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「EVシフトは綺麗事ばかり」電気自動車先進国の「悲惨な現状」とは

EV普及率世界一の国ノルウェー

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ノルウェーでは、いまや新車販売のうち80%超が電気自動車(BEV)になっています。そこまでBEVが普及すると問題になるのが電力供給です。

環境意識が高いノルウェーでは、火力発電の割合はわずか2%程度。日照時間が短いノルウェーでは太陽光発電があまり使えないため、生活で使う約95%の電力は水力発電でまかなわれており、川が凍り水力発電が使えない冬季は生産貯蔵していた水素を使って発電しています。

水力発電は電力コストが安いため、ノルウェーでは電力価格も安く電気代はドイツの2/3程度。街のいたるところに急速充電設備が設置され、BEVを支障なく使える環境が整っています。ただし、現在ノルウェーでBEVが使いやすいのは、比較的人口が少ない北部だけです。

EVシフトによるノルウェーの悲惨な現状

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人口が多いノルウェー南部では、EVシフトの悲惨な現実が浮き彫りになっています。ノルウェーの高速道路には多い所で20基以上の急速充電設備が設置されていますが、それでも長期休暇などの交通量が増える時期には、大規模な充電渋滞が起こります。

充電設備の数はおおよそ日本の20倍ほど設置されていますが、これだけ整備されていても一切のストレスなくBEVを使うには不足する様子。充電渋滞は同じくEV先進国である中国でも問題になっています。

南部オスロ近郊はガソリンよりも電気代のほうが高い

©ijeab/stock.adobe.com

さらに悲惨なのが電気代の高さです。ノルウェーでは生活電力を水力発電でまかなっているとはいえ、発電設備が集中している北部から南部へは送電することができず、ノルウェー南部ではおもに電気を海外から購入しています。

2022年は、ウクライナ危機や水力発電の要となる雨量不足などの影響により電気代が高騰しており、いまや電気代はガソリン価格以上になっています。しかも、ノルウェーのガソリン価格は元々EUのなかでもトップレベルの高さです。

現在ノルウェー南部の首都オスロ近郊では1kWhあたり電気代は1ユーロを超え、BEVを満充電するのに100ユーロ(約1万4,000)もかかるようになっています。

電力需要が高まった2022年の冬の一般家庭の電気代は、日本円換算で1ヵ月あたり12〜13万円にものぼったそうです。一定額以上は政府が負担してくれるものの、この電気代の異常高騰にオスロ周辺に住む市民は悲鳴を上げています。

ノルウェーが急速にEVシフトできた理由

©Dancing Man /stock.adobe.com

寒い地域ではバッテリーの効率が低下するため、BEVは本来ノルウェーで普及しにくいはずです。にもかかわらず、ノルウェーでここまでBEVが普及したのは、前述した水力発電による安価な電力と、高価な燃料価格に加えて、政府の政策が大きく影響しています。

政府は内燃機関車に重税を課すかわりにBEVを優遇する政策を推進。BEV購入にあたっての免税措置に加え、フェリーや有料道路、駐車場利用の割引や法人向けの税制優遇が実施されたことで現在に至ります。

なんか矛盾してない?

ノルウェーがBEVにとって至れり尽くせりなこれらの優遇ができるのは、北海油田から取れる石油・天然ガスによる潤沢な収益があるためです。

つまりノルウェーでは、石油を売った代金によって国内のEV導入が進められています。その石油は海外で使われるため、ノルウェーでのCO2排出量は少なく済みますが、地球全体のCO2排出量削減には何も貢献していません。

むしろ過度なBEV需要の高まりによってCO2の排出量が増えていることにもなります。BEVが増えすぎたことによる充電渋滞に加え、不安定な電力供給による移動コストの異常高騰。これが、BEV普及率世界第1位を独走するノルウェーの現状です。

執筆者プロフィール
伊藤友春
伊藤友春
1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...

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