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遅い・スペースがある…トラックの前へ急な割り込みは注意!過去には高額賠償も

流れのよい高速道路や幹線道路を走っていると、一般車に比べて明らかにゆっくりとしたペースで進むトラックを目にすることがあります。

前車との車間距離を非常に大きく取っているトラックも多く、一般のドライバーからすると「空けすぎでは?」と思うこともあるかもしれません。広く空いた車間に、次々と一般車が入っていく状況も見られます。

しかし、前方が詰まっているケースは特に、トラックの前に割り込む行為は危険な状況を引き起こす可能性があります。トラックをはじめとする大型車両が大きく車間距離を空けているのには明確な理由があり、急ブレーキの際にはさまざまなリスクが生じるのです。

トラックが止まるまでには長い距離が必要

©naka/stock.adobe.com

車両が停止するまでに必要な「制動距離」は、基本的に車重に比例するため、大型かつ大量の荷物を載せたトラックは、止まるまでにより長い距離を要します。

国土交通省発表の「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書」(2019年版)によれば、トラックによる事故のうち約半数が「追突事故」となっています。一方、警察庁発表の「交通事故の発生状況」(2019年版)を見ると、交通事故全体に占める追突事故の割合は約33%です。

相対的に、乗用車に比べてトラックの事故では「追突」が多いことがわかります。原因は「過労による注意力低下」といったドライバー由来の要素も考えられますが、「制動距離の長さ」という車両側の要素もあるといえそうです。

急ブレーキ操作が難しい「エアブレーキ」

上述のように、トラックが車間距離を空ける理由としては、まず制動距離の長さが挙げられます。

さらに、「乗用車とのブレーキ構造の違い」も理由の1つです。通常、乗用車に用いられる「油圧ブレーキ」に対し、トラックなどの大型車に用いられる「エアブレーキ」は、きわめて強い制動力を特徴としています。

ブレーキなどに圧縮空気を送るためのエアタンク ©kanin/stock.adobe.com

制動力の強いエアブレーキは、踏み込む力の調整が難しいことでも知られており、乗用車と同じ感覚でペダルを踏んでしまうと恐ろしいほどの急ブレーキがかかります。

運送業に10年以上携わるトラックドライバーは、「普通の車が『踏んだだけ止まる』のに対して、エアブレーキはラグがあるというか、ドカンと利くイメージです。スムーズに止まるにはかなりデリケートな操作が必要で、急ブレーキをかけてしまうと姿勢が大きく崩れ、かなり不安定な状態になります」と話しています。

実際に衝突まではいかなくとも、トラックは急ブレーキそのものが「コントロール不能な状況」を引き起こしかねません。急ブレーキの際にハンドルを切っていたり、積み荷の重量配分に偏りがあったりすれば、横転のリスクも考えられます。

急ブレーキは積み荷への影響も

実際に事故が起きなくとも、急ブレーキによりトラックの姿勢が大きく崩れれば、積み荷に影響が出てしまう可能性があります。

急ブレーキによって生じる影響について、先のトラックドライバーは「積み荷はワイヤーなどで固定されるのが一般的ですが、重量や形状によっては急ブレーキの際に支えきれなくなる可能性もあります」と話します。

さらに、大きな荷崩れがない場合でも、急ブレーキの衝撃が荷物に影響することもあるようです。トラックドライバーは、「精密機器や危険物、生物など、運ぶもののなかにはデリケートなものもありますし、荷崩れが起きなくても影響が出てしまい、荷主からのクレームにつながることもあります」といいます。

トラックが車間距離を空ける理由は「衝突を避けるために制動距離を確保すること」はもちろん、「積み荷への影響を防ぐために急ブレーキを避けること」にもあるのです。

トラックへの急な割り込みで「損害賠償」の可能性も

©sezer66/stock.adobe.com

一般車両がトラックに対して危険な割り込みを行い、急ブレーキが原因で損害が発生した場合には、割り込んだ側が賠償責任に問われる可能性があります。

損害保険会社の従業員によれば、「車同士が接触していなくても、一方の過失により他方に損害が生じたことが明らかであれば、過失側には損害賠償責任が生じます。過失と損害との因果関係を証明する必要がありますが、ドライブレコーダーの普及により状況を明示できるケースも増えています」とのことです。

トラックは非常に高価な物品を積んでいるケースもあり、荷崩れにより数千万円の損害が発生することもあります。2021年に滋賀県の自動車専用道路にて、乗用車の急な割り込みとブレーキが原因でトラックの積み荷が破損し、3,000万円近い損害が生じた件が報道され話題を呼びました。

先の保険会社従業員の話では「あおり運転など、故意や重大な過失によって損害を発生させた場合には、補償の対象とならない可能性があります」とのことであり、この場合には加害者自身が被害者の損害を賠償しなければいけません。

あおり運転をしないことはもちろんですが、「トラックは急ブレーキをかけるだけでも危険」ということを念頭に置き、急な割り込みは絶対に避けたいところです。

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執筆者プロフィール
鹿間羊市
鹿間羊市
1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...

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