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ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違い【ややこし語#23】
ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違いは?
ターボチャージャーとスーパーチャージャーは、どちらも「過給機」に分類される部品です。
過給器は圧力を高めた空気をエンジンに送り込み、エンジン出力を向上させる働きがあります。
ターボチャージャーとスーパーチャージャーはどちらもエンジンをパワーアップさせるためのものとなりますが、性質の違いからそれぞれでメリットとデメリットが分かれているため、目的に合わせた使い分けが必要です。
似ているようで似ていないターボチャージャーとスーパーチャージャー。この2つがどのような違いをもっているのか解説します。
カギは「コンプレッサーの回し方」
過給器は、空気を圧縮する「コンプレッサー」という部位を備えていて、このコンプレッサーは回転することで効果を発揮します。
ターボチャージャーとスーパーチャージャーではコンプレッサーを回転させる仕組みが異なっていて、それがこの2つのメリットとデメリットを分けています。
効率が良いターボチャージャー
ターボチャージャーはエンジンから排出されるガス(排気ガス)の流速をエネルギーとして利用しています。
排気ガスをタービンと呼ばれる風車のような部品で受け、タービンが回って得られた回転エネルギーをコンプレッサーに伝えているのです。
不要になった排気ガスがエネルギーの源となるため、エンジンを効率良くパワーアップすることが可能になります。
しかし、エンジンの回転数が低いときは排気ガスの流速が十分でなく、ターボチャージャーは過給機としての力をあまり発揮できません。
回転数が高まり流速が速くなるにつれて徐々に力が発揮されますが、ドライバーにとってはアクセルを踏んでもはじめのうちはパワーがなく、後からパワーが湧いてくる、タイムラグがあるように感じてしまうものです。これは「ターボラグ」と呼ばれています。
近年の車ではこうしたターボラグは抑えられ、低回転からでもしっかりと力を発揮するようになりました。昔のターボチャージャー搭載車ではこのターボラグを感じることが多いのですが、それも「味」のひとつとして好むファンは少なくありません。
反応が良いスーパーチャージャー
スーパーチャージャーはエンジン内部にある「クランクシャフト」が回転する力を利用。クランクシャフトの回転をベルトなどを介してコンプレッサーに伝えています。
クランクシャフトの回転数がエンジンの回転数となるため、スーパーチャージャーはエンジンが回ってさえいれば常に過給を行なっているというものです。
そのため、低回転からでも力を発揮し、またエンジンの回転数に連動するため前述のターボチャージャーのようなターボラグがありません。
いっぽうで、クランクシャフトの回転エネルギーを利用しているため、不要になった排気のエネルギーを利用するターボチャージャーと比べると効率は劣ります。
このほかにも作動音が大きいということやコストがかかるということなどから、スーパーチャージャーよりもターボーチャージャーを採用する車種が多数です。
2つを組み合わせた車種も
一部の車種では、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせる「ツインチャージャー」を採用しているものもあります。
国産車では1989年に日産が「マーチ」にツインチャージャーを採用したグレード「スーパーターボ」を発売しました。
ツインチャージャーは、ターボチャージャーが苦手とする低回転域ではスーパーチャージャー、その逆にスーパーチャージャーが苦手とする高回転域ではターボチャージャーと、全域で過給による強い力を得られるというものです。
さぞ優れたパワートレインであろうと思われますが、実際にはこの2つを搭載することで部品数が増えてしまい、コストはもちろん重量も増えてしまうといった弊害を招きました。
部品の故障リスクも高くなり、修理費用も嵩んでしまうことから、マーチ スーパーターボはこの代限りで消滅。
ツインチャージャーに限らず、ターボチャージャー、スーパーチャージャーなど、過給器には一長一短があり万能ではないのです。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...