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ガスケット抜けとは?症状や修理費用、対策などを解説
ガスケットとは?
液体・気体の気密・液密保持の役割を担う部品
ガスケットは液密及び気密の保持の役割を持つ部品です。
部品には、人間の目では確認することができない歪みがあります。そこにガスケットを挟み込み、歪みによる隙間をなくしています。挟み込んで密封するので、ガスケットは相手方の部品よりも柔らかく作られることになります。
ガスケットは金属製と非金属製に分けることができます。非金属ガスケットとはゴムガスケットや合成樹脂ガスケットなどのことです。また、塗りつけて一定時間が経過すると固まる液体ガスケットというものもあります。
ガスケットとパッキンの違いは?
ガスケットとパッキンはどちらもシール材であることは同じですが、使用される場所に違いがあります。ガスケットは動かない部分へ、反対にパッキンは動作部分で使われるのが特徴です。
ガスケットとパッキンはどちらもエンジンに必要不可欠な部品です。例えば、エンジンヘッドガスケット、ピストンシール(パッキン)などがあります。
ガスケットは自動車のどの部分に使われている?
ガスケットは自動車の部品において、液密が気密の必要なものに使われています。つまり、エンジン内部や吸排気系で使われているということです。
エンジン内部
燃焼室で混合気を圧縮するエンジンは当然、ガスケットを必要とする部品です。シリンダーヘッドとシリンダーブロックの間に挟み込まれているガスケットはエンジンガスケットと呼ばれ、その名を耳にしたことのある方もいることでしょう。
吸排気系
エキゾーストマニホールドやインテークマニホールドをエンジンへ取り付ける際、ガスケットをかまします。ガスケットはターボチャージャーにも使用されています。
ガスケット抜けはどのような症状?
ガスケット抜けとはエンジンのヘッドガスケットが破損した(本来の性能を発揮しない)状態を指す症状です。ガスケットは高温で過酷な環境化にあるため、使用するにつれて劣化が進みます。
ガスケット抜けが発生してもすぐにエンジンが壊れるわけではありませんが、放置することは当然推奨されませんので、できるだけ早めに修理するのが懸命です。
出力(パワー)低下
ガスケット抜けの症状の1つにエンジンの出力低下があります。燃焼室で本来の性能を発揮するのに必要な圧縮を作ることができなかったり、圧縮空気がガスケット抜けにより外へ逃げありますというものです。
ただし、実際のところ、パワーダウンを正確に感じられるかどうかは難しいところがあります。それは、当該エンジンの出力が最大限に発揮されているものを経験していなければ、基準がわからないからです。それを踏まえると、中古車選びでは注意するべき要素の1つとも言えるでしょう。
水温の異常な上昇
ガスケット抜け時に水温の異常上昇が発生することもあります。この場合、冷却水がエンジンの燃焼熱に触れ、水温が急激に上昇するという流れです。
ただし、水温トラブルが発生する原因は他にもあるので、一概にガスケット抜けと決めることはできないでしょう。
エンジンオイルが白濁する
エンジンオイルと冷却水が混じってオイルが白濁する現象も、ガスケット抜けに見られるものです。この現象は乳化現象と呼ばれています。オイルラインを塞ぐ原因にもなりかねません。
冷却水に排気ガスが交じる
排気ガスが冷却水へ混じり、そのままラジエーターへ流れることもあります。この時、ラジエーターキャップを開けた状態でエンジンを回すと、泡状になった排気ガスが出てくるのを確認できます。
ガスケット抜けが発生する原因と対策
ガスケット抜けが発生する原因は、経年劣化によるものがあれば、メンテナンス・運転方法が原因になることもあります。
オーバーヒートを原因とする場合
オーバーヒートはガスケット抜けを誘発する要因の1つとされています。エンジンがオーバーヒートによって高温になることで歪みが生じ、それがガスケットへの想定を超える負荷や、ガスケットの隙間から高圧の燃焼圧力の抜け出しを引き起こします。
経年劣化による場合
