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「技術者の意地」自動車後進国だった日本でピンチをチャンスにした車たち【推し車】
1958年のスバル360大ヒットで国民車的な盛り上がりを見せた軽自動車ですが、1968年の軽自動車免許廃止、1970年代にも税制や保安基準の改正、環境対策などで市場は一気に冷え込みます。
乗るのに普通の自動車と同じ免許や車検も必要で税金の優遇も減り、環境対策の代わりに排気量アップ、安全対策で重量増加と高価格化したうえに、多様な価値観が求められていない時代とあって、変わり種を作っても売れません。
そこで徹底的に割り切った簡素化で低価格、税金の安い商用登録で経済性にも優れた、実質「安い軽乗用車」の軽ボンネットバンが誕生、1980年代に軽自動車は再び国民車として返り咲いたのです。
スズキ アルト(初代・1979年)
日本人のデラックス路線を覆した「アルト47万円」の衝撃
GMと提携した低価格小型車路線(初代カルタス・1983年)も打ち出す以前、輸出も含め軽自動車とその派生車だけだったスズキにとって軽自動車市場の縮小は死活問題で、自動車メーカーとしての生き残りをかけ、徹底的なマーケティングに着手。
「定員4名の軽乗用車でもほとんどは1~2名乗車のパーソナルカーであり、同乗者に気を使った装備や、快適な後席の優先度は低い。」という結論に達します。
簡素な後席で荷室を拡大、税制面や排ガス規制で有利な軽商用車登録、装備も徹底して省略し、驚異の新車価格47万円!で売り出したのが初代アルト。
「安くても立派に見えなければ売れない」という過去の教訓からデラックス路線が主流だった国産車が、「立派でなくともそれ以上に安けりゃ売れる」で成功した初の事例で、他の軽自動車メーカーも次々に追随する1980年代軽ボンネットバンブームの幕開けでした。
- 最新「アルト」中古車情報
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本日の在庫数 3795台 平均価格 73万円 支払総額 10~174万円
ダイハツ ミラクオーレ(初代ミラ・1980年)
あの手この手で追撃のダイハツ
初代アルトに刺激された軽自動車メーカー各社が、まずは既存車ベースで装備を厳選した低価格モデルを発売する中、いち早く新型車で追撃したのがダイハツです。
ちょうど主力モデルのフェローが、550cc規格への拡大版MAXフェローへビッグマイナーチェンジしていたとはいえ、基本的に1970年デビューと古くなっていたため、思い切って初代アルト路線の低価格軽ボンネットバン「ミラクオーレ(後に改称、初代ミラ)」を発売。
全車4サイクルエンジン(直列2気筒AB型)で、アルトより若干ハイルーフで頭上空間に余裕があり、いわば「アルトよりちょっと高いけど、ちょっと立派に見えるクルマ」でした。
フロントディスクブレーキの採用やターボエンジンの設定など、常にアルトよりちょっと上を狙っており、販売トップとまではいかないものの、軽自動車No.2メーカーへとダイハツが浮上し、販売トップを伺うのに大きな役割を果たしています。
- 最新「ミラ」中古車情報
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本日の在庫数 767台 平均価格 34万円 支払総額 9~188万円
スバル レックスコンビ(2代目・1981年)
ついにスバルもFF化でスバル360以来のRRレイアウトに決別
ダイハツに続いて積極的な追撃策を展開したのはスバルで、なんとスバル360以来、R-2、初代レックスと伝統のRRレイアウトを捨ててFF車へと大転換。
もちろん設定された安価な軽ボンネットバン「レックスコンビ」は、先代末期の軽ボンバン廉価仕様「ファミリーレックス」と違ってリアにエンジンがなく、積載能力、使い勝手の面でライバルに並びます。
後にスーパーチャージャーを特徴とするホットモデルも、2代目レックスコンビの時点ではスバル軽自動車で唯一のターボエンジン搭載車を設定。
唯一の泣き所は後のECVT(無段変速機)どころかトルコン式ATすらなく、電磁パウダー式オートクラッチMT頼みなところでしたが、スバルらしく秀逸な足回りで走行性能は高く、派生リッターカーのジャスティも生むなど、低迷した1980年代のスバルを支えました。
- 最新「レックス」中古車情報
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本日の在庫数 12台 平均価格 106万円 支払総額 49~223万円
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...