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自動運転「レベル4」の車、道交法改正で2022年に解禁される?
2022年内に自動運転レベル4が解禁される?
2022年4月19日、自動運転「レベル4」の許可制度を含めた改正道路交通法が衆議院本会議において可決され、成立しました。2022年度内には改正法の一部が施行され、公道でのレベル4の使用が可能となる見通しです。
レベル4の自動運転システムはドライバーを必要としません。特定の条件下においてすべての運転操作を自動で行い、緊急時の対応もシステムが担うため、無人での運行が可能です。
ただ、車が無人で走行するとなれば、従来の法律ではカバーできない問題が発生します。このため今回の改正法において、レベル4の実用化に必要な規定や許可制度が新設される運びとなりました。
改正法で何が変わる?
レベル4に関する改正法の内容は、自動運転による移動サービスの社会実装を想定したものとなっています。具体的には、シャトルバスや路線バスなどの無人運行を可能とするために、次の3つの規定を新設しています。
- レベル4自動運転を「特定自動運行」と定義する
- 特定自動運行の実施には「特定自動運行計画」の提出・許可を必要とする
- 特定自動運行の実施には「特定自動運行主任者」の指定を要する
上記のように、改正法ではレベル4自動運転を特定自動運行と定義して、従来の運転と区別しています。また、特定自動運行を行うには、特定自動運行主任者の指定と特定自動運行計画の策定、および公安委員会の許可が必要と規定されています。
こうしたルールの新設により、自動運行の安全性を確保することが、レベル4に関する改正法の主眼です。今回の改正法の施行により、2023年度以降は無人移動サービスの普及が進むと予想されます。
改正法は一般ドライバーに無関係?
新設される規定からわかるように、施行予定の改正法は、自家用車でのレベル4自動運転の使用を解禁するものではありません。とはいえ、レベル4を活用した移動サービスが実用化されれば、無人運行車両と自家用車が同じ道路を走ることになります。この意味で、一般ドライバーも改正法と無関係ではありません。
また、移動サービスの領域で無人運行の技術開発が進めば、自家用車へのレベル4の搭載が近づくと考えられます。レベル4自動運転について詳しく知っておくことは、自家用車のオーナーにとっても重要といえるでしょう。
自動運転レベル4とは?
自動運転レベル4は「高度運転自動化」と呼ばれる技術であり、0〜5のレベルがある自動運転技術の5段階目にあたります。レベル4の技術面の特徴には、次の3つがあげられます。
- 運行設計領域において全ての運転操作を自動化できる
- システムが常に操縦主体を担う
- 運行設計領域から外れた場合の対処をシステムが行う
運行設計領域とは、自動運転システムの使用に必要な環境条件のことであり、道路条件や気象条件などを指します。予め設定された運行設計領域内であれば、レベル4は車の運転を全自動で行うことができ、走行継続が困難となった際は自動で安全に停車します。
レベル4はレベル3と何が違う?
自動運転技術には6つの段階がありますが、厳密にいうと自動運転はレベル3からとなります。レベル0は完全な手動運転、レベル1と2は運転支援技術であり、自動運転技術ではありません。では、自動運転に分類されるレベル4とレベル3は何が異なるのか。両者の違いを表にまとめました。
技術レベル | 定義 | 運転操作の 実行主体 | 走行環境の 監視 | 運転操作の バックアップ |
レベル3 | 条件付き自動運転 (全運転操作を自動化できるが、 システムからの介入要求に ドライバーが応答する必要あり) | システム | システム | ドライバー |
レベル4 | 特定条件下における完全自動運転 (特定条件下でシステムが 全運転操作を実施) | システム | システム | システム |
レベル3では車の運転操作を全て自動化できるものの、自動運転の継続が困難となった際は、手動運転への切り替えが必要となります。このため、レベル3による自動運転中も、ドライバーはいつでも運転できる状態で待機していなければなりません。
一方、レベル4を装備する車は無人で運行できます。ドライバーが必要か否かが、レベル3と4の主な違いといえるでしょう。なお、レベル3の定義は移動サービスや運輸サービスにも適用されます。たとえば、路線バスが自動運転で走行していても、運転席にドライバーが待機しているなら、その運行はレベル3の扱いとなります。
レベル3での公道走行は解禁されている?
