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エアサスとは?エアサスペンションの仕組みと構造、装着・車検費用や乗り心地は?
目次
エアサスとは?
エアバッグ(空気ばね)を利用するサスペンション
エアサスとは、エアバッグ(空気ばね)が採用されたサスペンションである「エアサスペンション」を略した言葉です。
多くのサスペンションでは金属ばねであるコイルスプリングが使われていますが、エアサスは一部高級車や特殊な自動車(例えば鉄道会社のバス)への導入実績が多いです。
高級スポーツカーなどでは純正部品として採用されているエアサスですが、それ以外のクルマでもアフターパーツとして取り付けることが可能であり、カスタム界隈で定番なアイテムの1つとなっています。
今回は、アフターパーツとしてのエアサスに焦点を当ててご紹介したいと思います。
エアサスの仕組みってどうなっている?
エアサスは、金属バネの代わりに風船のようなエアバッグが備わり、空気圧の調整によってエアバッグを伸縮させて車高を上下させます。そのため、エアサス搭載車には圧縮空気をつくり出すためのコンプレッサーが必要です。
車高を上げる際は金属製の耐圧タンク内に溜めた圧縮空気をエアバッグに送り込み、車高を下げる際はエアバッグ内の空気を抜きます。これら圧縮空気の流れは従来から機械式バルブで行っていましたが、現在は電磁バルブを用いることで、スイッチ等の操作により信号を受けるとバルブを動作させ、圧縮空気の流路を制御できるようになりました。
空気圧計やスイッチ類、制御機器などはデジタル化によって非常にコンパクトになっており、車高の上下動操作はボタン一つで操作可能です。さらに車高のメモリー機能や操作をリモコンで行えるものもあります。
エアサスの寿命は?
エアサスの寿命は3年から5年といわれており、エアバッグ自体の寿命は3年程度です。エア漏れが起こると不自然に車高が下がったり、車高上昇時の速度が遅くなるため、1年ごとにジョイントやパッキン、ホースなどの点検を行い、エア漏れがあるようであればその都度整備や部品交換が必要になります。
ショックアブソーバーは一般的な車と同じ構造で寿命も同じく5年ほどです。ただし、車高を全上げ・全下げにしたままの長時間走行は、ショックアブソーバーが破損し極端に寿命を縮める場合があります。
エアサスのメリット
車内から車高調整ができる
エアサスを導入すれば、車内に設置したスイッチやコントローラーを操作することで車高を調整できます。
道路上の段差が激しいところでは車高を高くする、駐車する時や展示する時には低くすることで低重心でスポーティーな見た目を演出したりと、遊びの幅を広げられます。
エアバッグでの車高調整の他、サスペンションそのものに車高調整機構が採用されている仕様が多く販売されています。いわゆる車高調一体型エアバッグというもので、フルタップ式かつ減衰力調整可能となっているなど、本格的です。
独特の気持ち良い乗り心地
空気ばねがエアサスの乗り味を決定づける特に大きな要素です。コイル式スプリングと比較して、空気ばねはスプリングでは不可能な領域を減衰することができます。それが、エアサス独特の柔らかくて気持ち良い乗り心地に繋がります。
エアサスのデメリット
総じてコイル式スプリングより高価
エアサスそのものが高額な製品です。機械式バルブを使う標準タイプでも本体価格が40万円ほどで、さらに高級品となると80万円ほどの価格がつけられたものもあります。
コイル式スプリングのサスペンションでは同価格でオーリンズのサスペンションキットを購入できるくらいです。
構造が複雑でメンテナンスに手間がかかる
エアサスは、コイルスプリングを使う一般的なサスペンションと比べて多くのパーツを使用することもあって構造が複雑です。そのため、メンテナンスに手間がかかります。
バルブやタンク、コンプレッサーのメンテナンスも必要となります。メンテナンス頻度の目安は1年ごとです。
もちろんショックアブソーバーも使用すれば劣化しますので、減衰力の効きが悪くなったら替え時となります。
このことからも、エアサスがコイル式スプリングのサスペンションと比較して高価なものであるとわかります。エアサスのカスタムは、非常に贅沢な遊びということですね。
コンプレッサーやタンクを荷室へ配置しなければならない
エアサス用のコンプレッサー、タンクなどを配置する場所には、荷室を使うことが多いです。つまり、買い物したものや出かける時の荷物などを荷室へ置く時に障害になるということ。
電磁バルブを使う場合にはそれも同様に荷室へ配置することになるので、さらにスペースを取ります。
エアサスの人気メーカーは?
アフターパーツとしてのエアサスを取り扱うブランドは、日本だけでもかなりの数があります。そのなかの人気3メーカーをピックアップして、それぞれのエアサスの特徴を紹介します。
ACC
ACCはエアサスを取り扱って20年の実績がある老舗メーカーです。ACCのエアサスの特徴は他のメーカーを圧倒する上下幅であり、純正車高近くまで上がるため車の使い勝手を損ないません。
ACCのエアバッグはブリヂストンおよびファイアストン製で、ショックアブソーバーはKYB製です。すべてのラインナップが四輪独立無段階制御であり、基本は信頼性の高い機械式を採用とし、オプションで電磁バルブ式+専用リモコンもしくはスマートフォンで操作可能なデジタルシステムも追加可能です。
AirForce(エアフォース)
エアフォースのエアサスはすべて単筒式の車高調にエアバッグを合わせた高性能ショックアブソーバーが用いられています。ラインナップはシステム構成が異なる4セット+ダンパーストロークを稼ぐための別付けリザーバータンク式の「ダイヤモンド」の5種類です。
機械式のほか、車高調整から空気圧モニターまでをワイヤレスリモコンひとつで行える電磁バルブ式も揃っているうえ、iPhoneから操作が可能な「モバイルエアマネジメント」もオプションで用意されています。
BOLD WORLD(ボルドワールド)
スーパー耐久レースでチャンピオンを獲得した実績もあるボルドワールドでは、エアサスだけでなくブレーキシステムやレース用やドリフト用車高調もリリースしています。
看板商品である「アルティマ」は、同社の32段階減衰力調整機構付き全長調整式車高調にエアバッグを組み合わせた、スタイリングと走行性能、乗り心地を並列できるエアサスです。もちろんワイヤレスリモコンモデルも揃っています。
エアサスを装着するための値段(費用や相場は?)
