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クルマの買取価格は今が最高潮?中古ディーラーが答える「一種の非常事態」とは
さまざまなライフイベントのなかでも、「自動車の買い替え」には大きな費用がかかります。「少しでも負担を抑えたい」と考えるのが自然な気持ちですが、この際見落とされがちなのが「それまで乗っていた車をいかに高く売るか」というポイントです。
手元にある車両に高値がつけば、それだけ乗り換え時の費用負担を抑えることができますが、中古車の買取相場はつねに同じではありません。車両の条件が同じでも、タイミングによって買取価格に差が出ることもあるのです。
定説として、車の売り時は「1月から3月」といわれています。一体、そこにはどんな理由があるのでしょうか。
中古車の需要は3月がピーク?
「1月から3月に中古車の買取価格が高騰する」といわれる理由は、端的に「需要の増加」にあります。新車・中古車を問わず、例年もっとも登録台数が伸びるのは「3月」であり、中古車業界ではピーク時に向けて在庫確保の動きが強まるのです。
「一般社団法人 日本自動車販売協会連合会」が発表している中古乗用車の月別登録台数を見ると、2021年3月には約42万台が登録されているのに対し、その他の月では30万台を超えることがありませんでした。この傾向は過去5年変わらず、概ね「通常は20万台~30万台、3月のみ40万台」といった動きが指摘できます。
中古車ディーラーのスタッフに話を聞くと、「3月は新生活への準備などもあり、中古車の需要がもっとも高まる時期ですので、例年相場は上昇する傾向にあります。肌感覚としては、とくにコンパクトカーや軽自動車の販売が増加する印象がありますね」とのことでした。
新年度に向けた人事異動を直前に行う企業も多く、この時期に車が急遽必要になるケースは珍しくありません。その他の面でも、新年度はライフスタイルの変化が生じやすいことから、3月には自動車の需要が高まる傾向にあるようです。
「車の売り時は1月から3月」は本当か
それでは実際に、3月に向けて車の買取価格は上昇していくのでしょうか。
中古車ディーラーのスタッフは、「一番買取額が上がりやすい時期でいえば、1月から2月にかけてですかね。販売する側としては、仕入れてから店頭に並べるまでに一定の時間がかかりますので、仕入れが3月の中旬以降になると繁忙期に間に合わなくなる可能性もあります」といいます。
新年度に向けて車を購入するのであれば、多くのユーザーが「3月中の納車」を希望するでしょう。中古車販売業者がもっとも車を売りたいのは「納車が3月中に間に合うタイミング」であるために、買取価格が上がりやすいのもこのポイントとなるのです。
そのため「3月いっぱいまでは車が高く売れる」と考えていると、ベストな売り時を逃してしまう可能性もあるといいます。先のスタッフによれば、「乗り換えの多い3月にはそれだけ多くの車が売却されることになるので、例年4月以降の市場は供給過多になり、相場は下落する傾向にあります」とのことです。
つまり同じ3月であっても、後半になるほど中古車の供給量は増加し、需給のバランスが逆転していく傾向が見られるようです。4月に入る頃には「市場に車が余っている」ような状況になるため、販売側としては「3月中に売れるタイミング」で買取を強化することになります。
買取価格の上昇はどのくらい?
中古車の需要が高まる時期には、具体的にどのくらい買取価格は上昇するのでしょうか。
複数の中古車ディーラーに尋ねたところ、その回答はさまざまであり、「5%程度の上乗せ」といった具体的な数字のほか、「明確な数値設定はしておらず、現車の状態とニーズから決めている」といった答えも聞かれました。
傾向として、「すべての車がプラス査定になるわけではない」という旨の回答が多くありました。ある中古車ディーラーの代表は次のようにいいます。
「一律に買取価格が上昇するというよりは、『在庫にならずにすぐ売れる』と判断できる場合に査定を上乗せする、という感じですね。低年式、過走行といった車両だと、この時期でも高く買うのは難しいです。また、N-BOXやアルファード、ランドクルーザーなど、つねに需要があったり、海外マーケットがあったりするモデルは、この時期だから高くなる、というのはないかもしれません」
このように、相場が高値で安定しているモデル、あるいはもともと需要がほとんどないモデルは、この時期でも価格上昇が見られにくいという声もありました。
半導体不足により、現在は時期によらず相場が高騰中
複数のディーラーに取材するなか、共通して聞かれたのが、「2022年2月現在では半導体不足や新型コロナウィルスの影響により、中古車市場が高騰しているため、買取価格も相当に上昇している」という点でした。
あるディーラースタッフは、「今は一種の非常事態というか、時期というよりも、新車の生産状況によって中古車相場がかなり左右されている状況です。メーカーを問わず、納車までの期間がかなり延びているので、中古車の需要が高まり、買取価格も去年に比べて高くなっています」と話します。
別のスタッフの話では、「ごく最近の例で、半年前の査定よりも10%以上買取価格が高くなり、売却を決めたお客様もいました」とのことであり、あまり例を見ない状況になっていることがわかります。
中古車市場が高騰している現在は、「車の売り時」が継続している状況だといえるかもしれません。一方で、新車の納車期間が延び、中古車の相場が上がっている現状では、「新たに車を手に入れること」のハードルが高くなっている面もあります。
車を買い替える場合には、「いつまでに新しい車が必要か」という点を整理し、今ある車をなるべく高く売れるタイミングを見極めたいところです。新車の納期が延びている現在は、とくに「早め早めの計画」が大切だといえるでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 鹿間羊市
- 1986年生まれ。「車好き以外にもわかりやすい記事」をモットーにするWebライター。90年代国産スポーツをこよなく愛し、R33型スカイラインやAE111型レビンを乗り継ぐが、結婚と子どもの誕生を機にCX-8に乗り換える...