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教習所の運転シミュレーター、最初期からどれくらい進化している?

教習所などで一度は体験したことがあるであろう運転シミュレーター。普段の日常では利用する機会が少ないかたもいるでしょう。運転シミュレーターは最初期からどれくらい進化しているのでしょうか。

本田技研が開発した元祖・運転シミュレーターの価格がとんでもなかった

「DA型」

運転シミュレーターには、大きく分けて3つの使用目的があります。

一つは、ゲームセンターなどに設置してあり、走行タイムを競ったり、異次元空間を走行したりするエンターテイメント用途。もう一つは、道路設計や自動車開発などの分野で使われる研究・開発用途。最後の一つは、自動車販売店や教習所、企業などで安全運転を学ぶために使われる教育・練習用途。

その中でも今回は、教育・練習用途の運転シミュレーターに絞って紹介していきます。

教育・練習用途の運転シミュレーターの用途は、安全運転の知識を得ると同時に、その知識をより深めることにあります。その先駆けとなったのが2001年に本田技研工業が発表した、実車に近い感覚で安全運転を学べるという四輪ドライビングシミュレーター「DA型」です。

ゲームや研究で使われる運転シミュレーターとは違い、より実際の道路に近いルールや運転感覚を再現するために、6軸のモーションベース(動揺装置)が採用され、加減速、ブレーキング、コーナリング時の車の動きを再現することに重点が置かれました。

路上で遭遇しやすい危険パターンを模擬体験することで、ドライバーの危険に対する予知・予測能力や安全運転に対する意識を効果的に高めることに成功したと言えるでしょう。

しかし、当時のシミュレーターは、画像の解像度はあまり高くなく、見やすいとは言えないものでした。

「現実世界に近いリアルな映像を見ながら」というよりは、奥行きのない空間で走っている感覚が強く、1980年代から90年代にありがちな家庭用コンピューターゲームのような世界観であったのも事実です。

そういう時代だから、と言ってしまえばそれまでですが、当時としては革新的な技術を盛り込んでおり、価格は運転シミュレーター本体だけでおよそ1,000万円。

さらに、120万円以上する危険予測や高速道路体験などが可能なオプションソフトを搭載すると、導入には総額で1,500万円以上の費用がかかっていました。

現在もモデルチェンジしながら現役で活躍中!価格も200万円台に

「DB型」

2010年には、初代「DA型」がフルモデルチェンジし、「DB型」へと進化しました。

DA型の特徴であった6軸から2軸のモーションベースに簡素化された低価格モデルもラインナップされ、導入しやすくなりました。画面は3つになり、より広範囲に道路状況を再現し映し出せるように改善されました。

「DB型モデルS」

そして、2021年には「DB型モデルS」へと進化。6軸や2軸のモーションベースは廃止され、よりコンパクトな設計となり、価格は税抜285万円。より多くの企業や教習所での導入がしやすくなりました。

シミュレーターで使われているハンドルや装置類なども最新車種で使用されているものと同じものが使われ、ハード面でも刷新が行われています。

ゲームを手掛けるあの有名企業が作ったシミュレーターも登場

「SLDS-3G」

時代が進むにつれ、モーションベースなどが廃止され簡素化されていったのは前述の本田技研工業のシミュレーターでも紹介した通りです。

その一方で、著しく進化したのは、映し出される画面の繊細さ、道路状況の再現性の高さです。簡素化された部分がある一方で、画面の見やすさに重点が置かれるようになっていきます。

アーケードゲームなどを手掛けるセガ・ロジスティクスサービスは、バーチャルリアリティ技術で培ったノウハウを活かし、交通安全教習の向上、優良ドライバーの育成を目的として、2013年に自動車教習所向けの運転シミュレーター「SLDS-3G」を発表します。

筆者自身、主に「SLDS-3G」を使ってシミュレーター教習を行っていました。

それまで、本田技研工業製の運転シミュレーターを使っていましたが、鮮明かつクリアな画面で、そのリアルさ、道路状況の再現性の高さに驚いた記憶があります。モーションベースは廃止され、座席が動くことはなくなりました。

また、教官側は、タブレット端末1台でシミュレーター本体に様々な指示を出せるなど、手軽に素早く操作が行えるのも特長で、本体の電源を入れたり切ったりすると、Windowsのロゴが出てくるあたりにも技術の進歩を実感したものです。価格は600〜700万円ほどで販売されています。

リアルすぎる弊害?シミュレーター酔いには注意が必要

@monet/stock.adobe.com

こうした技術の進歩の一方、運転シミュレーターを行う上で、気を付けなければいけないのが「シミュレーター酔い」(またはVR酔い)です。

一説には、目から入ってくる情報と、身体に及ぼす動きにズレが生じるとシミュレーター酔いを起こしやすくなると言われているものです。

年齢や性別、経験などによっても違ってくるようで、かなり個人差がありますが、運転シミュレーターを体験する上で気を付けなければならない課題です。人によっては、一時的に歩けなくなったり、一日中めまいや吐き気に襲われてしまう可能性もあります。

実際に現場で指導していた時には、そうした重度のシミュレーター酔いに見舞われてしまう教習生が何人もいました。

筆者自身、慣れるまでは、軽いめまいに襲われることもありました。運転に慣れている人ほど、実際の感覚が身体に染み付いているため、シミュレーター酔いが発生しやすくなるとも言われています。

