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直噴エンジン・直噴ターボとは?仕組みやメリット・デメリットを解説
直噴エンジンとは
トヨタ 86に搭載される直噴エンジン
直噴エンジンとは、気筒内に直接燃料噴射する方式を採用するエンジン。それに対して、一般的なエンジンは吸気バルブ手前から燃料を噴射するポート噴射が用いられています。
直噴エンジンはガソリンが蒸発する際に発生する気化潜熱による冷却を利用し、気筒内の混合気温度を下げます。それにより、ポート噴射に比べエンジン圧縮比を高め、高出力を得ることが可能です。
現在の直噴システムは、かつての少ない燃料での燃焼を目的とした直噴システムではなく、実用域でのパワフルな出力特性と、ポート噴射よりも高い燃費効率を実現したエンジンです。
直噴ターボとは
近年登場する新型ターボ車のほとんどは直噴システムを採用しています。ターボエンジンは吸入空気を加圧することでエンジンに大量の空気と燃料を送り込み、排気量よりも大きな力を発生させられる構造です。
加圧された空気を気筒内でさらに圧縮すると、高熱を帯びた混合気は異常燃焼をおこしてしまうため、ターボエンジンの圧縮比は総じて低めに設定されます。また、燃焼温度を下げるために燃料を多めに噴射しなければいけないため、燃費の悪化が避けられませんでした。
ターボエンジンの直噴化は、燃焼温度を燃料の気化潜熱により冷却できるため、これまで冷却に使っていたぶんの燃料を減らし、従来のターボ車よりも燃費性能を大きく向上させたのが特徴です。
直噴エンジンのメリット
冷却効率がよい
直噴エンジンは、ガソリンが蒸発する際に発生する気化潜熱による冷却を利用し、気筒内の圧縮温度を下げることができます。エンジン内部に取り込んだ空気が圧縮されると熱が発生。発熱量は圧縮比が高いほど増大するため、圧縮比はガソリンが自然着火(ノッキング)しない程度にとどめる必要があります。
直噴エンジンは、ポート噴射ではガソリンが自然着火してしまう圧縮比でも、気化潜熱による冷却効果で圧縮温度を下げることができるため、耐ノッキング性を高めることが可能です。
ノッキングの詳細は下記リンクの記事で解説しています。
エンジンに起きるノッキングとは?デトネーションやプレイグニッション等の症状から原因や対策についても!
パワー・トルクが出しやすい
直噴エンジンの高い耐ノッキング性は、ポート噴射ではノッキングを起こしてエンジンを壊してしまうような高圧縮比と点火タイミングでも安全な運用が可能です。
圧縮比を高めることで発生する、より強力な爆発エネルギーを適切な点火タイミングでよりムダなく動力に変換し、ポート噴射エンジンよりも高いパワーとトルクを発揮することができるのが直噴エンジンの特徴です。
燃費がよい
直噴システムによる向上した出力により、一定量の燃料からより大きなエネルギーを取り出せるため、ポート噴射エンジンに比べて燃費性能が向上します。
直噴エンジンのデメリット
価格が高くなる
直噴エンジンは総じて高額です。大気圧の10倍以上にもなる圧縮空気内に燃料を霧状に噴射させるには、それより遥かに高い噴射圧力が必要です。そのため直噴エンジンには、高価な専用の高圧燃料インジェクタとポンプが必要になります。
また、ポート噴射エンジンを直噴化するにしても、直噴用レイアウトのエンジンヘッドに専用形状のピストン、制御プログラムが必要になるため、直噴エンジンはポート噴射エンジンに比べ価格が高くなってしまいます。
排気ガス中の有害物質が多い
直噴エンジンはポート噴射エンジンに比べ、空気とガソリンを均等に混ぜ合わせる時間が少ないため燃焼にムラが生まれ、PM(微粒子物質)が発生します。これがススとなり、環境負荷の原因となります。また、ススが排気管や吸気管に堆積しエンジンコンディションを崩しがちです。
今後さらに増加する直噴エンジンに対して、ディーゼル車同様微粒子フィルターの装着が検討されています。
直噴・ポート噴射併用エンジンとは
トヨタでは、直噴とポート噴射を併用したエンジン、「D4−S」をラインナップしています。それぞれの利点を活かし、運転状況に合わせ最適な燃料噴射をおこなうことで、全回転域にわたり良好な出力特性と燃費性能を獲得。最新エンジンでは熱効率最大40%を実現しています。
また、ふたつの噴射方式を併用することで、直噴エンジン特有のインテークバルブ周りのカーボン堆積を、ポートから噴射されるガソリンで洗い流すことができます。それにより、直噴のみのエンジンよりも長期に渡って調子を維持することが可能です。
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...