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傘で10万円…ロールスロイスはなぜ高い?超高級車の知られざる値段の理由とは
超高級車・ロールスロイスに備わる傘はエルメス製で1本10万円。それが標準装備されるロールスロイスの新車価格は安いものでも3,000万円、高いものでは30億円と、家が複数建つほどです。
このように高級車として名高いロールスロイス。他の高級車との違いはどんなところにあるのでしょうか。
目次
ロールスロイスの価格が高いのには理由がある!
ロールスロイスは言わずとしれた超高級自動車メーカー。直線的で伸びやかなボディに加え、トレードマークとなるボンネット前端のオブジェ「スピリット・オブ・エクスタシー」や、パルテノン神殿をモチーフにしたフロントグリルなどが備わるロールスロイスの外観は、誰もが高級車と認めることでしょう。
ロールスロイスの新車価格は、SUVモデルのカリナンがおおよそ4,000万円。長い間フラッグシップモデルとして君臨したファントムは5,000万円超。比較的小型のゴーストでも3,000万円からと、いずれも住宅並の価格です。さらにオーダーメイドで製作された車種のなかには、数億円で販売された車もあります。
ロールスロイスは高い価格と知名度から、その名前が「◯◯界のロールスロイス」のように、しばしば車以外の高級品の代名詞として用いられるほど。
内装はハンドメイド! ロールスロイスはこうしてつくられる
ロールスロイスをロールスロイスたらしめるものは、美しい内外装と外界から遮断されたかのような高い静粛性。それに魔法の絨毯とも形容されるほどの優れた乗り心地といえるでしょう。
なかでももっとも目を引くのは牛革と木材で仕立てられた内装です。ロールスロイスには最高級の素材が用いられ、イギリス・グッドウッドにある工場で1台1台が職人の手でつくられています。
1台あたりの内装には牛10頭前後もの革が贅沢に使用され、もちろん縫製や刺繍、組付けは手作業。厳選された牛の革だけを使用し、車種によって革の処理方法を変えることで風合いに変化をもたらしています。
内装のアクセントとなるウッドパネルは、高級家具や楽器にも使用されるローズウッドやマホガニーなどの天然木が使用されています。合計で5年ほど年月をかけて乾燥させてから加工し、車に組み付けられるといいます。
エンジン音すら聞こえない高い静粛性を実現するために、車内に用いられる遮音材の量は100kg以上。天井に星空を表現したスターライトヘッドライナーは、手作業で内張りに何百もの穴が手であけられ、光ファイバーを1本1本通して製作されます。
また、車体の塗色も手作業で行われます。ボディの塗装は何重にも塗り重ねられ、磨き作業ももちろん熟練工の手作業です。ボディに描かれるコーチラインも機械を一切使わず、職人が筆を使って描いています。
このように、内外装の装飾にかかる原材料費と職人の人件費だけでも、一般的な車を遥かに超える額になります。
ビスポークでロールスロイスをオーダーメイドできる
静かで乗り心地がよい豪華な車はロールスロイスの他にも多くあります。しかし、ロールスロイスほど顧客の要望を車に反映できる自動車メーカーは他に存在しないでしょう。
ロールスの独自性の極みともいえる「ビスポーク(bespoke)」は、ボディカラーはもちろん、内装や外観までオーダーして世界に1台だけのロールスロイスを発注できるプログラムです。
ZOZOの創業者である前澤友作氏がオーダーしたファントムのボディカラーは、織部焼きをイメージした「MZ 織部グリーン」と名付けられた深緑色。また、1,000個のダイヤモンドを砕いた粉末を塗料に混ぜた「ダイヤモンドスターダスト」と呼ばれる贅沢な塗装が施された車もあります。
当然ながら、ビスポークでオーダーしたぶんだけ、車両価格は内容相応に跳ね上がります。
例えば、顧客の希望を叶えるためにファントム クーペのプラットフォームを使って製作された2ドアクーペの「スウェプテイル」の価格は約15億円。4年を掛けて製作された3台限定の「ボートテイル」の価格は推定30億円です。
このように、オーダーメイドによって新しい車までも生み出してしまうロールスロイス。ここまで顧客のオーダーに柔軟に応えることができるのは、手作業で組み立てを行なうからこそでしょう。
VIPを守る高い安全性もロールスロイスならでは
重要人物が乗る車に選ばれるだけあって、ロールスロイスは交通事故に対する安全性はもちろん、基本設計の段階からテロや暴漢からの襲撃に備えた防弾・防爆仕様を視野に入れて各部が設計されています。
2021年9月、ビートたけし氏がつるはしを持った男に襲われた事件があったとき、ビートたけし氏が乗っていた車はロールスロイス ファントムでした。その車両は防弾仕様ではありませんでしたが、遮音のために厚くされたガラスや鋼板が乗員の身を守るようにはたらいたようです。
また、ロールスロイスは車を用いた襲撃から逃れるために、足回りは柔らかいだけでなく400PS以上出力を発揮するBMW製V型12気筒エンジンを使い切れるだけの運動性能やハンドリング性能も備わっています。
原則として乗り心地と運動性能は二律背反の関係にありますから、これらを両立させて優れた乗り心地に仕上げられるのは、優れたエンジニアリングの成せる技といえるでしょう。顧客の身を守る入念な安全設計もロールスロイスの価格を引き上げる要因になっています。
ロールスロイスが高くても売れる理由
贅を尽くしてつくられたロールスロイスは高価にならざるをえませんが、これだけ高額でも買う人が世界中にいます。
ロールスロイスの2021年の総販売台数は過去最高の5,586台を記録。これは高級品であるというロールスロイスブランドへの共通認識が生み出す信用価値の高さと言い換えられます。
そのかわり高いブランドバリューが足枷となって、一般的な自動車メーカーが行なう安易なコストダウンはできず、手間がかかったぶんだけ価格を引き上げるしかないため、車を安くつくることができません。そもそも、ロールスロイスを求める顧客は安さを求めていないでしょう。
こういった高級ブランドには商品が高いほど売れるというヴェブレン効果もはたらいています。ヴェブレン効果とは、アメリカの経済学者が説いた「見せびらかしの消費(顕示的消費)」とも呼ばれる経済用語です。
高額なロールスロイスの、それもビスポークによる世界に1台しかないロールスロイスともなれば、これ以上に自己顕示欲を満たす車はありません。つまりコストダウンした安価なロールスロイスでは、かえって売れなってしまう恐れがあるということです。
ロールスロイスの車両価格が高い理由は、これまでの実績に裏付けられたブランド価値が反映されているためです。そして高くとも売れるのは、顧客の満足度をしっかりと満たしているからにほかなりません。
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- 執筆者プロフィール
- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...