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追い越し禁止とは?追い抜き・はみだしとの違いや標識など解説
追い越しと追い抜きの違い
自身が運転している車が、前方を走行している車両よりも前へ出る際、“追い越し”もしくは“追い抜き”という用語を使って表現します。
一見、追い越しと追い抜きは同じような言葉に聞こえるかもしれません。しかし、この2つの用語には道路交通法に書かれている・書かれていないという差と、どうやって前の車より先に出るのか手順に違いがあります。
追い越しとは
「追い越し」は、車両が道路車線といった進路を変更して、前方を走る車よりも前に出るのを示しています。
以下、道路交通法第2条21にて追い越しの定義が示されているのを確認してみましょう。
第二条 二十一:追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
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これらの表記から、追い越しは以下の手順で行われていると説明できます。
- 後方を走る車が道路の車線変更などで進路を変える
- 車線変更前に目の前を走行していた車両の横を通過する
- 再び車線を変更して、通過した車両の前方に位置する
重い積載物を積んでいるなどの理由で前方車両の走行スピードが遅く、やむを得ず先行するための行為であると考えてよいでしょう。
追い抜きとは
「追い抜き」は、追い越しと異なり車線を変えるなどの行動は使わず、同一の車線もしくは隣の車線で前方を走行している車両よりも先に出るのを示しています。
追い抜きに関しては、道路交通法で明確に定義した文面がないのが特徴。追い越しで定義されている“前を走る車両の右側から行わなければならない”といった決まりがありません。
追い越しと追い抜きの違いは“進路変更の有無”
これらの要素から、追い越しと追い抜きの違いに挙げられるのは“進路変更の有無”です。
前方を走行している車両を車線変更してまで追い越す、あるいは別の車線を走行しているシチュエーションで横に並び先行するのとでは意味合いが大きく異なります。以下のように追い越しと追い抜きを理解しておくとよさそうです。
- 進路変更をしなければ車両の前に出られない=追い越し
- 進路変更をしなくても車両の前に出られる=追い抜き
追い越し禁止とはみ出し禁止の違い
追い越しと追い抜きよりも説明をするのがややこしい事例が「追い越し禁止」と「はみ出し禁止」です。
字面だけ見ると、“追い越し禁止”は単純に前の車両を追い越さなければOKとわかるかもしれませんが、“はみ出し禁止”と聞いてもピンと来ないかもしれません。
“追い越し禁止”と“はみ出し禁止”の違いを、それぞれの特徴を挙げつつ解説します。
追い越し禁止とは
追い越し禁止は、「前方を走行している車をどのような形であっても追い越しは不可である」という意味です。
例えば、片側1車線の道路で前の車を追い越したくなったと仮定してみてください。車線の範囲内に留まらず「センターライン」と呼ばれる道路に引かれた線をはみ出したり、あるいは車線の範囲内で留まったりした状態で、追い越し禁止の標識が立っていたとします。自動的に前の車を追い越すのは厳禁です。
追い越し禁止の標識が掲示されていれば、車線をはみ出していようがそうでなかろうが、前方を走行する車両を追い越してはいけないのを覚えておかなければなりません。
はみ出し禁止とは
一方、はみ出し禁止は「道路に引かれているセンターラインを超え、右側部分にはみ出して前方を走行する車両を追い越してはいけない」という意味です。
追い越し禁止とは異なり車線をはみ出しての追い越しが禁止されているだけで、車線内であれば追い越しをしても道路交通法違反にあてはまりません。
しかし、原付バイクや二輪車など小柄な車両を除き、普通乗用車などの四輪車同士で同じ車線内での追い越しをするのは不可能に近いでしょう。多くのシチュエーションでセンターラインをはみ出さないと、前方の車両を追い越すのは難しくなっています。
追い越し禁止とはみ出し禁止の違いは“禁止範囲の広さ”
追い越し禁止、はみ出し禁止の違いは、「禁止範囲の広さ」にあります。
追い越し禁止であれば、どのような局面であっても前の車両を追い越すのは厳禁です。一方のはみ出し禁止は、センターラインを超えずに車線内での追い越しが認められています。
しかし、はみ出し禁止で制限されているだけでも、実際に前方の車両を車線内で追い越すのは困難でしょう。四輪車が同じ四輪車を追い越すのは不可能に近いと考えてよいかもしれません。
追い越し禁止の標識
追い越し禁止は、道路交通法によるルールが定められているのと同じく、道路標識も日本の各地を走っていれば見ない日はないほど設置されています。
しかし、追い越し禁止と思っていたら実ははみ出し禁止の標識だったケースもあるため注意しなければなりません。
同じ丸型の形状で、追い越しを禁止するマークが描かれていますが、以下の違いがあります。
- 「追い越し禁止」を示す標識:“追い越し禁止”と記載された「補助標識」が備わっている
- 「はみ出し禁止」を示す標識:補助標識が備わっていない
“追い越し禁止”と示された「補助標識」の有無で意味が大きく変化。補助標識があればどのような状況であっても前方を走行する車両を追い越すのは禁止です。しかし、補助標識がなければ、追い越すために道路の右側部分へ移動して追い越しをするのは禁止ですが、車線内であれば追い越しは可能という解釈へ変わります。
追い越し禁止の標識を目視で確認する際は、本標識の下に補助標識があるかないかチェックするのが誤りを防ぐのに効果的です。
追い越し禁止の場所はどこ?
