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ラジアルタイヤとは?メリット・デメリットやバイアスタイヤとの違いまで
ラジアルタイヤとは
自動車のタイヤを構造で分類すると「ラジアルタイヤ」と「バイアスタイヤ」に分かれます。この2種類のうち、現在の乗用車用タイヤの主流となっているのがラジアルタイヤです。
ラジアルタイヤは比較的新しいタイプのタイヤで、日本では1960年代に商品化されました(世界初の実用化は1948年)。モータリゼーションの進展にともない自動車技術が発達した現在、ラジアルタイヤは乗用車に欠かせないパーツとなっています。
ラジアル構造とは
ラジアルタイヤの内部では、骨格にあたる「カーカス(コード層)」が円周方向に対して直角に張られています。タイヤ側面からはカーカスの配置が放射状(ラジアル)に見えることから、この構造は「ラジアル構造」と呼ばれています。
ラジアル構造の重要パーツ
ラジアル構造のタイヤを構成する重要パーツに、カーカスの上に重ねる形で円周方向に巻かれる「ベルト」があります。ベルトはカーカスとゴム層を密着させ、かつトレッド(タイヤが地面と接する部分)の剛性を高めるパーツです。
カーカスがタイヤ側面の硬さと弾性を決める一方、ベルトはトレッドの強度に影響を与えます。このカーカスとベルトの役割分担がラジアル構造の大きな特徴であり、ラジアルタイヤに特有のメリットを生む要素となっています。
ラジアルタイヤの表記の見方
ラジアルタイヤのサイドウォール(タイヤ側面)には、タイヤのスペックを表す英数字が刻印されています。たとえば「195/60R16 89H」と刻印されている場合は、表記から次の情報を知ることができます。
- 【タイヤ幅】195mm
- 【扁平率】60%
- 【タイヤの種類】R(ラジアル)
- 【リム径】16インチ
- 【ロードインデックス】89(580kg)
- 【速度記号】H(210km/h)
「扁平率」はタイヤの幅に対する高さの比率を示す数値で、(断面高÷断面幅)×100の計算式で算出されます。この数値が低いほど、厚さの薄いタイヤになります。
「ロードインデックス」はタイヤ1本で支えられる負荷能力を表す数値です。「速度記号」はそのタイヤが走行可能な最高速度を示す記号で、アルファベット10種に「ZR」と「(Y)」を加えた12種類があります。
貨物車用ラジアルタイヤは表記が異なる
貨物車用ラジアルタイヤのスペック表記は、乗用車用タイヤと異なる場合があります。軽トラックやバンにお乗りの方は、次の表記の意味を押さえておきましょう。
- LT(ライトトラック用で負荷能力が高いタイヤ)
- XL(負荷能力が高いヨーロッパ規格のタイヤ)
- PR(プライレーティング)
- LI値/LI値(単輪/複輪のロードインデックス|例:107/105)
「PR」は耐荷重強度を指し、前につく数値の大きさに比例して負荷能力が高くなります。たとえば、6PRはプライ(=カーカス)6枚相当の強度を意味します。なお、PRは初期のプライの強度を参考にした数値であり、実際のカーカスの枚数を示すものではありません。
「LI値/LI値」は後輪用タイヤのスペックで、後ろの数値はダブルタイヤとして使用する場合のロードインデックスを指します。
ラジアルタイヤの適した場面
ラジアルタイヤの性能は高速走行時に最大限に発揮されます。高速道路で感じられる乗用車の走行安定性や乗り心地のよさは、ラジアル構造のタイヤがもたらすものです。
また、高いコーナリング性能が求められる走行シーンにもラジアルタイヤは適します。ラジアル構造のタイヤはコーナリングフォース(旋回に必要な力)を発生させやすく、急カーブの続く場面で優れた操縦性を発揮します。
ラジアルタイヤのメリット・デメリット
ラジアルタイヤのメリット
ラジアルタイヤは空気入りタイヤの中でも後発のタイプであり、バイアスタイヤにはないメリットを持ちます。以下で解説する6つのメリットは、現代の乗用車のタイヤに欠かせない要素ともいえます。
設計の自由度が高い
ラジアルタイヤは設計の自由度が高く、各部の形状や強度を柔軟にデザインできます。スポーツカーに採用されるような、ワイドで扁平率が低いタイヤ形状はラジアル構造でなければ実現できません。
ミニバン用や軽自動車用などの、車種専用タイヤを設計しやすいこともラジアルタイヤのメリットです。こうした設計の自由度は、先に解説したカーカスとベルトの役割分担により実現されます。
走行安定性と操縦性に優れる
ラジアルタイヤは多くのシーンで安定した走行性能を発揮し、操縦性にも優れます。トレッドの剛性を高められ、かつサイドウォールを薄くできることがラジアル構造のメリット。この利点により、グリップ力に優れて横ヨレしにくい、高性能なタイヤを設計できます。
高速走行時の乗り心地に優れる
ラジアル構造のタイヤでは、トレッドの剛性を確保しつつ、サイドウォールに適度なクッション性を与えられます。このため、安全に高速走行できるグリップ性能と快適な乗り心地の両立が可能です。
スリップしにくい
ラジアルタイヤはグリップ性能が高いためスリップしにくく、多様なシーンで安全に走行できます。また、タイヤの滑りにくさは、けん引力の大きさにつながります。他車両やキャンピングトレーラーをけん引するシーンでは、ラジアルタイヤのグリップ力が役立つでしょう。
燃費性能に優れる
ラジアルタイヤは転がり抵抗(エネルギーロス)が少なく燃費性能に優れます。トレッドの変形で生じる抵抗を小さくでき、かつタイヤ全体を軽量につくれることはラジアル構造の利点の1つ。低燃費タイヤもこのメリットを活かして設計されています。