そこでシミュレーター酔いを防止するには、どのような点に気をつければいいのか、運転シミュレーターの開発・販売を手掛けるアイロック(IROC)の担当者に話を聞きました。

「酔いの原因は様々考えられますが、シミュレーター独自の目線や動きなど、実車との違和感からくると思います。弊社の話にはなってしまいますが、アイロックのシミュレーターの始まりはゲーム利用などのエンターテイメント用途ではなく、自動車開発にあります。

アイロックオリジナルのモーションシステムは、重力加速度と車両姿勢を詳細に設定できるだけでなく、走行データを数値化できます。

また、一時期増えた8軸や10軸のようにアクチュエーター(モーションベース)を増やして電動による挙動を出すのではなく、自然な車のねじれ感、タイヤのボトム感などを再現しています。

さらに、開発者がプロのレーサーであることから、デジタルのデータをアナログ(体感)に変換する技術により、実車に近い動きを再現しており、酔いにくいと言われています。

それに加えて、長時間体験しないことや、事前に酔ってしまうと考えないこと、画面の近くではなく、遠くを見るように意識することがシミュレーター酔いを防ぐには大切なことと言えるでしょう。」

病院のリハビリツールとして運転シミュレーターを活用する動きも

「SDT」

筆者自身、運転シミュレーターによる運転能力の向上は、様々な交通課題の解決に役立つと考えています。そこで、前述の担当者に、運転シミュレーターでどのような社会問題を解決できるのか、伺いました。

「アイロックのドライビングシミュレーターは運転能力の向上のための「教育ツール」です。

プロレーサーやEスポーツ選手のトレーニングに利用していただくのはもちろん、一般の方の運転操作ミスによる交通事故などは、運転シミュレーターによって運転能力を向上させることで改善できると考えています。

アイロックのシミュレーターは、すでに警察署との安全啓蒙のツールとして、あるいはタクシードライバーの運転トレーニングツールとして、また、高齢者講習のコンテンツツールとして、さらには病院でのリハビリツールとして、幅広く利用されてます。」

運転シミュレーターであれば事故を起こしてしまっても問題ありません。もちろん事故を起こすことは良くないことですが、実車において事故にならないように対処することが重要なのです。そのために運転シミュレーターで危険なシーンにたくさん遭遇しておくことが大切です。

最新モデルはカラバリを選択できて198万円からと低価格

「T3R」

アイロックが手掛ける最新の運転シミュレーターの具体的な機種と特長を解説してもらいました。

「アイロックでは、T3RとDRiVe-Xという2つのブランドの運転シミュレーターを展開しています。

T3Rは、自動車メーカーや自動車関連企業との研究開発用途での利用を想定していますが、自動車販売店における安全装置及び自動車サポート機能の訴求・販売サポートツールとしての利用にも対応可能です。

さらに、運転教育・トレーニングツールなどにも使えるため、様々な用途で活用できます。

一方、DRiVe-Xは、コンパクトかつスタイリッシュなフォルムで場所を選ばないことが特長のレーシングシミュレーターです。

「DRiVe-X」

ステアリング、ペダル、シート、ボディカラーなどのバリエーションを自由に選択して、自分好みにカスタムすることで、オリジナル運転シミュレーターを作れることが魅力です。

その点では、T3R以上に訴求できる業界は幅広く、運転シミュレーターとしては珍しく、企業だけでなく、個人向けとしての提供も想定しています」

T3Rのラインナップのうち安全運転トレーニングに特化した「SAFETY DRIVING TRAINER(SDT)」と、トラックタイプ「SAFETY TRUCK 2M」は、走行するシーンや昼夜といった時間帯、晴天・雨天などの天候を細かく設定変更可能です。

そうして組み合わされた道路状況のパターンは420種類にもなり、さらに、普通車や軽貨物車、4トントラックといった車種選択も自在だということです。

価格は、SDTで税別348万円、DRiVe-Xは税別198万円からとなっており、最新技術を盛り込んだ運転シミュレーターとしては、価格がずいぶんと抑えられているという印象です。

今後は趣味用として普及する可能性も!?

©Nitiphol/stock.adobe.com

教習所や警察署などでしか使われていない、用途が限定されているという印象の強い運転シミュレーターが、最近ではここまで幅広い用途で使えるのか、ということに驚きました。

運転シミュレーターのボディカラーを好みの色に選択できたり、オプション品を追加できたりする商品構成を見ると、教育・練習用の道具という範疇を超えた、運転シミュレーターの可能性が広がっていくとも言えるでしょう。

担当者に話を聞き、技術の進歩と同時に、運転シミュレーターはこれまで以上に身近なものになりつつあると実感しました。

アイロックでは今後、運転シミュレーターの魅力を広めるためにショッピングモールなどで体験できる機会を設けるなど、様々な取り組みを行っていくとのことです。いずれは、個人の趣味用として、運転シミュレーターを購入する人が出てくる可能性も充分にあります。

休日や仕事終わりに、気軽な気持ちで映画を見に行く代わりに、自宅のリビングにある運転シミュレーターを楽しむ!そんな日常が現実になろうとしているのですね。

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執筆者プロフィール
室井大和
室井大和
1982年生まれ。ライター歴6年、自動車業界9年。合わせて約15年。雑誌編集、記者、指定自動車教習所員資格保有。愛車はスズキスイフトスポーツ(33型)、BMW323i(E90型)、ジムニー(JB23型)。車はセダンではじ...

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