追い越し禁止の指定がかけられるケースに挙げられるのは大きくわけて8つも存在します。
- 標識やセンターラインによって追い越しが禁止されている区間
- 道路の曲がり角やカーブ
- 上り坂の頂上付近
- 勾配が急な下り坂
- 車両通行帯がないトンネル
- 交差点とその手前30m以内(優先道路を通行している場合を除く)
- 踏切とその30m手前以内
- 横断歩道および自転車横断帯とその30m手前以内
これらは、道路交通法第30条で示されている事項です。
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
一 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾こう配の急な下り坂
二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
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標識やセンターラインによって追い越しが禁止されている区間
追い越し禁止の標識が掲げられている道路では文字どおり前の車両を追い越す行為が禁止されています。
補足事項として、道路のセンターラインが黄色(オレンジ)もしくは白の“実線”で表示されているケースも紹介します。このケースでは、センターラインをまたいで道路の右側を走行しての追い越し行為が禁止です。
ただし、追い越し禁止の標識がない状態で、センターラインが黄色(オレンジ)もしくは白の“実線”で表示されているケースでは、車線をまたがなければ追い越しが可能。とはいえ、四輪車の大きさから考えて車両同士が並走するのは難しく、追い越しは不可能と考えるべきでしょう。
道路の曲がり角やカーブ
道路の曲がり角やカーブあたりも追い越し禁止が定められているケースが多いです。
曲がり角に建物や障害物があって見通しが悪くなっているため、対向車線からやってくる車との事故を避けるのも考慮されています。加えて、無理な追い越しにより、カーブを曲がり切れず事故が生じる可能性があるのも考えられるでしょう。
上り坂の頂上付近
上り坂の頂上付近も追い越し禁止区間に指定されます。
曲がり角・カーブと同様、道路の先が見通せないのが要因です。対向車線からやってくる車両に気づきにくく、無理な追い越しによる事故が考えられるでしょう。
勾配が急な下り坂
勾配が急な下り坂も追い越し禁止の対象です。
勾配が10%以上の坂道を下って車を走らせていると、平地を走行しているシチュエーションよりもスピードが上がりやすいのに気づくでしょう。もし、前の車両を追い越そうとするものなら、対向車線からやってくる車両との事故に繋がる可能性も否めません。
車両通行帯がないトンネル
“車両通行帯がないトンネル”も、追い越し禁止の対象となります。
「車両通行帯」は簡単に表現すると、片側一車線しかない道路のことを示しています。この状態では複数の車線が存在しないため、車線の変更はできません。もし、追い越しをするのなら逆車線へはみ出すこととなりますが、トンネル内は暗闇に包まれるなど視界が遮られるため、危険を加味して追い越し禁止としていると考えられるでしょう。
第二条 七:車両通行帯 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。
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交差点とその手前30m以内(優先道路を通行している場合を除く)
交差点とその手前30m以内も、追い越し禁止の対象です。
大規模の幹線道路を通行しているなど、優先道路を走行しているシチュエーションは除きます。しかし、市街地や住宅街の敷地内にある交差点などでは、交差点もしくは交差点から30m以内の範囲は追い越しが厳禁となるため注意しましょう。
踏切とその30m手前以内
踏切とその30m手前以内も追い越し禁止の対象です。
踏切は手前にある白線で一時停止してから通行したり、駐停車が禁止となっていたりと細かい交通ルールが決められていますが、前を走行する車両の追い越しも禁止行為に含まれます。
横断歩道および自転車横断帯とその30m手前以内
横断歩道および自転車横断帯とその30m手前以内も追い越し禁止に含まれているため注意しましょう。
横断歩道を渡る歩行者、自転車横断帯を通行する自転車に乗った人が追い越しを図った車両と接触事故を起こす可能性が考えられるからです。加えて、信号のない横断歩道や自転車横断帯に信号がなければ「歩行者優先」となる交通ルールがあります。
追い越し以前に、横断歩道や自転車横断帯の手前で一時停止しなければならないルールがあるため、併せて注意すべきかもしれません。
追い越し禁止に違反したときの罰則内容
追い越し禁止に該当する違反をしてしまったら、運転免許の違反点数が課せられたり反則金を支払ったりしなければならないのでしょうか。
結論から述べると、「放置・駐停車に関するもの以外の反則行為」に含まれる「追越し違反」の項目に該当します。運転免許に違反点数が課せられるのに加えて反則金を支払わなければなりません。
追い越し禁止の違反点数
追い越し禁止の違反点数は以下のとおりです。
少なくとも、違反に該当すると違反点数2点が課される仕組みとなっているほか、飲酒運転が絡んでいるとさらに違反点数が課せられます。
追い越し禁止の反則金
追い越し禁止の反則金は、車両の種類・大きさごとに金額差が設けられています。
普通車(普通乗用車)の9,000円を基準に、6,000円から1万2,000円の範囲で設定されているのが特徴です。四輪車・二輪車だけでなく小型特殊車両など特殊なものから、原付バイクにも反則金が設定されているのは頭に入れておくとよいでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...