耐久性が高い
トレッド剛性の高さからラジアルタイヤは摩耗に強く、耐久性に優れます。また、剛性の高さから発熱しにくく、熱ダレによる寿命の低下が起きにくいこともラジアルタイヤのメリットです。
ラジアルタイヤのデメリット
多数の優れた点を持つラジアルタイヤですが、欠点がないわけではありません。次に解説する2点はラジアルタイヤのデメリットといえます。
サイドウォールの強度が弱い
ラジアルタイヤはサイドウォールの強度が弱く、縁石や障害物などにタイヤ側面を擦ると容易に破損してしまいます。サイドウォールの補強部材はカーカス1枚のみであり、表面のゴムが破れるとバーストしやすい状態になるので要注意です。
価格が高額
ラジアルタイヤは構造が複雑なため、バイアスタイヤとくらべて製造にコストがかかります。このため販売価格が高額になりやすく、扁平率の低い大径タイヤになると1本で10万円以上する場合があります。
バイアスタイヤとは
ラジアルタイヤより古くからあるタイプであり、空気入りタイヤの元祖といえるのがバイアスタイヤです。旧式タイヤともいえるバイアスタイヤですが、独自のメリットを持つため、現在もさまざまなシーンで利用されています。
バイアス構造とは
バイアスタイヤの内部では、複数枚のカーカスが斜め(=バイアス)に重ねられています。繊維の方向が互いに逆向きになるように各カーカスを配置し、ねじれへの強度を高めていることがバイアス構造の特徴です。
重ね合わされたカーカスの上には「ブレーカー」と呼ばれる補強材が円周方向に巻かれています。ブレーカーはラジアルタイヤのベルトと同じ役割のパーツで、トレッドの剛性強化と、カーカスとゴム材の剥離防止のために配置されています。
バイアスタイヤの表記の見方
バイアスタイヤのサイドウォールに記載されるスペック表記は、ラジアルタイヤのものと内容が異なっています。たとえば「6.50 16 6PR」と記載されている場合、タイヤ表記からは以下の情報を読み取れます。
- 【タイヤ幅】6.50インチ(=165.1mm)
- 【リム径】16インチ
- 【タイヤ強度】プライレーティング6
バイアスタイヤのタイヤ幅はインチで示されることが多く、ミリメートルに読み替えるには数値に25.4をかける必要があります。また、バイアスタイヤは貨物用のものが多く、表面にはプライレーティングが記載されています。
バイアスタイヤの適した場面
バイアスタイヤは低速走行や悪路走行に適するタイヤです。重量のある車にも適するため、大型トラックやバス、建設車両、トラクターなどのタイヤとして活躍しています。
また、SUVファンにはバイアスタイヤを好む人が少なくありません。「ゲタ山」と呼ばれるヘビーデューティーなバイアスタイヤや、マキシスのオフロード用バイアスタイヤ「クリーピークローラー」などは現在も人気があります。
二輪車ではバイアスタイヤは一般的
二輪車ではバイアスタイヤの使用はごく一般的です。スクーターやアメリカンなどの乗り心地重視のバイクには、バイアスタイヤが標準装備されています。
また、自転車用タイヤのほとんどはバイアスタイヤです。2010年ごろに世界初の量販ラジアルタイヤが登場しましたが、発売から10年以上が経った現在も普及には至っていません。
バイアスタイヤのメリット・デメリット
バイアスタイヤのメリット
業務用車両や二輪車にバイアスタイヤが採用されている理由は、ラジアルタイヤにはない利点があるからです。次に解説する3点は、バイアスタイヤが持つ大きなメリットといえます。
低速走行時の乗り心地に優れる
バイアスタイヤはサイドウォールに厚みがあり、クッション性に優れています。このため、低速走行時の乗り心地がよく、荒れた路面でも振動を抑えて走行できます。
頑丈で耐荷重性能を高めやすい
バイアスタイヤはタイヤ全体の強度が高く、かつ耐荷重性能を高めやすい構造になっています。カーカスの枚数を増やすだけで剛性が上がるため、重量車用のタイヤを容易に製造できます。
価格が安い
バイアスタイヤは構造がシンプルなため、ラジアルタイヤよりも低コストで生産できます。販売価格も安いことから、バイクではスポーツモデルでもバイアスタイヤを標準装備する場合があります。
バイアスタイヤのデメリット
乗用車用タイヤとしてバイアスタイヤを見ると、メリットよりもデメリットが目立ちます。以下に述べる3点は、乗用車にとっては大きなマイナスポイントといえるでしょう。
燃費性能が低い
バイアスタイヤはタイヤ全体が変形しやすく、かつ重量が重いため、走行時は強い転がり抵抗が生じます。この特徴からエネルギーロスが大きく、ラジアルタイヤを履く場合にくらべて燃費が下がります。
高速走行に弱い
バイアスタイヤは遠心力によりタイヤ外径が膨らみやすく、かつ発熱しやすい構造になっています。このため、タイヤの摩擦熱が高まる高速走行には不向きで、走行速度によっては操縦性が大きく低下してしまいます。
耐久性が低い
バイアスタイヤはトレッドの剛性が低く、ラジアルタイヤとくらべて耐久性に劣ります。カーカスの枚数を増やせば剛性は高まりますが、重量が重くなり、負荷の増加によってタイヤ寿命が短くなってしまいます。
ラジアルタイヤの進化は凄まじい!
ラジアルタイヤの意味や価格、寿命などについて紹介しました。ラジアルタイヤと一括りにしても、近年は技術革新が加速していて、その特徴は多様となっています。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...