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交通事故多発エリアで事故が減らないのはなぜ?交通事故調査官の回答に納得!
日本全国における2020年中の交通事故件数は「30万9,178件」であり、1日あたりおよそ850件もの交通事故が起きていることになります。
先進型の予防安全装備を備えた車両が普及していることもあり、事故件数は年々減少傾向にあるものの、ドライバーの不注意やミスに起因する事故は後を絶ちません。
なかでも車両や歩行者が行き交う交差点は、交通事故の多発ポイントです。警察庁統計局の発表する「令和2年中の交通事故の発生状況」によれば、交通事故のうち56.1%が「交差点内」および「交差点付近」で発生しています。
さらに、それぞれの道路環境によっても、事故の起きやすい交差点があるようです。「一般社団法人 日本損害保険協会」が毎年公表している「全国交通事故多発交差点マップ」を見てみると、2020年の交通事故件数上位11位のうち6つが大阪府にある交差点でした。
このような事故多発交差点には、どのような傾向があるのでしょうか。実際の事故原因や注意すべきポイントについて、大阪府警本部にて交通事故調査官を務める方に話を伺いました。
「事故多発交差点」に共通する傾向と、実際の事故原因
先の「全国交通事故多発交差点マップ」において、事故件数が上位の交差点を見てみると、共通する傾向として「車線の多さ」や「高速道路などの橋脚」といった要素が浮かび上がります。
たとえば事故件数トップ(22件)の「法円坂交差点」(大阪市中央区)は、片側2~8車線の「築港深江線」と片側2~4車線の「赤川天王寺線」が交わる大型の交差点であり、中央分離帯には阪神高速道路の橋脚が設置されています。
同交差点の手前には高速道路の降り口もあり、見るからに「ドライバーに入ってくる情報量が多い」交差点となっていますが、実際の事故原因はどうなっているのでしょう。
事故原因の多数が「前方不注意」と「動静不注視」
「車線の多い交差点での事故」というと、車線変更に伴う接触事故がイメージされるかもしれません。
しかし調査官の話では、車線変更に起因する事故は「法円坂交差点」で2件(22件中)、同様に車線の多い大阪市西区の「西本町交差点」でも2件(16件中)と、「特段多いとはいえない」とのことでした。
こうした交差点の事故状況を分析すると、多数を占めるのが「追突事故」だといいます。
調査官は「車線が多く、交通量の多い交差点では、運転手の前方不注意や動静不注視(相手の動きについての判断を誤ること)を原因とする軽微な追突事故が増える傾向にあります」と話します。
そのような不注意が生じてしまう原因としては、「大型の交差点のため地理に不案内な人も多く通行しており、どっちに進むか迷って脇見してしまう」といったケースが例として挙げられました。
進むべき方向に確信がもてずに注意が散漫になり、前走車が停止したことに気づくのが遅れる、といった状況が見受けられるようです。
橋脚と事故との関連性は
事故件数上位を占める全国11の交差点のうち、7つは高速道路などの「橋脚」が設置された交差点です。橋脚による見通しの悪さが事故につながっていると予想されますが、実際に関連性は見られるのでしょうか。
大阪府から事故件数上位にランクインした6つの交差点のうち、橋脚が設置されているのは「法円坂交差点(同率1位)」「讃良川交差点(同率4位)」「西本町交差点(同率4位)」の3つです。しかし意外なことに、調査官の話では「実際の事故状況を見ると、橋脚による見通しの悪さが影響した事故は1件もない」とのことでした。
3つの交差点ではいずれも、直進車と右折車を信号で分ける形式が採用されていることもあり、「右折時に対向車が見えずに事故になった」というケースは見られなかったといいます。
それよりも、安全不確認による追突事故や、右左折時における歩行者・自転車との接触事故が多くの割合を占めているとのことです。
事故を防ぐために注意すべきポイント
調査官の方からは、事故予防のうえでドライバーに気をつけてもらいたいポイントとして、「時間に余裕をもった行動」「思い込み(だろう運転)をなくすこと」「思いやりの気持ち」という3点が挙げられました。
前述のように、交差点においては「前方不注意」や「動静不注視」を原因とする追突事故が多発しています。「時間に余裕をもつことで、運転にゆとりが生じ、周囲の安全をしっかり確かめることにつながる」といいます。
また、少しでも早く進もうとすれば、周囲の車の動きを大雑把に予想しながら進む、という「だろう運転」が生じやすくなります。調査官は「たとえば『信号が青になったから、前の車も進むだろう』とアクセルを踏み、予想が外れて追突してしまうようなケースもあるため、相手の動きを思い込むことは危険」だと話しました。
最後の「思いやり」も、「心のゆとり」に関係するポイントです。周囲の動きを見ながら、「こっちに入ってくるかもしれない」など、万が一のリスクにつながる要素にまで目を配らせる「かもしれない運転」が事故防止につながるといいます。
「だろう運転」を避け、「かもしれない運転」を心がけることは、自動車教習所においても繰り返し言及される内容です。多くの交通事故を分析する調査官の話からは、事故を予防するうえで、こうした基本に立ち返ることが何より重要であることが読み取れるでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 鹿間羊市
- 1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...