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キャブレターとは?使い方や効果・ツインキャブについても解説
目次
キャブレターとは「アナログなメカの動きで混合器をエンジン内に送るもの」
現代のクルマには、電子制御式燃料噴射装置、いわゆるインジェクションが使われています。インジェクションは平成12年に実施された排出ガス規制に対応するために広がった燃料噴射機構ですが、それ以前は「キャブレター」が使われていました。
インジェクションがECU(エンジン・コントロール・ユニット)というコンピュータによって燃料と空気の量を制御しているのに対して、キャブレターはすべてアナログ。いわゆる旧車といわれるクルマの多くがキャブレターを使い、アナログゆえの工夫があったのです。
キャブレターは、流体力学のベンチュリー効果を利用する機構です。動いているエンジン内部が外部よりも気圧が低くなり、空気を引っ張る負圧が発生することを利用して混合気(燃料と空気を混ぜたガス)を燃焼室に送ります。
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負圧の変化に対応するための3つの内部機構
エンジンが発生する負圧は一定ではありません。エンジンは常に回転数が変わるからです。そこで、キャブレター内部には負圧の変化に対応するために、3つの内部機構が備わっています。
内部には「スロージェット」と「メインジェット」という、径の違う燃料を送る管があります。スロージェットはアイドリング時のみに使い、メインジェットはアクセル全閉から全開までで使用します。
メインジェットにはニードルジェットという針のような部品が通っており、メインジェットから送られる燃料の量を調整します。ニードルジェットは先端から上に向かって徐々に太くなっており、それがアクセルの開度によってキャブレター内部の負圧が変化すると、ニードルジェットが上下。これによりメインジェットの孔の大きさが変化し、燃料の量も変わるわけです。
キャブレターはこうしたメカニズムが複雑に組み合わさってできていますが、セッティングよって燃料噴射量や混合気比率を変えることはできても、インジェクションのように環境の変化に対して、リアルタイムに燃料供給量を変化させることはできません。
高効率な燃料供給のために考えられたツインキャブレター
キャブレターは基本的に、ひとつのエンジンに対して1個が装着されます。しかし、1個ではより多くの燃料や空気(混合気)が欲しくても供給量に限界があります。
また、気筒数の多いエンジンの場合、混合器をエンジン内部に送るインテークマニホールドという管が、キャブレターから遠いシリンダーに向かうほど長く曲がることになります。これは流入効率の悪さに繋がります。
吸気量の増加によるパワーアップと流入効率の改善に効果があるのが、「ツインキャブレター」や「トリプルキャブレター」という燃料供給装置の多連装化です。1個のエンジンに対して、2個、3個のキャブレターを装着することです。アフターマーケットのチューニングとしてだけでなく、自動車メーカーがスポーツカーや大排気量のクルマに標準装備することもありました。
キャブレターの多連装化は、エンジン内部のチューニングを行わずともパワーアップが望めるため、かつては人気のあるチューニングメニューでした。SUやウェーバー、ソレックスといったメーカーのキャブレターをツインにするのが、スポーツカーでステイタスになっていたのです。
しかし、キャブレターの多連装化にはデメリットもあります。それは、キャブレターひとつひとつセッティングを行わなければならず、各気筒での同調(空燃比や混合気流入量の統一)が難しくなるということです。
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さらに制御するために開発された「2バレルキャブレター」
そこで考えられたのが「2バレル」というキャブレターです。ツインキャブレターと混同されがちですが、2バレルキャブレターは1個のキャブの中に、2本の気道が入っているもののことをいいます。
2バレルキャブレターには、2つのタイプがあります。ひとつは、2つのバレルを別々の気筒に振り分けるデュアルキャブレター(2バレル・シングルステージ)という仕組みです。2つのスロットルバルブの開閉が同時に行われることから、2つの気筒への燃料供給を同時に制御することができるわけです。
これにより、2つのキャブレターのセッティングを別々にするよりも、セッティングが容易になるというメリットが生まれます。
もうひとつは、2バレル・2ステージと呼ばれる2段作動式のキャブレターです。キャブの中にメインバレルとセカンダリーバレル(二次バレル)の2本のバレルがあり、アクセル開度が少ない場合はメインバレルだけ作動。さらにアクセルを開けた場合にセカンダリーバレルも作動し、混合気の供給量を増やすという仕組みです。
ちなみに4バレル・2ステージキャブレターもあり、これはV8エンジンなどより気筒数の多いエンジンやロータリーに装着されます。こうしたキャブレターのグレードアップはOHCエンジンの時代に盛んに行われたチューニングで、ミクニや京浜といった国産メーカーからも様々なタイプのキャブレターがリリースされていました。
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- 執筆者プロフィール
- 山崎 友貴
- 1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...