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「日産のパイクカーといえばコレ」ゆるキャン△でも話題になった“ラシーン”を産んだ名車・パオ【推し車】

日産パイクカーで唯一、後継車(ラシーン)を生んだクルマ

1987年の東京モーターショーに出展されたパオ

どれもデビュー時から現在まで高い人気を誇り、フィガロに至っては海外にコレクターまで存在する「日産パイクカー」ですが、その中でも冒険に出かけるような非日常感を、服と同じようにファッション感覚で実現したのが1989年発売の「パオ」です。

このコンセプト自体はBe-1やフィガロ、エスカルゴと異なり一般に広く人気となったようで、シリーズでは唯一、事実上の後継車としてラシーン(1994年)を生み、パオともども人気車となっています。

MOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが気になる名車」にも、人気のスポーツモデルやエポック・メイキング(歴史的転換点)的なクルマと並んでノミネートされており、その凝った細部の作りも含め、通好みの1台と言えるでしょう。

新しくも懐かしい、パイクカー第2弾

ガラスハッチつきの上下2分割テールゲートのほか、リアクォーターウォンドウ下部や三角窓はちゃんと開くし、キャンバストップも含めてK10マーチがベースとは思えない凝った作りであり、「ちょっと内外装を部分的に変えただけ」のレトロカーではない

Be-1(1987年)で「発売を待ちきれぬ大人気に、中古車に新車を上回るプレミア価格がついた」など、社会現象ともなった日産パイクカー。

初代マーチ(K10型)という、パッケージこそ優れているものの地味なリッターカーをベースにしつつ、当時の新素材だった樹脂製外板を多用して自由度の高いデザインを追求し、内装も特別なものとして、「小さな高級車」を実現できた数少ない国産車です。

Be-1では販売台数限定で人気が過熱しすぎたものの、パイクカー第2弾のパオでは販売台数ではなく販売期間を限定することで、納期は長くなっても確実に手に入ることや、2+2シーター的なオープントップのフィガロより高い実用性で、見かける機会の多いクルマでした。

同じ丸目2灯ヘッドライトのレトロ調でも、いかにも後付けという前後パイプ状バンパー、外板を補強するように設けられたサイドの3本リブ、ゆるやかに丸まったテールゲート周り、あえて外ヒンジのドアなど、「昔のフランス製小型車」っぽい趣が特徴です。

乗るだけで味わえる「冒険感覚」

都会にいながらにして、こうした冒険に繰り出すようなワクワク感を演出するのに成功したパオは、日産パイクカーで唯一ラシーンという後継車を生んだ

もっとも、古のフランス製小型大衆車っぽい見た目はむしろオマケで、1980年代末の国産車からは既に消え去りかけていた「ちゃんと開く三角窓」や、フリップアウト式で下半分が内側から押し出して開けるリアクォーターウィンドウなど、レトロなギミックが満載!

その頃になると国産車でも気密重視、窓なんて開けずともエアコンで空調を整えてしまうものでしたが、昔は窓に限らずベンチレーターも多用し、走行風を取り入れて車内を通し、後席側面から排出して換気するのが当たり前。

後席に突っ張り棒でも通して洗濯物を干せばよく乾くものでしたが、パオのクルマづくりはそうした(1980年代末でさえ)「現代では失われた別な意味での快適性」を提供する意味で、コンセプト通りに乗っているだけで非日常感を味あわせてくれました。

オーディオやエアコンのスイッチも一応あるとはいえ簡素なものでしたし、日本の都市部にいても「世界のどこかで冒険に出かける際の、簡素だけど頑丈なクルマ」と思わせる演出にあふれています。

その後のレトロカーが見た目はともかく、機能的にはその時代における最新車種そのままなのに比べると、パオは非常に凝った贅沢なクルマだったと言えるでしょう。

同種のコンセプトで1994年に発売されたラシーンが2000年に生産を終えて以降、ここまで凝りまくって懐かしさの演出に励むクルマというのはそうそう登場していませんが、軽やコンパクトのクロスオーバーSUVで再現してみたら、今でも人気が出そうです。

あるいは、EV時代に自動車の白物家電化が進んだら、その時こそ「自動車ってどんな工業製品だったか思い出そう」と、再びレトロブームが来るのでしょうか。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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