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V型エンジンとは?メリット・デメリットやWエンジンとの違いも解説
多様性に富んだレシプロエンジン
現在私たちが使用している自動車の多くは、内燃機関を採用しています。内燃機関には様々なタイプが存在しますが、その中でもシリンダーの中で燃料を爆発させ、ピストンを往復運動させることで熱エネルギーを得るレシプロエンジンが一般的なものとなっています。
これまでレシプロエンジンは自動車だけでなく、船舶や鉄道、発電機など多岐に渡って使用されてきました。ボア(内径)×ストローク(行程)によって算出される排気量は数10ccから2万リットルを超えるものもあり、シリンダー(気筒)数では単気筒(シングル)、2気筒、多いものでは16気筒など、そしてシリンダーレイアウトは、直列やV型、水平対向型、星形など多くの形式が存在しています。
それらレシプロエンジンのそれぞれが持つ特徴やメリット、デメリットを探っていくこの企画、今回は「V型」及び「W型」というシリンダーレイアウトに注目し、考察していきたいと思います。
V型エンジンとは?メリット、デメリット
現在多くの自動車で採用されているのは、シリンダーが直線上に配列された「直列型」となっています。一方でV型エンジンは、その名のごとく「V」字型に2列にシリンダーが並ぶ構造とされています。
市販された自動車では、V型2気筒、V型4気筒、V型6気筒、V型8気筒、V型10気筒、V型12気筒、V型16気筒を搭載したモデルがあります。
そもそもレシプロエンジンは気筒数を増加させることで、排気量を増やすことができたり、高い回転数を使いさらなる出力を得ることができるのですが、気筒数を増やし、ただ直線状にシリンダーをレイアウトすると自動車のエンジンルームに収めることができません。クランクシャフトも長くなることで高い剛性力が求められるなど、弊害が生じます。そこで考えられるのがV型エンジンの採用です。
先述したことからも分かるように、V型エンジンのメリットにはクランクシャフトの長さを含むエンジン長を直列型と比べ短くすることができるために、スペース的な高効率化や剛性力面が考えられます。さらに、V字バンクの挟み角や気筒数などを入念に設計することで静粛性の向上や低振動化も図れます。
逆にデメリットとしては、シリンダーレイアウト的に直列型が二つに分かれるために複雑な構造となり、設計面の難しさやエンジン単体での重量が増大してしまうことなどもあり得ます。
上記を踏まえて優しく考えてみると、小排気量車やコンパクトカーであれば直列エンジン、ハイパフォーマンスモデルや大排気量車ではV型エンジンが使われる傾向があると言えるでしょう。
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北米の車社会にマッチしたV8エンジン
もちろん日本車勢や欧州ブランドでも、上位モデルを中心にV型エンジンが搭載された車両を見ることができます。
しかし、広大な北米大陸を優雅かつ快適に移動することが求められ、車格やエンジンの大型化が進められたアメリカの自動車メーカー業界では、長年V型8気筒大排気量エンジンが好まれてきました。
乗用車、トラックをはじめとした商用車、スポーツカーまで採用され、“アメ車=V8”という代名詞的に捉えられることすらあります。
私はこれまでにV6、V8エンジン搭載車を何台も乗り継いできました。その経験をもとに書かせてもらえば、同じV型レイアウトエンジンであっても、V字バンクの挟み角や排気量、トルクを重視したものか、高回転を楽しむキャラクターかで乗り味は異なるものであるのですが、どのエンジンもV型エンジン特有の滑らかさと味わいを持っていたことは断言できます。
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V型よりもさらにスゴい!W型エンジンの魅力とは
今回V型エンジンと共に取り上げるW型エンジンとはどのようなものなのでしょうか。その概要からご説明していきたいと思います。
V型エンジンが1本のクランクシャフトに対して2バンクのシリンダーを組み合わせているものを、W型では1本のクランクシャフトに3バンクまた4バンクのシリンダーを持たせ、W字型にレイアウトしています。
ただでさえV型エンジンでは直列型と比べて設計製造が複雑になっていると書きましたが、W型ではそれに輪をかけて込み入った設計をしなければなりません。一方でメリットに関して考えると、V型エンジンと同じく多気筒化や大排気量化を求めた場合でのエンジンサイズのコンパクトさ、そして多気筒化によるスムーズな回転上昇や高出力をもたらすこともできるのです。
W型エンジンは設計の難しさや製造コストなどの問題からごく一部のモデルにしか採用されていませんが、ハイパフォーマンスカーブランドで知られるベントレーでは古くからW型12気筒エンジンが使われてきました。
その他にもハイパーカーの代表格であるブガッティ ヴェイロンには排気量8,000ccのW型16気筒が搭載されており、その最高出力は1001馬力となっています。
ちなみにベントレーもブガッティも現在はフォルクスワーゲングループに属しており、現在W型エンジンを採用しているその他のモデルもフォルクスワーゲンをはじめ傘下のモデルとなっています。
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憧れのW型エンジンモデルを手中に
先日ベントレー マリナーに触れる機会があったのですが、アイドリング時の低く静かに響き渡る重厚感あるサウンドから、豊かで濃密なトルクを圧倒的なシルキーフィールで味合わせてくれるW12気筒エンジンは感銘を受けるものでした。
もちろんW型エンジンだけではなく、塗装の仕上げから、ウッドやレザーなどマテリアルにこだわったインテリア、しなやかに動く足まわりなどハイパフォーマンスでありプレミアムなパッケージングはクルマ好きでなくとも垂涎の的となっています。
そんなベントレーのモデルラインナップは、新車ではなかなか手を出すことができない価格帯なのですが、中古車市場においてはこなれた値段設定がされた掘り出し物的な車両を見かけることもあります。
価格の面で諦めてしまったり、そもそも自分がベントレーを購入するなどと考えもつかなったかもしれませんが、乗用車に使われるレシプロエンジンの究極系の一つとも言えるW型エンジンを手中に収めるため、この機会に一念発起してみるのも良い考えだと思いますが、いかがなものでしょうか。
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- 執筆者プロフィール
- 小松 男
- 幼少時からクルマ、バイクをはじめ乗り物全般の運転を好み、社会人になり中古車業を営むも上手くいかず業界から離脱。その後は出版社に勤め、幅広く雑誌媒体を手掛ける。こだわりがないというこだわりを掲げる昭...