を念頭にしていた」と思われがちですが、実際に電動化の話が持ち上がったのは、発売直前だったそうです。

軽乗用車といえばベーシックモデルとなるFFのコンパクトかトールワゴンを作り、そこから派生モデルを作って利益を上げるのが当たり前になった時代において、「よく発売しようと思えたな?」というくらい、未来的ではあるものの、かなり異質なクルマでした。

まるでEVになるために生まれてきたような?

リアエンジンなのでフロント部はとても短く、サクラ / eKクロスEVよりよほど「EVらしさ」を感じる

EV化を考慮したわけではないとはいえ、フロア床下の燃料タンクを重たいバッテリーに置き換えても低重心になり、リアエンジン後輪駆動のため、加速時も駆動輪へ十分なトラクションがかかる「i」は、最初からEVに適した構造でした。

三菱で量産EVを開発するにあたり、本音としては「プリウスのように専用デザインの方がいい」と思っていたようですが、その点でもガソリンエンジンの量販軽乗用車としては特異すぎた「i」のデザインは、むしろEVとしてなら新時代を感じさせるデザインです。

むしろガソリンエンジン版を売らず、EV専用で発売した方が、後々のイメージ戦略には良かったかもしれませんが、既に販売直前で予定を変えられなかったのでしょう。

軽自動車離れどころか、日本車離れしていた「i」のデザインはフランスのPSA(プジョー・シトロエン)との提携でも役立ち、後にi-MiEVがプジョー イオン、シトロエン C-ZEROとしてOEM供給された時も、全く違和感がありませんでした。

1.8L車並の大トルクと、SCiBバッテリーという選択肢

発売当時はまだ充電インフラがほとんど整備されていなかったが、今なら中古車を買ってもかなり使いでがありそう

「i」改め「i-MiEV」は、最高出力こそ軽自動車の自主規制値に合わせた47kW(64馬力)ですが、最大トルクは1.8L自然吸気エンジン並の180N・m(18.4kgf・m)を発揮。

一般販売が始まった2010年4月の段階で車重1,100kgと、「i」のターボ車より190kg重かったのでパワーウェイトレシオは劣りますが、トルクウェイトレシオは94.8kg/kgf・mに対し59.8kg/kgf・mと大幅に勝り、しかも発進してすぐ最大トルクに達します。

現在の日産 サクラ / 三菱 eKクロスEVも、「軽自動最強となる2リッター自然吸気エンジン並の最大トルク」と、i-MiEVより30kg軽い車重で動力性能は優れていますが、こと性能面から言えば、10年以上前のi-MiEVで既に「軽自動車としては規格外にパワフル」でした。

それでもサクラ / eKクロスEV並のヒット作とならなかったのは価格で、一般販売を始めた段階の車両本体価格が398万円ですから、サクラより150万円以上高いのでは補助金があってもそうそう売れなかったのは仕方ありません。

もちろん三菱でもユーザーの声を慎重に拾い上げており、「一充電走行距離をもっと伸ばして欲しい」というユーザー向けに従来モデルの走行距離をJC08モード180km(それまでは10・15モードで160km)へ延長。

さらに、「短距離しか乗らないので、走行距離はソコソコでいいからもっと安くして」という要望にも応え、JC08モード120kmながら40万円以上も安いグレード「M」を設定しました。

この「M」グレードはちょっと面白い存在で、単にバッテリー容量を減らして走行距離が短く安いわけではなく、東芝製の「SCiB」と呼ばれる長寿命型バッテリーを搭載しています。

現在中古車で販売されているi-MiEVは、備考欄にバッテリー容量の残存率を記載しているものが多いのですが、通常のリチウムイオンバッテリーが80~90%程度に落ちるのに対し、SCiB搭載の「M」だけは落ちず、新車時の性能を維持しているケースが多いようです。

そのため、i-MiEVの扱いが多い中古車店では「近所の買い物や通勤などセカンドカーに使いたい中古EVの決定版は、SCiB搭載車」と薦めるケースもあり、今後「走行距離は短くていいから、安くEVが欲しい」と考えているユーザーは、覚えておくべきでしょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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