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【シトロエン SM】限界に挑戦!FFを採用した高性能GTカー
目次
次世代のフラッグシップを!SM開発プロジェクトの始動
1934年誕生のトラクシオンアヴァン以来、2CV、DSと他に先駆け画期的な前輪駆動(FF)車を発表し続けてきたシトロエンとそのエンジニア・ルフェーブル。しかし、急速に発達するヨーロッパでのハイウェイ化の波を前に上層部は、「高速化対応の次期モデル機構にはやはり後輪駆動ではないか」と示唆。これに異論を唱えたのがルフェーブルです。そのためには前輪駆動で最高速度200km/hの壁を超え、正確に走る・止まる・曲がるを実証する必要があり、そのプロジェクトが1957年スタートの「Sプロジェクト」です。
Sプロジェクトはルフェーブルの指示のもとチーフエンジニアをジャック・ネとし、DSをベースに設計・テスト・改良を繰り返し、1963年には上層部も正式プロジェクトとして認可。1966年にはプロトタイプを遂に完成。その車こそがのちのシトロエン・SMとなるのです。
まるで幾何学。シトロエン SMのデザインは唯一無二
1970年ついにデビューしたSMのデザインはロベール・オプロンが担当。多様な曲面を組み合わせたオリジナリティに富むデザインで、見る角度によりシャープ或いはエレガントと、大きく印象を変える幾何学模様のよう。また、フロントからリアにかけてのフォルムが徐々に狭まるティアドロップ型としています。
ボンネットはアルミ製、ルーフとリアパネルは溶接、リアデザインはカムテールと徹底的に空力を意識したデザインは、まさに高速走行を念頭に置いたもの。フロント周りは前述どおり従来は6灯式の2灯がパワーステアリング連動で左右する新機構としましたが、米国では法規上4灯式となっています。また、ボンネットには適切に車内換気を促すベンチレーションインテークが備えられ、非常に印象的です。
シトロエン SM夢のタッグ!ハイドロの進化とマセラティ製エンジン搭載
シトロエンSMは随所に画期的な技術を採用。なかでもステアリング機構「Diravi(=ディラビ)」は車速による操舵力制御機能とセルフセンタリング機能を油圧で実現したものでした。また、統合油圧制御システム「ハイドロニューマチック」はSMで進化。サスペンション・ステアリング・ブレーキと、どの車速でもスムーズな乗り心地と安定性を確保しました。さらに4輪にディスクブレーキが採用されました。
SMのエンジンには様々なタイプが検討された結果、最終的にマセラティ製2.7L V型6気筒DOHCを採用。エンジンはSMのため新設計され、ウェーバー製3連キャブに5速MTを組み合わせ、最高出力は170PS・最高速217km/hを発揮。その後エンジンがボッシュ製Dジェトロニックに変更され、最高出力は180PS・最高速も229km/hにアップしました。また、米国向けボアアップ版3.0Lや、トランスミッション3速ATも追加。1975年まで販売されました。
シトロエン SMの相場価格は稀少性から高め
シトロエン SMは、マセラティエンジン搭載という稀少性と独特のフォルム・機構から相場価格は高めです。現在流通する個体数は少なく、価格は応相談となっています。(2019年11月時点)
シトロエン SMのスペック詳細
下記のSMスペックは1972年式のものとしています。
- エンジン:マセラティ製V型6気筒DOHC(バンク角90度)
- 最高出力:178ps/5,500rpm
- 最大トルク:23.7kg・m/4,000rpm
- ボディサイズ:全長 4,913mm 全幅 1,836mm 全高 1,324mm ホイールベース 2,950mm
- 車両重量:1,450kg
- トランスミッション:5速MT
- 駆動方式:FF
- 乗車定員:4人
- 新車時車両価格:590万円(国内輸入販売価格)
*本記事の画像は2019年8月に開催されたシトロエン創立100周年イベント「シトロエン・センティナリー・ギャザリング」にて撮影。
※参考文献:オクタン日本版特別編集 “シトロエン オリジンズ 1919-2019”(世界文化社)
- 執筆者プロフィール
- 石黒 真理