レベル3自動運転の公道での使用は、2020年4月1日の法改正により可能となっています。また、2021年3月には、レベル3のシステムを搭載したホンダ レジェンドが100台限定で発売されました。一般ドライバーに普及しているとはいえないものの、レベル3自動運転の実用化は着実に進んでいます。
レベル4で何を実現できる?
レベル4自動運転が実用化されれば、運転席を排除したバスやタクシー、トラックなどの開発が進むと予想されます。また、人件費を押さえた移動サービスの提供が可能となり、交通の便が悪い地域を中心に、自動運転バスが普及するでしょう。
レベル4自動運転は一般ドライバーにも恩恵をもたらします。乗用車でレベル4を利用できるようになれば、特定条件下での運転を車に任せて、ドライバーが休憩や仮眠を取れるようになるでしょう。ひいては疲労を原因とする交通事故の減少も期待できます。
ただし、これらレベル4の恩恵を得るには、まだ数年を要すると考えられます。というのもレベル4が普及するには、クリアしなければならない課題があるからです。
レベル4が普及するための課題とは?
レベル4自動運転の普及には、高度な車載システムの開発と、走行環境の整備が必要です。車載システムについては高性能なAIの搭載が必須であり、ホンダによると、レベル4のコンピューターにはレベル3の50倍ほど高い処理能力が求められます。
システム開発より大きな課題といえるのが環境整備です。全国規模でレベル4自動運転を普及させるには、日本各地で情報インフラを整えなければなりません。というのも、レベル4の自動運転では、車の位置や交通情報などの把握に「ダイナミックマップ」を必要とするからです。
ダイナミックマップとは?
ダイナミックマップとは、高精度3次元地図に多数の情報を加えたデータベースです。高精度3次元地図とは、レーザースキャナーやGPSなどを活用して構築された、精度の高い3次元地図データを指します。この高精度3次元地図に信号や歩行者の情報、渋滞や事故の情報、気象情報などを加えたものがダイナミックマップです。
一般道での安全な自動運転を実現するには、ダイナミックマップからの情報提供が欠かせません。ただ、ダイナミックマップの開発と整備には時間を要することも事実です。全国の一般道路でレベル4自動運転を使えるようになるのは、2024年以降となるでしょう。
世界ではレベル4の実用化がはじまっている
日本がレベル4解禁に向けた法整備を進めている一方で、世界の一部地域では、企業による自動運転の実用化がはじまっています。たとえば、グーグル傘下の「ウェイモ」が提供するタクシーは、自動運転の実用化をリードするサービスの1つです。
ウェイモでは、アリゾナ州やカリフォルニア州において、2018年末ごろより自動運転タクシーの提供を開始しています。当初はセーフティードライバーが同乗する形でサービスを提供していましたが、現在は無人でのタクシー運行、すなわちレベル4での運行をスタートさせています。
GMの自動運転部門「クルーズ」も、自動運転タクシーに力を入れている企業です。クルーズでは、2022年2月にサンフランシスコにおいて、無人自動運転タクシーの提供を開始しました。アメリカ以外では、北京や上海、深センなど中国の約10都市で自動運転タクシーの運用がはじまっています。
自動運転レベル5の実現も近い?
レベル4の開発と普及が進めば、最高レベルの自動運転技術であるレベル5の実現も近づきます。ただ、レベル5は環境に制限されず全ての運転操作を自動化できる「完全自動運転」であり、実用化するには数々の課題をクリアしなければなりません。
具体的には、多少の悪天候でも走行できるシステム、警察官を識別するセンサー、自動で給油・給電できるインフラなどが、レベル5の実用化には必要となります。また、自動運転車の普及に合わせた免許制度の見直しや、システムのハッキング対策なども必要となるでしょう。
これらの課題をクリアして、レベル5の自動運転が実用化するのは2030年以降になると予想されます。レベル4以降の自動運転技術はどのように発展していくのか、自動車メーカーや政府の動きに要注目です。
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- 執筆者プロフィール
- 加藤 貴之
- 1977年生まれのフリーライター。10年以上務めた運送業からライターに転向。以後8年以上にわたり、自動車関連記事やIT記事などの執筆を手がける。20代でスポーツカーに夢中になり、近年は最新のハイブリッド車に興...