ガスケット抜けが経年劣化を理由に発生することもあります。ガスケットは、吸気、圧縮、燃焼、排気とエンジンの燃焼行程全てにさらされる厳しい環境にありますし、シリンダー内に堆積したカーボンが異常圧縮の原因となるなど、走行距離が伸びる(エンジンを使う)とガスケットの劣化が進む可能性もあります。
負荷のかかる使い方をした場合
エンジンに負荷のかかる使い方・走り方をすれば、経年劣化がより早く進みます。高回転で長時間の走行を続ける、ブーストアップされたターボチャージャーによる強すぎる過給圧がエンジンに発生するかかるなどすると、エンジンやガスケットへの負担は増えますし、ガスケットの耐久性を超えるパワーに耐えることができません。
エンジンヘッドガスケット交換にかかる費用
エンジンヘッドガスケット交換にかかる費用は、部品代が3,000円〜30,000円、工賃が4万円〜10万円が相場となっています。部品代に対して工賃が圧倒的に高いです。
エンジンのヘッドガスケットを交換するにはシリンダーヘッドをシリンダーブロックから取り外す必要があり、作業工程が多く手間がかかるのが、工賃が高い理由となっていま
また、ガスケットの取り付け面(つまりシリンダーブロックやシリンダーヘッドのこと)に凹凸がある場合には平坦になるよう削る作業も必要となることもその理由です。
修理するエンジンの種類も価格に影響します。例えば、OHVエンジンとDOHCエンジンを比べた時、OHVエンジンはカムシャフトが存在しない分だけガスケット交換の手間(費用)がかかりません。
それに対し、カムシャフトが使われているエンジンはタイミングベルト(あるいはタイミングチェーン)等を調整する必要があるため、修理費用が自然とより高くなります。
V型エンジンのようにシリンダーヘッドが2つあるものは手間も費用も単純計算すると倍になりますし、水平対向エンジンは車体へ乗せながら作業するのが難しいため降ろさなければならないなど、車両(エンジン)ごとに事情が異なる点は覚えておきましょう。
ヘッドガスケット取り付け時の注意点
ヘッドガスケットをDIYで交換する猛者もいるので、車いじりがお好きな方やいろいろ学びたい方は、一度サービスマニュアルを読んでみて、できそうであれば自分で交換してみても良いでしょう。
ただし、交換にあたって以下の注意点があります。
取り付け平面を出す
ヘッドガスケット取り付け面は平面である必要があるので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックに残った古いガスケットや、そこに付着したゴミを取り除きます。その際、オイルストーンと呼ばれる道具を使用します。
ボルトのトルク管理を行う
エンジン関連のボルトを装着する際にはトルク管理を徹底しましょう。必ずサービスマニュアルに目を通し、適切な手順・規定トルクでボルトを締めてください。トルクレンチは精度が高く、同時にトルク値を設定しやすいものがおすすめです。
ガスケットの厚さは圧縮比に影響する
ガスケットの厚さはエンジンの圧縮比に影響します。例えば、純正新品エンジンの状態を基準とすると、それよりも厚いガスケットが装着されれば圧縮比は高くなりますし、反対に薄いものを装着すれば圧縮比は低くなります。
圧縮比の計算には燃焼室の最大容積と最小容積の数値が必要です。ガスケットが厚くなると最大容積と最小容積の両方が大きくなり、結果的に圧縮比が高くなります。
ガスケットは自作できる?
年式がとりわけ古い車両や一部の車種では、純正ガスケットが欠品・廃番になることが多々あります。自作ガスケットはそのような時の選択肢の1つです。
銅板やアルミ板を純正ガスケットの寸法で切り抜き、焼き鈍し(やきなまし)することでシール性を確保、加えて液体ガスケットを塗布します。
ガスケットは見えないところで活躍する重要部品です。特に、純正部品の供給が不安定な車種や、古くてすでに部品入手が難しい車種にお乗りの方は、これを機にガスケットのストックを始めてみてはいかがでしょうか。
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