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夢の「V12ドリフト」ができた時代…30年ぶりの変革も“超キープコンセプト”だったトヨタ センチュリー【推し車】
SUVタイプが出ても、センチュリーといえば超高級サルーン
今やトヨタのみならず、国産車全てのフラッグシップ・モデルと言ってもよい高級車「センチュリー」…頑なに「SUVではない」と言われる2BOXタイプの新型が登場したものの、「センチュリーと言えば超高級サルーン」と考える人は未だに多いでしょう。
MOBY編集部がAIに聞いた「30〜50代のクルマ好きが関心を持つ名車」にもノミネートされている歴代センチュリーですが、今回は国産市販乗用車で唯一のV12エンジン搭載が話題となった2代目を振り返ります。
どこから見てもセンチュリー!30年ぶりのモデルチェンジ
1990年代あたりで「走るシーラカンス」といえば1964年デビュー、1986年まで24年作った三菱の初代デボネアでしたが、気がつけば1967年デビューの初代トヨタ センチュリーはそれ以上作られ続けていました。
そもそも官公庁や法人向けのショーファー・ドリブンカーだったこともあって、一般ユーザーにとっては「縁が遠すぎて実感が湧かないクルマ」だったものの、1997年になって30年ぶりのモデルチェンジとなれば、それはもう注目を集めたものです。
後述するV12エンジンもさることながら、実車が姿を表すと「30年ぶりのモデルチェンジとはいえ、どこからどう見てもセンチュリーにしか見えない超キープコンセプトの外観」が、かえってすさまじいインパクト!
もっとも、初代センチュリー自体が30年の間に外観含め大幅な変更を受けており、1967年発売当時と1997年発売の2代目ではやはり時代の違いを感じるのですが、初代末期からだとあまり差を感じません。
なんとなく丸みを帯びたり、厚みが出たりと近づけば雰囲気の違いは感じましたが、遠目に見ると「あれは初代かな~2代目かな~?」と目をこらしたものですし、そういう意味では街でセンチュリーを見かけた時の楽しみがひとつ増えた感はありました。
しかし1997年といえばRVブーム真っ盛り、現在まで人気のミニバンやSUVが出揃ってきた時期に「超キープコンセプトの2代目センチュリー」は、さながら「新型シーラカンス」という雰囲気でした。
V12ドリフトセンチュリーの思い出
外観が超キープコンセプトでしたし、内装はどうせ乗るわけでもないし…というわけで、話題が集まったのは必然的に「国産の量産乗用車では初のV12エンジン」でした。
5リッターV型12気筒DOHCエンジン「1GZ-FE」は、大排気量ながらも最高出力は当時の自主規制値である280馬力止まり、最大トルクこそ49.0kgf・m/4,000rpm(後に46.9kgf・m)でしたが、特筆すべきスペックの持ち主というわけではありません。
後にこの1GZ-FEをスワップチューンした80スープラやポルシェ928が現れたものの、センチュリーに載っている分には「ひたすら静かで振動もなく、存在感を表して出しゃばらずに粛々と役割を果たすエンジン」でありました。
ただ、筆者の場合は特別な思い出があり…というのも、維持費の問題から新車に比べれば非常に安価な中古車を仕入れた若いチューナーが、2代目センチュリーで仕立てたドリ車を目にしていたのです。
初期型のフロアシフト4速AT車(2005年以降の後期型は6速AT)で、内装は剥がしたドンガラにフルバケの左右シートが載り、リアデフを直結にして車高を落とした以外はどノーマルなんだとか。
そんなんで何とかなるんかいな…と思っていた私の目の前で、シューンと高回転まで吹け上がったV12サウンドを響かせながらセンチュリーはRのきついコーナーへ…おおっ、飛距離こそ出ないものの、大トルクで強引に横を向かせる見事なパワードリフト!!
それっきりでイベントなんかに出ている姿は見ませんでしたが、何しろ黒塗りのセンチュリーそのまんまで横っ飛びしてましたから、大迫力でした。
しずしずと走る超高級サルーンや、宮内庁に納入された超大型版のセンチュリーロイヤルというのが「あるべき姿」なのでしょうが、筆者にとっての2代目センチュリーは、「ドリフトセンチュリー」の鮮烈な記憶が一生残りそうです。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...