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メルセデスベンツのチューニングメーカー「ブラバス」「カールソン」って何?違いはある?
目次
完璧主義で作られた車に磨きをかけるチューニングメーカーたち
メルセデス・ベンツといえばエンブレムのスリーポインテッドスター。3本の光はそれぞれ「陸・海・空」を表すとされ、あらゆるモビリティで頂点を極めることを意味した、メルセデス・ベンツの完璧主義を象徴するものです。
こうした完璧主義を元に作られたメルセデス・ベンツの車たちは、どれも魅力的なものばかり。しかし、この魅力的な車を、さらに磨き上げるチューニングメーカーの存在があります。
今やメルセデス・ベンツの部門の一つとなったAMG、そしてメルセデス・ベンツ公認のチューニングメーカーとなったロリンザーは有名な存在ですが、この二大巨頭に匹敵する、ブラバスとカールソンという2つのチューニングメーカーがあるのです。
メーカー直系の安心感、AMGとロリンザー
AMGの歴史は古く、1967年まで遡ります。創設者3名それぞれの頭文字を取り「AMG」という名が付けられました。
元々はレース用自動車エンジンの設計会社であり、世界に名が広まったのは1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースでのクラス優勝がきっかけです。その後ドイツツーリングカー選手権では、最も成功したチームの一つとして知られることとなります。
現在ではメルセデス・ベンツグループの子会社となり、AMGはメルセデス・ベンツ各車の1グレード、1モデルとして展開されています。
ロリンザーの操業はさらに古く1930年。小さな自動車工場がスタートです。1974年から本格的にチューニングメーカーとしての活動を開始します。エンジニアとしての腕は創業当時から認められており、現在ではメルセデス・ベンツで唯一公認を受けているチューニングメーカーとなりました。
エンジンチューンはもちろん、エアロパーツやホイールといったアフターパーツが豊富で人気のあるロリンザー。その活動はメルセデス・ベンツだけにとどまらず、他メーカー車のパーツやコンプリートモデルの製作を手掛けるなど、幅広いのが特徴です。
ラグジュアリーなメルセデス・ベンツをより気高くするのがロリンザーのチューニング。力強さを感じるデザインなどは、AMGとはまた違った魅力を持ったものになっています。
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チョイ悪な雰囲気を残すブラバス
ブラバス社は、元々メルセデス・ベンツ代理店からアウトソーシング事業を引き受ける会社でした。自動車のカスタマイズが好きだったボード・ブッシュマンとその友人であるクラウス・ブラクマンが1977年に設立します。
初めてブラバス社の製品として登場したのはW126のチューニングモデルです。その後1982年に、後席用のテレビを装着したモデルを販売、数年後にはファックスを車内に組み込むなど、設立当初はラグジュアリーの方向性でチューニングを行うメーカーでした。
1984年にW201をチューニングし、エンジンをV型8気筒5.0リッターにし、290馬力を発生するパフォーマンスモデルを発表します。さらに翌年には、W124のCd値を0.26まで煮詰めたモデルを発表するなど、走りのチューニングを主に、活躍の場を広げていくのです。
その後、Eクラス(W210)を用い、当時の最高時速330Km/hを叩き出すセダンを登場させます。続いてW211では最高時速を350.2Km/hのモデルを発表し、同クラスの世界記録を保持し続けています。
メルセデス・ベンツの象徴であるスリーポインテッドスターを取り外し、ブラバス社の「B」をエンブレムとして採用するのも同社の特徴です。
現在は、日本の総輸入元であるブラバスジャパン株式会社では、Sクラス(W222)、Vクラス(W447)、MLクラス(W116)、Gクラス(G463)のコンプリートカーを販売しています。
少し前のメルセデス・ベンツにあった、ちょっと悪そうな感じを楽しめる、ワイルドなモデルを楽しむことができます。
筆者も何度かブラバスがチューニングしたモデルに乗ったことがありますが、ハイパワーなエンジンは非常に気持ちよく、迫力のあるエクステリアは、メルセデス・ベンツ純正の状態よりも、迫力のある仕上がりになっています。
レースで培った技術をパーツへ転生するカールソン
1989年に創設されたカールソン。創設者はロルフ・ハルトゲとアンドレアス・ハルトゲの兄弟です。彼らが愛してやまなかったスウェーデン人ラリードライバーのイングバル・カールソンに敬意を表し、カールソンという社名が付けられました。
ロルフ・ハルトゲの専門分野はメカニカルな部分です。エンジンやサスペンションなどをレースに参戦することで得たノウハウを下地に、市販車のチューニングへとフィードバックしていきました。その技術力は折り紙付きで、レースチームのエンジニアからも高く評価されています。
また、アルミホイールの製造でも有名で、ホイールメーカーとしての方が日本での認知度は高いかもしれません。16本のスポークがあしらわれた1/16、2/16シリーズは、日本車で標準的に使用されているP.C.Dの設定があり、ラグジュアリーカーユーザーを中心に支持されています。
ラグジュアリー感の強いエアロパーツに、美しいアルミホイール、そしてレースで培われた確かな技術で作られるエンジンやサスペンションは、まさに至高の一品です。
残念ながら2015年にカールソン社はドイツで倒産し、現在は韓国の自動車部品メーカーであるサンボモータースによって事業が引き継がれています。
それでも、カールソンがメルセデス・ベンツのチューナーとして残した功績は大きく、現在でも多くのファンがカールソンの製品を愛用しています。
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トップチューナーだからこそ実現できる美しさとまとまり感
世界には様々なチューニングメーカーが作り上げたコンプリートカーが存在します。こうした車を製造するメーカーの職人たちに話を聞く機会が何度もありました。
彼らが口々に言うのは「車種やメーカーを限定して作り出すのは難しい。どれもが似てきてしまい、コンプリートカーとしての味を出しにくくなる」ということ。チューニングの世界に生きた者しかわからない、独特の難しさがあると語ってくれました。
メーカーの作り上げた車が良い車であればあるほど、チューニングの仕事は難しくなります。それがコンプリートカーとなると尚更。
こうした難しいことを、完璧とも言える車作りを行うメルセデス・ベンツでやるというのは、常に挑戦の精神があればこそ、成し遂げられることでしょう。
日本国内でブラバスやカールソンのコンプリートカーを見ることは少ないかもしれません。カスタムカーのショーやモーターショーなどへ足を運べば、実車を見る機会があるでしょう。
ブラバス、カールソンのコンプリートカーを一目見たら、見惚れてしまうはずです。
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- 執筆者プロフィール
- Red29
- 1980年代生まれ。国産ディーラーでの営業職として働き、自動車関連の執筆者として独立。ユーザー目線に立った執筆を心掛けています。愛車はトヨタプリウス。ホットハッチに代表される、小規模小パワーのクルマが...