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今更聞けない「冬が終わってもスタッドレスを履き続けてはいけない」ワケとは
雪が降る地域では欠かせないスタッドレスタイヤ。雪がふらなくなる頃にはノーマルタイヤに履き替えることが一般的です。季節の変わり目ごとにタイヤを履き替えるのは面倒で、一年通してスタッドレスタイヤを履き続けている人も多いかもしれません。
しかし、スタッドレスタイヤをオールシーズン履き続けるのは危険だと言われています。一体なぜでしょうか?
スタッドレスタイヤを履き続けると危険な理由
危険1:制動距離が長くなる
スタッドレスタイヤには、積雪のある道や凍結した道で滑りにくくする役割があります。そのため、夏用のタイヤよりもゴムが柔らかくできています。
スタッドレスタイヤを履いたまま、乾燥した路面を走行すると、ブレーキをかけたときに路面をグリップしにくく、効き目が弱くなってしまいます。つまり、減速して止まるまでの距離「制動距離」が長くなってしまうのです。
危険2:雨天時に滑りやすい
スタッドレスタイヤは、夏用タイヤと比べてタイヤ表面のでこぼこが多く、雨などの水分がより入り込みます。水分を多く含んだタイヤは、スリップしやすくなります。
タイヤと路面の間に水が入り込み、ブレーキやハンドル操作が効かなくなる「ハイドロプレーニング現象」が発生しやすくなることも。
危険3:摩耗し、アイスバーンでのグリップ性能が低下する
スタッドレスタイヤには摩耗しやすいという特徴があります。一般的に、スタッドレスタイヤの寿命は、3〜5シーズン程度、冬だけ履いたとして長くて5年ほどと言われています。
冬以外の季節も履き続けてしまうと、およそ1年で本来の性能を発揮できなくなってしまいます。
危険4:バーストを誘発する!?
筆者自身、廃車予定のクルマにスタッドレスタイヤを履き続ける長期試乗を実施した経験があります。
スタッドレスタイヤを履き続けて4ヶ月ほど乾燥した路面を走り続けたところ、タイヤの接地面の溝はかなり残っていたにも関わらず、タイヤの側面に無数のひび割れが入りました。
ゴムが硬化してひび割れが入ったタイヤは、バーストの危険がとても高くなります。
履かなくても経年劣化は進む!?
業務用タイヤショップの店員にスタッドレスタイヤを履き続けることの危険性について話を聞きました。
「スタッドレスタイヤは夏用タイヤと比べて、経年劣化によってタイヤのゴムが硬化しやすいという特徴があります。ゴムが硬化すると、積雪時の路面での滑り止め効果が薄れてしまい大変危険です。
特に、乾いた路面で履き続けると経年劣化は急激に進みます。使用環境にもよりますが、半年も持たずに、タイヤが硬化して使い物にならなくなってしまうことも。
また、使っていなかったとしても、タイヤの経年劣化は進みます。数年前に購入した、一度も使っていないスタッドレスタイヤの装着を依頼されるお客様がいらっしゃいますが、とても危険なので装着をお断りしています。
タイヤは雨水や紫外線、熱などで劣化が進みます。外に出したまま保管するのではなく、倉庫などの屋内で、湿気の少ない、陽の当たらない場所で保管してください。
くれぐれも、スタッドレスタイヤを履き続けるのは危険な行為なので控えてほしいです。」
乾いた路面をスタッドレスタイヤで走行すると、車の無駄な挙動が増えて運転性能が低下し、燃費が悪くなるため履き続けることはおすすめできません。
一般に、タイヤ交換は専門のタイヤショップやガソリンスタンドなどに頼む必要があり、費用もかかります。そのため面倒に思う気持ちはわからなくもありません。
しかし、ここで紹介したように、スタッドレスタイヤを一年中履き続けることは大変危険な行為です。積雪シーズンに早めにスタッドレスタイヤに履き替えることはもちろん、道路状況を見て、春には必ずサマータイヤなどに交換しましょう。
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- 執筆者プロフィール
- 室井大和
- 1982年生まれ。ライター歴6年、自動車業界9年。合わせて約15年。雑誌編集、記者、指定自動車教習所員資格保有。愛車はスズキスイフトスポーツ(33型)、BMW323i(E90型)、ジムニー(JB23型)。車はセダンではじ...