部品の費用
市販で販売されているエアサスキットは40万円から90万円となっています。前後サスペンション向けでの価格ですから、フロントサスペンション単体、コンプレッサー単体といったように特定の部品だけ購入する場合は、当然ですが安くなります。
現在はリモコンやスマートフォンアプリでの操作を可能とするワイヤレスシステムが主流となっています。ワイヤレスタイプにする場合は、電磁バルブ式となるため機械式の基本構成価格に加えて10万円から30万円の追加費用が必要です。
取付工賃
業者により差があるとしても、取付・施工工賃は10万円以上となります。キットの種類や車種によって異なりますので、依頼先の業者へ事前に見積もりを取るほうが良さそうです。
車検費用
公認を取得していればエアサスで車検を取得できます。車検整備費用はここでは割愛しますが、改造申請書の準備と提出を業者に依頼した場合、その費用(改造申請書類作成費用)は大体3万円前後が相場です。
つまり自分でやれば3万円の費用削減(お小遣い入手)が可能となります。
初心者はここまで理解しておけばOK。ここからは少し上級編のマニアックなお話です。
エアサスの構造|どんな部品でできている?
エアサスは次のような部品で構成されています。
・ショックアブソーバー(ダンパー)
・エアバッグ
・コンプレッサー/タンク
・バルブ
・メーター/配線・配管
コイルスプリングが使われているサスペンションと同じパーツもありますが、空気を調整することに関連したパーツが多い点はエアサスの最たる特徴です。エアサスの構造を知る前に、まずは全体の構成部品を知っておきましょう。
エアサスの構成部品
ショックアブソーバー(ダンパー)
ショックアブソーバーでお馴染み筒状のパーツです。力がかかって縮んだスプリング(ばね)が伸び戻る時の反力をゆるやかにする役割を果たしています(減衰力を発生させる)。エアサスではスプリングの役割を果たすものとしてエアバッグが採用されていますが、役割は同じです。
エアバッグ(空気ばね)
エアサスにおける主人公と言っても過言ではないパーツです。ショックアブソーバー上部に装着されていて、樽のような形状となっています。
この内部の空気圧を高く・低くすることで、車高が高くなったり低くなったりする仕組みです。たくさん空気がエアバッグへ送られると膨らんで車高が高くなり、反対に空気が抜かれるとしぼんで車高が低くなります。
コンプレッサー/タンク
エアバッグの説明から想像するように、エアバッグ内部へ空気が送られる機構が必要になります。そのために使われるのが、エアバッグに送るための空気をまとめておくためのタンクや、タンクに貯める空気を生み出して供給安定化に貢献するコンプレッサーです。
バルブ
コンプレッサーとタンクがあるだけではエアバッグ内部の空気圧を調整できませんから、そのために必要なバルブ(弁)を装着します。
操作方法(開閉構造)に種類があり、1つはスイッチを押すと機械的にバルブを操作できる手動(機械式)タイプ、もう1つは電磁バルブ(ソレノイドバルブ)が装着され電気を用いてバルブを操作する自動(電気式)タイプです。
メーター/配線・配管
エアバッグ内の空気圧の数値を示すメーターが組み付けられます。メーターを確認しながら空気圧を調整することで、気に入ったエアサスの空気圧(つまり車高の高さや乗り心地)を正確に知ることができるのです。
コンプレッサーを回すためには電源を確保しなければならないので、空気を送るための配管コンプレッサーとバッテリー電源を繋ぐ配線作業も行います。
また、エアバッグ・エアータンク・コンプレッサー・スイッチなどをホースで繋ぐ配管作業を行い、空気を送るルートを確保しなければなりません。
エアサスの基本構造と高性能モデルの構造
空気バネによる反発力はエアバッグ内の空気量によって可変するため、エアサスは常用する車高とショックアブソーバーの減衰力のバランスが肝心です。近年は減衰力調整式車高調式ショックアブソーバーとエアバッグを組み合わせたエアサスが主流であり、従来よりも乗り心地や走行性能の調整幅が広がっています。
圧縮空気を作り出すコンプレッサーはタンクと直接つながっており、タンクから制御バルブを介して各サスペンションに備わったエアバッグに圧縮空気を供給する基本構造は今も昔も変わっていません。
機械式やバルブ式の場合は、タンクやバルブの設置場所から車内のスイッチやメーターまで配管が必要がありますが、電磁バルブ式+ワイヤレスなら車内への長い配管は不要です。さらに機器の小型化が進んだことにより、多くの車種でコンプレッサー・タンク・バルブユニットをまとめてラゲッジアンダーフロアに設置できるようにもなっています。
また電磁バルブの電子制御化により、車高の上下操作は半自動ともいえるほどに簡略化され、タンク内の空気圧や現在の車高値などもWi-FiやBluetoothによるワイヤレスでリモコンやスマホに表示させられるようになっている点も高性能エアサスの特徴です。
- 執筆者プロフィール
- 監修者プロフィール
- 鈴木 ケンイチ
- 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...