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アバルト 124スパイダー 生産終了さよなら試乗|秋名山こと榛名山から裏榛名をドライブ
マツダ NDロードスターがベースの「アバルト 124スパイダー」は惜しくも生産終了となってしまいました。本記事執筆時点では、残すところ在庫販売のみ(欲しい人はディーラーへ急げ!)そこでメモリアルさよなら試乗を、124スパイダーに相応しい場所、秋名山こと榛名山、裏榛名を選んでドライブしてきました。(前回、アルファロメオ 4C の試乗で榛名山に行ったのですが、大雨に降られて…からのリベンジも兼ねています)
この試乗レポートは動画とハイブリッドでお届けします。
▽チャプター (時間をクリックすると該当箇所から再生スタートします。お好きなところからどうぞ)
0:00 オープニング
2:08 深夜のトンネル走行で音を愉しむ 2:57 高速道路走行&フルオープンで帽子飛ばないかテスト
4:07 裏榛名ヒルクライム(ノーカット) 15:21 裏榛名ダウンヒル(ノーカット) 28:00 裏榛名ヒルクライム(タイヤ回りローアングル/ノーカット)
40:29 内外装チェック
51:45 秋名山(榛名山)ダウンヒル(ノーカット)
1:09:02 秋名山(榛名山)ヒルクライム(ノーカット)
1:21:15 秋名山(榛名山)ヒルクライム(タイヤ回りローアングル/ノーカット)
アバルト 124スパイダーとは?その歴史は?
「ABARTH(アバルト)」はイタリアのチューニング・メーカー。ゼロからの自動車の開発・生産は行わず、主にフィアット車をベースにしたレースマシンと、公道走行可能なハイパフォーマンスモデルをつくっています。創立は1949年、創業者は「カルロ・アバルト」。モータースポーツの世界からアバルトの歴史は始まります。
「ABARTH 124spider(アバルト 124スパイダー)」は、マツダ ロードスター(現行モデルの「ND型」)をベースにアバルトがチューンナップしたモデルです。より正確に言えば「フィアット 124スパイダー」をベースにアバルトがチューニングしたと言った方が良いのかも知れません。アバルト 124スパイダーの誕生までの歴史を辿ってみましょう。
2013年1月:フィアットとマツダが業務提携。当初は、マツダ ロードスターをベースにした2シーター・後輪駆動オープンカーは、FCA傘下ブランドのアルファロメオからデビューする計画だった。
2015年11月:ロサンゼルスオートショーで「フィアット 124スパイダー」発表。初代フィアット 124スポルト・スパイダーのデザイン要素を取り入れてデビュー。
2016年2月:ジュネーブモーターショーで「アバルト 124スパイダー」発表。
「フィアット 124」について
「フィアット 124」は1966年から1974年までに生産された乗用車で、ボディタイプは4ドアセダン、5ドアワゴン、2ドアクーペ、コンバーチブルの『スパイダー』と多彩なラインナップでした。このうち、スパイダーは1985年まで生産されていましたが、1982年からは、車名からフィアットが外れて「ピニンファリーナ 2000スパイダー」となりました。当時、ボディの製造はイタリアのカロッツェリアの「ピニンファリーナ」が担当していた経緯を持ちます。
「124」の車名の由来についての公式な説明はありませんが、恐らく、当時の開発コードか開発モデルの形式であろうかと思われます。
アバルト 124スパイダーとマツダ ロードスターの違い
見た目、仕様上の主な違いは次のとおり。
- エクステリアデザイン:フロント、リアともに再設計。
- ボディサイズ:全長は145mm、124スパイダーが長い。
- インテリア:基本同じ、シート、トリムカラーが異なり、タコメーターの色、スピードメーターの最高速度(アバルト124スパイダーは270km/h)、ステアリングホイール中心部のロゴと上部センターのアクセントカラー、インフォテインメントシステム起動時に表示されるブランドロゴマークといった細部が異なる。
- エンジン:フィアット製1.4Lマルチエアインタークーラー付きターボ
- トランスミッション:MT車はNCロードスターのものを採用
- 足回り:ビルシュタイン製バンパー、ブレンボ製ブレーキ、レコルトモンツァ製マフラー、機械式LSDを装備
スペック比較表
ABARTH 124spider | Mazda Roadstar | |
全長 | 4,060mm | 3,915mm |
全幅 | 1,740mm | 1,735mm |
全高 | 1,240mm | 1,235mm |
ホイールベース | 2,310mm | 2,310mm |
車両重量 | 1,130㎏ | 1,020㎏ |
エンジン | 直列4気筒 1.4Lターボ | 直列4気筒 1.5L直噴NA |
最高出力 | 170PS/ 5500rpm | 132PS/ 7,000rpm |
最大トルク | 250N・m/ 2500rpm | 152N・m/ 4500rpm |
0-100km/h加速 | 6.8秒(公表) | 8秒台(非公式) |
パワーウェイト レシオ | 6.2㎏/ps | 7.7kg/ps |
走り、乗り味の違い
※この項は、動画の中で拾えなかった音声の部分を文章に起こしたものとなります。
スペック数値だけで比較すると、よく走るのはアバルト 124スパイダー、となってしまいますが、レースの世界ではないですから“どっちが速いか”で比較するのは些かナンセンス。アバルトは、独自の世界観を持った走りを見せます。扱いやすさはロードスターの方が上、その扱いやすさからくる気持ちよく走れる度合いもロードスターの上となってしまうのですが(筆者は124スパイダーに試乗する前の週にNDロードスターに試乗)アバルトの走り、乗り味が悪いか?と訊かれれば「No」と即答してしまうでしょう。
アバルト 124スパイダーは「クルマを操る」というか「手懐ける」感があります。一方、ロードスターはマツダが提唱する「人馬一体」感を感じる走り。ロードスターの方がスマートな走り。正直、124スパイダーはちょっと運転し辛い。ちょっと気を抜いて発進、クラッチミートが甘いとすぐエンストします。排気音もでかいし、ちょっと回転を上げて走らせないとギクシャクしやすかったり。
アバルトは、そのブランドロゴマークから「サソリの毒」と走りを形容されることが多々あります。ほんと、正しく、毒のある走り。「サソリの毒にやられる」と「中毒」になる、そういうクルマをつくるブランド。124スパイダーも同じです。
アバルト 124スパイダーは残念ながら、生産終了となりました。冒頭で記述していますが、本記事執筆時点では在庫販売中。自動車の歴史の1ページを飾ってくれるに違いない1台。新車で買おうかと悩んでいる人がいたら「買ってしまって損はなし」と強く背中を押したい、さよなら試乗を堪能した筆者はそう思うのでした。
アバルト 124スパイダー 公式HP
内外装画像20枚
※一部再掲
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...