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「ご当地ナンバー」は訴訟問題に!車のナンバーに「地域名」がある理由とは

自動車のナンバープレートには「地名」が記載されており、「その車がどこから来たのか」が一目でわかるようになっています。それぞれの地域に対するイメージもあり、人によって印象のよいナンバー、悪いナンバーも異なるようです。

コロナ禍においては、ナンバーの地名を原因としたトラブルが各地で見られました。県をまたいだ移動に対して自粛が呼びかけられるなか、「他県ナンバー」の車両に対して投石やパンクなどの「制裁」が加えられたニュースは記憶に新しいでしょう。

心ない行為をきっかけに、ナンバープレートの地名をめぐってさまざまな議論が巻き起こされています。そもそも、ナンバーに地名を表示する意義はどこにあるのでしょうか。

地名の表記はなぜ漢字とひらがな?

前提として、ナンバープレートの役割は「車両の識別」という点にあります。道路運送車両法や車庫法といった観点から、その車両が自動車登録ファイルにきちんと登録されたものであることを示し、公道を問題なく走るための検査を済ませていることを一目で確認できるようにしているのです。

ナンバープレートに記載される地名は、その車両の「使用の本拠の位置」を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所の場所を表示しています。表記には漢字とひらがなが用いられますが、実際のところ、エリアを識別することが目的であれば「アルファベットや数字」で表示することも可能でしょう。

国土交通省は2011年から2012年にかけて、今後のナンバープレートがどうあるべきかを検討する「ナンバープレートのあり方に関する懇談会」を開催し、地名表示の是非についても議論しています。その資料によれば、漢字やひらがなによる表記は「登録情報を紙の原簿によって管理していた時代に、どこで登録されているのかを識別できるという行政運営上の必要性によって」はじまったものだといいます。

同資料においては、オンラインシステムにより全国の車両情報を一元的に管理している現状、必ずしも「漢字やひらがな」は必要ではないと言及されています。将来的に国境を越えた車両の移動も想定されるなか、アルファベットや数字というユニバーサルな表示形式を導入する可能性も視野に入れているようです。

一方で、国土交通省はナンバープレートに求められる要件として「一意性」「視認性」「記憶性」「自動車の種類の識別」「耐久性」という5つの要素を挙げています。この観点からすると、現状の漢字やひらがなによる表記は「視認性」と「記憶性」に優れていると考えられており、必ずしも「古いシステムの名残」という面だけが言及されているのではありません。

つまり、交通違反などを起こした車両を判別し、ナンバーを記憶するうえで、漢字やひらがなによる表記は「とっさに覚えやすい」というメリットがあると考えられているのです。

ナンバーは地域への愛着につながる?

©E-Saishu/stock.adobe.com

国土交通省の資料においては、ナンバープレートに地名を表示することの副次的な効果として、「地域に対する愛着の醸成」や「個人のアイデンティティの表現」という内容が掲げられています。

実際に、2006年から導入されている「ご当地ナンバー」は、ナンバープレートの「愛着」や「アイデンティティ」といった面に着目した施策だといえます。これを通じて、地域振興といった効果につなげようという背景がありました。

ナンバーの地名に対する世間の関心は高いと考えられ、「ナンバーのかっこいい地名」といったアンケート調査もしばしば実施されています。多くの調査において、湘南や横浜、神戸といったエリアや、品川や世田谷などの高級住宅街などが上位に名を連ねており、たしかにそうした地域に住む人にとってはアイデンティティを強めている側面もあるでしょう。

一方で、コロナ禍のトラブルで顕在化したように、地域性に対する強い関心は、時として特定の地域への偏見や差別に転じる可能性も考えられます。コロナ禍以前からも、「ナンバーの地名格付け」といったコンテンツを通じて、地名が好ましくないイメージと結びついてしまっている例は少なくありません。

さらに「ご当地ナンバー」については、「世田谷ナンバー」の導入以前から住民による反対運動があり、エリアがあまりに限定されており居住地が絞りやすい点や、盗難被害の対象になる可能性などが指摘されていました。導入後、地名を選択する余地が残されていなかったこともあり、この件は訴訟にまで発展しています。

もちろん、愛車に自分の住む地域の名前が表示されることに対して、ポジティブな思いを抱く人も少なくないでしょう。一方で、地名にまつわるイメージや、プライバシーの問題といった観点からは、「わかりやすい漢字やひらがなで表示する必要性」が問われることになりそうです。

先に挙げた「視認性」や「記憶性」といった点も鑑みながら、広い視野で議論を深めていく必要があるでしょう。

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執筆者プロフィール
鹿間羊市
鹿間羊市
1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...

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