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日常を脱ぎ捨て、泥と風の中へ。BMW『R12 G/S』が解き放つ、大人のための冒険のステージ
GSはまさにキング・オブ・アドベンチャー
BMWといえば、現在アドベンチャーモデルとして破竹の勢いを見せる「R1300GS」シリーズを擁するメーカーである。
1980年に初登場した「R80G/S」をその祖として生まれたGSシリーズは、この40年以上にわたる歴史の中であらゆる改良が加えられ、最新の電子制御を装備し、現在は水平対向のR-GSシリーズ、並列2気筒のF-GSシリーズとしてそのカテゴリーで不動の地位を築き上げてきた、まさにキング・オブ・アドベンチャーとして君臨している。
かくゆう筆者も、R100GS、R100GS-PD、R1250GS、R1300GSと4台のGSに乗ってきたGSライダーのはしくれであり、林道ツーリングや、競技、キャンプなどでその機構、魅力、恩恵を存分に味わい、今も楽しんでいる最中だ。
兄弟の中では異端児的な存在
今回試乗するR12G/Sは、そんなGSシリーズの中でもやや異端児的なモデルだ。
通常のR1300GSは排気量1300cc、空・水冷DOHCボクサーエンジンなのに対し、このR12G/Sは、排気量1169ccの空油冷ボクサーエンジンを搭載している。そのベースとなっているのは、「R12」というベーシックなネイキッドモデルなのだが、フレームは専用のものを採用している。
R12G/Sは、フロントタイヤが21インチ、リアタイヤが17インチの「スタンダードモデル」と、フロントタイヤ21インチ、リアタイヤ18インチの「GSスポーツ」の2種類のモデルが設定されているわけだが、今回はよりオフロード走行に適したGSスポーツモデルを試乗した。
まず、そのルックスからして、オフロードでの戦闘能力が高そうだ。
サスペンションのストロークはフロント210mm、リア200mmというまさにオフロードを意識した長さ。そのためシート高は875mm(スタンダードは860mm)とこのカテゴリーにおいてもかなり高い部類だ。
前後にシャープに跳ね上がったフェンダーや、小ぶりなカウルを持ったヘッドライト、スリムな燃料タンク、そして特徴的なオレンジをまとった小ぶりなシートなど、いわゆるアドベンチャーバイクというよりは「オフロードバイク」という表現のほうが正しい。
その一方で、前述した1980年製のR80G/Sをオマージュしたカラーリングとデザインで、クラシカルなテイストを持ち合わせているのも魅力だ。
街中、高速、ワインディング、林道、ゲレンデを試す!
まずシートが高いので、身長168cmの筆者では車体にまたがるのが厳しい。
サイドスタンドを立てた状態で、ステップにあがり、またぐ方式で乗車する。
78㎏の体重によりサスペンションはやや沈むが、足つきは片足のつま先がやっとで、両足は接地しない。この辺りは、ある程度の体格がないと、初心者が乗りこなすのになかなか手ごわいかもしれない。
イグニッションをオンにしてエンジンをかけると、ブルルーンと馬がいななくような排気音と、ボクサーエンジン特有のクランク回転により、車体がやや右方向に揺れる。
これこそ水冷のGSシリーズでは絶対に味わえないBMWの伝統的な空冷ボクサーエンジンの鼓動だ。
1速に入れてクラッチをつなぐと、非常に濃厚な低速トルクを感じる。
アイドリングだけでも力強くグイグイと進んでいく。
街中では、シートが高いせいか、信号待ちの度に足をつく場所を探すというストレスがあるものの、その太いトルクと素直なハンドリングで走行感は軽快だ。
高速に入ると、制限速度の範囲ならエンジン自体はまだまだ余裕があり、追い越し加速も全く問題ない。
しかしカウルがないので、どうしても風圧との戦いになる。その一方で、クルーズコントロールを装備しているため、風圧に慣れてしまえば巡行は決して苦ではない。
厚手のシートのおかげで、2時間ほどの連続走行でもお尻の痛みは感じなかった。
今回、首都圏のライダーにはおなじみの国道413号、通称「道志街道」も走ってみた。
ここは相模原から山中湖までタイトコーナーが約40㎞にわたって続く人気のツーリングコースなのだが、意外なことにR12G/Sは、とにかくコーナリングが楽しい!
フロント21インチというと、まったりしたアンダーステア気味の乗り味を予想していたのだが、それはまったく違い、キビキビと動くサスペンションがどんなコーナーでも狙ったラインをしっかりとトレースしてくれた。
しかし全体的な走行感としては、シャープでダイレクトな走り味のR1300GSよりもずっとマイルドで穏やかな印象を持った。
それは空冷エンジンの特性と、長いサスペンションによるしっとりした乗り心地によるものだろう。
オフロードではまさに「水を得た魚」
そしていよいよ待望の林道へ入る。
モードをエンデューロPROに入れると途端にサスペンションの動きが柔らかくなり、出力もマイルドに。しかしその動きはまさに「水を得た魚」。
あえてギャップのあるワダチに突っ込んでみたり、少し岩の多いガレた場所を走ったりしたが、アクセルを開けてさえいれば、何食わぬ顔で走破していく。
その倒立テレスコピックサスペンションの動きは、R1300GSのテレレバーとはまたちがった、絶大なる安心感がある。

また、この撮影日とは別の日にGS系のイベントで合法にスキー場のゲレンデを走れる機会を得た。
かなり勾配のきついゲレンデでも、力強くゴリゴリと上っていくのは想定通りだった。
しかし、こぶし大の岩が散乱しているガレガレの下りでも、安定して下っていけたのには驚いた。
この下りは過去に何度もR1300GSで下っているのだが、そのたびに恐怖で体がこわばり、ブレーキングをミスって転倒しそうになるというトラウマがあっただけに、このR12G/Sの車体バランスの良さには心底驚かされた。
トレールバイクに近いディメンションとパッケージング
冒頭でもお伝えしたが、このR12G/Sはアドベンチャーモデルというよりも「大きなオフロードバイク」である。
それもコンペティション思考の強いエンデューロやモトクロッサーではなく、どちらかというとヤマハ・セローやホンダ・CRFといった「トレールバイク」に近いディメンションとパッケージングというのが適した表現だ。
オフロードに特化したバイクゆえに、ある程度そのキャラクターをわかっていないと魅力を引き出すのが難しいモデルだが、その個性が理解できるライダーにとっては、非常に魅力的であることは間違いない。事実、筆者も今回の試乗以前から、今のR1300GSから本気で乗り換えようか真剣に悩んだほどである。
多くのライダーが選ぶR1300GS系でなく、もっとオフロードでの運動性能が欲しいとか、クラシカルなデザインと穏やかで味わいあるエンジンが好みというライダーには、これ以上ない相棒となってくれるだろう。
R12G/S スペック

- 執筆者プロフィール
- nakajima


















