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運転手不足に悩む市バスで「あおり運転」が問題に…被害者が取材して見えた“再発”の背景とは
「運転していない」ときに管理・指導しても意味がない?
バスでなくとも、危険を感じる状況でもないのにパッシングやクラクションを先行車に浴びせかけるのは、「どけ!」か「速く行け!」とイライラしながら行うものと相場は決まっていますが、運転手にそういう心理を抱かせるような要因がなかったかも気になります。
これに関しては以下の回答を抜粋します。
「交通局においてはどのような状況においても、運行の遅れを挽回するような回復運転は行わないよう指導しており、遅れ発生に対するペナルティはございません。」
そうなると、バスが先行車を威嚇する理由はますます見当たりません。
さらに運転手には年1回のストレスチェック、産業医による問診や、月4回も看護師が各営業所を巡回して健康面談をしているそうです。
ハンドルを握ると人が変わってしまうから?
これを額面どおりに受け取るならば、「普段は何も問題ないけど、ハンドルを握ると人が変わる運転手がいる」という事になりますが…バス以外でもそういうドライバーはいますし、将来的にAIが乗車中にチェックでもしない限り、解決は難しいのでしょう。
研修にせよ、ストレスチェックにせよ、「実際に運転していない時にやっても効果が薄い」という事になりますが、今回の市バスの件に限らず、自身の事として考えると耳が痛いドライバーは多いのではないでしょうか?
2024年問題は仙台市バスも頭を痛めている
今でもギリギリ最低限の運転手が頼り
AIによるストレスチェックの実現が先か、AIがそのまま自動運転するようになるのが先かはわかりませんが、当面はたとえ問題があろうとも、運転手がバスを動かさないと路線バスを維持できない事には変わりません。
仙台市交通局では2024年問題についてどのように考えているかを尋ねてみたところ、やはり深刻な問題と、運転手の士気の維持に注力している様子が浮かび上がってきます。
「最低限の乗務員数は確保しておりますが、休暇取得者の代務者確保等を考慮すると十分な乗務員数ではなく、今後も乗務員を確保していけるという見通しは立っておりませんことから、様々な機会を捉え乗務員確保に向けた取組に努めてまいります。」
既に簡単に休めないほど運転手の余裕はなく、苦情が多いので入れ替えなど簡単にできないそう。
そのため、苦情だけではなく感謝の意見も共有して、運転手の士気が下がらないよう努めており、苦情の多さに退職してしまったような事例もないそうです。
仙台市交通局はSNSなどで盛んに求人しているとはいえ、モノになるかわからない新人をイチから教育するより、技量は確かな既存の運転手にマナー教育をした方が間違いないでしょう。
ドラレコではなく、リアルタイムでの管理を検討した方がいいかも?
今年8月の「あおり運転報道」に対し、ホンの少し前に当事者だった筆者はもちろん、SNS上でもさまざまな意見があったものの、2024年問題のため数が限られる貴重な運転手に、丁寧な指導と意識改革を促していく以外はどうにもならなそうです。
強いて言えば、「見られているかもしれない緊張感」を持たせるため、ドライブレコーダーによる走行記録から一歩進め、映像や音声をリアルタイム送信して遠隔で監視できるシステムを導入してほしい…という想いはありますが。
どのみち今の世の中、乗客がスマホひとつで「運転の実況」など簡単にできてしまいますし、それで決定的な証拠など拡散される前に、先手を打ってしまった方がいいかもしれません。
最後に、仙台市交通局からの、利用者に向けた言葉をもって締めくくりたいと思います。
「皆様から信頼され、安心してご利用いただける公共交通として、今後も各種の指導教育に取り組み、更なるサービス向上と安全運行の徹底を図ってまいりますので、市営バスをご利用くださいますようお願い申し上げます。」
仙台市交通局自動車部業務課の担当者様、今回はお忙しい中、回答いただきありがとうございました。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...