環境に配慮した「グリーンスローモビリティ」　社会実験として実施された“新感覚のバスツアー”ってなに？

ネイチャーツアーで奥入瀬渓流の大自然を堪能！

同ツアーのスタート地点は「奥入瀬渓流館」で、往路終点の「雲井の滝」を目指します。

有名な観光名所から知る人ぞ知るスポットといった観光スポットまで、奥入瀬渓流の自然を網羅することが可能。例えばダイナミックな激流が特徴の滝「阿修羅の流れ」や、冬の景色に定評がある人気スポット「紫明渓」などを巡ります。

充実した内容ではあるものの、現在はまだ社会実験の段階。今後同様のツアーを一般募集するかまでは決まっていないようです。新たな試みのため、今後“グリスロを利用したツアー”のモデルとなって同様のサービスが普及していくかもしれません。

そもそもどういった経緯で社会実験が実施されたのかというと、同ツアーの公式サイトには下記のように掲載されていました。

「現在、奥入瀬渓流沿い国道102号を迂回するバイパス工事が進められています。バイパス完成後、奥入瀬渓流はマイカー交通規制が敷かれる予定です。将来、マイカー交通規制された奥入瀬渓流での移動手段として、環境に配慮した車両の運行（グリスロ）などが検討されています。今回の奥入瀬渓流ツアー（社会実験）は、グリスロを利用した場合の課題点などを抽出し、将来の交通手段の在り方を検討することを目的に実施するものです」

マイカー交通規制によって交通量が緩和されるため、速度が落ちるものの環境に優しいグリスロを取り入れるとのことですが、社会実験の結果、課題点は見つかったのでしょうか？

社会実験の実施に関わった奥入瀬自然観光資源研究会の古里さんに“グリスロを使ったネイチャーツアーの手ごたえ”について話を伺いました。

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グリスロを体験した利用者の反応は？

――そもそも、なぜ「グリーンスローモビリティ」を導入することになったのでしょうか？

奥入瀬渓流は国立公園特別保護地区に指定されながら、国道102号が並走している特異な環境にあります。繁忙期は渋滞が発生したり、散策者のすぐそばを大型車が爆走したりと、安全上も課題が多い状況です。

そこで国土交通省と青森県において、奥入瀬バイパス（青ぶな山バイパス）というバイパストンネル工事が進められています。同工事は渋滞解消、安全確保、災害時の迂回ルート確保、自然環境保全などが目的。このバイパスが完成すると、将来的に奥入瀬渓流区間はマイカー交通規制が敷かれる予定です。

今回のグリスロは奥入瀬渓流の将来環境を見据え、マイカー交通規制時にどういう交通モードが適切なのか、今からトライアンドエラーを重ねようということで、青森県が実施することになりました。

――社会実験として同ツアーを開いたと思いますが、この活動をおこなう意義、そして最終的に目指す地点、最終目標も教えていただけますでしょうか？

奥入瀬渓流がマイカー交通規制された場合、そこには自然本来の価値を深く感じられる新しい環境が生まれます。

グリスロだけでなく、小型モビリティをはじめとした新しい交通モードを試しながら、将来環境にふさわしい交通体系の構築に貢献していきたいと思っています。

また、グリスロを活用したネイチャーツアーは参加者から非常に好評でした。グリスロは歩くように走る、新しい形のネイチャーツアーとしても十分可能性があると思っています。

――正式導入に向けての今後の改善点も教えていただけますでしょうか？

現在、冬季の走行試験を重ね、暖房をONにした場合のバッテリーの消耗、雪道での登坂、制動等も検証していく必要があります。

他の事業者と連携しながら法律面での課題クリア、性能面の改善などを継続的に進めていきたいと思っています。

また古里さんに「利用者からの声」について伺ったところ、下記のような反響が寄せられたようです。

「バスがスケルトンで車内から見える範囲が広く、反対側もよく見えた。今回は3カ所ほどで下車したが、それぞれの場所でも説明や拡大鏡を使っての苔の観察などがあって面白かった」

「今後のマイカー規制がかかったら、奥入瀬渓流の楽しみ方として魅力的なレジャーになりそう」

「グリスロが快適でした。説明のタイミングも非常に良く、自然観察にはとてもマッチした乗り物だと感じた」

多くの利用者から好評の声が相次いだ“グリスロを取り入れたバスツアー”。今回の社会実験がキッカケとなり、これからグリスロが活躍するシーンが増えていくかもしれませんね。

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