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運転手不足に悩む市バスで「あおり運転」が問題に…被害者が取材して見えた“再発”の背景とは
「働き方改革」の結果、あらゆる業種で運転手の不足が予想される「2024年問題」。
地方の路線バス会社でも頭の痛い問題で、中には早くも路線減少どころか廃業を決めた事業者もあるほどですが、数少ない運転手が問題のある運転で苦情の発端となってしまった場合でも、容易に人材入れ替えとはいかない…という事態も今後は増えてくると思います。
今年の8月にも仙台市営バスによる「あおり運転」が問題になりましたが、実は筆者も別件であおられた当事者のひとり。その観点から「問題のある運転」や、地方のバス事業者が抱える悩みなどを仙台市交通局へ質問しつつ、考えてみました。
筆者も受けた路線バスによる「あおり運転」
2023年8月27日、地方紙の「河北新報」(宮城県仙台市)による「仙台市バスにあおられ恐怖 市民被害訴えに交通局謝罪」という記事を第一報として、TVやネットによる全国報道となったのをご記憶の方もいると思います。
実は筆者も仙台市営バス(以下「市バス」)から「あおり運転」と認識される運転をされ、謝罪を受けた当事者の1人です。
仙台市バスによるあおり運転は報道前にも
筆者は今年4月、仙台市中心部の晩翠通り(片側2車線)を北上中に市バスを右側車線から追い越した後、約230m先の定禅寺通りを左折するため、ドアミラーとサイドミラーで市バスとの距離を確認、左ウインカーを出しました。
その時点で左後方の市バスがハイビームでパッシングしてきたものの、バックミラーにはバス全体が写っていたので十分に距離があると判断、バスの前に車線変更したのですが、直後にバックミラー一杯に写ったのは「パッシングを繰り返しながら車間を詰めてくるバス」。
その後に左折するとはいえまだ200mほど先、こちらは減速すらしていないのに市バスはブレーキパッシングを繰り返しながら「早く行け!」とばかりに車間を詰めてきます。
さすがに異様な雰囲気を感じて加速、急いで定禅寺通りを西公園へ向かって左折しましたが、動揺は収まりません。
その足で帰宅すると、仙台市交通局HPの「仙台市交通局へのご意見・ご質問」(みやぎ電子申請サービス)からコトの次第と、該当バスのドライブレコーダーを確認してほしいと書き込み送信しました。
謝罪は迅速に行われたが…すぐに再発
1週間後…「ドライブレコーダーを確認したところ、確かに本来の使用方法と異なるハイビーム操作がありました」と返信があり、加速を続けて車間を詰めてきた事には触れていなかったものの、今後の教育・指導に期待して謝罪を受け入れたのです。
しかし3か月後の7月には再び市バスが、今度はクラクションを鳴らしながらあおり運転をして、8月に報道…こんな事を繰り返すなど、仙台市バスで何が起こっているのか?!と、当事者としては疑問に思わざるを得ませんでした。
「運転手への指導や研修は?」仙台市交通局に取材
そこで今回、この記事化にあたって仙台市交通局自動車部業務課へ、いくつかの質問をさせていただきました。
少なくとも2回起きたあおり運転、特に私については謝罪を受け入れたので、「今後は気をつけて安全運転に努めてください」というほかないのですが、バス事業者としても2024年問題で運転手の質・量ともに頭を痛めている時期です。
運転手のマナーを維持、向上させるために、どのように考えているのか…まとめると以下のようになりました。
実際、かなりの頻度で研修は行われているようだが…
- 年12回、事故防止に関する研修と、接客接遇に関する研修(交通局本局)
- 月1回の職場研修会と、年3回のスキルアップ研修(各営業所)
- 運行委託先の宮城交通とJRバス東北は各社ごとに研修をしているが、即時共有している
他に新規採用時研修などや、毎日の出勤時には注意事項やマナー向上などの周知徹底…と、かなりの頻度で研修に時間を割いている事だけはわかりました。
しかし現にパッシングやクラクションで「先行車を威嚇するあおり運転」が起きたわけで、研修に実効性があるのか?どんな研修をしたのか?が疑問ですが、これについては仙台市交通局自動車部業務課からの以下の回答を抜粋します。
「出勤時における個別点呼の際、運行管理者から乗務員一人ひとりに対し、パッシングやクラクション及び車間距離を詰める行為は行わない事はもとより、法令を遵守し他車の模範となる運転操作を行うよう指示を徹底しております。」
あおり運転の再発についてのコメントは?
それでも「あおり運転」が再発したことについては、こう締めくくられていました。
「私共の指導教育が至らなかったものと重く受け止め、指導教育の徹底を継続してまいります。」
うーん…ハッキリ言ってしまえば、指導教育の徹底とはいうものの、効果が薄かったのでは…と思いますが、筆者に妙案があるわけでもなし、交通局としても「他にどうしようもないのだから、頼むよホント」というのが本音かもしれません。
- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...