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あの名車を運転できる!KYOWAクラシックカー&ライフステーションで走ってみた!
ネットや雑誌、博物館やイベントで見かけるクラシックカー。しかし「運転はした事がない!」という人は結構多いと思います。
スペックがいくら頭に入っていても、それはあくまで数字でしかありませんし、アクセルを踏んだら、ブレーキをかけたら、ステアリングを切ったらどうなるのかは全て想像の中だけの話。
車好きとしてそれで終わっては寂しすぎる!そこで、それを可能にした施設・KYOWAクラシックカー&ライフステーション(新潟県三条市)で、ホンダ S800とマツダ コスモスポーツを運転してきました!
到着すると、いきなりコスモスポーツがお出迎え
予習抜きで期待せず行くとビックリ
筆者が長年のアシにしているダイハツ リーザ(1989年式ケンドーンS)のオーナーズクラブ「MONA(モナ)」のミーティングで新潟県三条市を訪れたのは、新型コロナウイルス感染拡大が少し落ち着き、前月末まで続いた緊急事態宣言も明けた2021年10月9日 。
目的地は「KYOWAクラシックカー&ライフステーション」という施設で、何やら古い車などいっぱいあるところらしい…?というくらい。何の予習も期待もせず、幹事が先導するままについていくとビックリ!
それらしき建物の前でボンネットを開けているのは、かのマツダ コスモスポーツ!日本が誇る世界初の実用2ローターロータリーエンジン車が、フツーにエンジンをかけ、アイドリングしているではありませんか。
「自分で試乗場所まで動かして」
これまで博物館やイベントで見た事はあるものの、お触り厳禁で遠巻きにしたり、傷をつけないようソ~ッと触るばかりでした。こんな間近で、何食わぬ顔でエンジン回しているなど初めてです。
驚きを隠さぬままリーザの車列はコスモスポーツの前を過ぎ、斜め前にある砂利の敷地へ。
ここでまずは「MONA」の集合写真を撮り、倉庫のような施設の中へズラリ並んだクラシックカーの見学というわけですが、なんと!暖機していたコスモスポーツに加えもう1台、ホンダ S800に試乗できるというではありませんか!
そこで館長はさらっと言いました。
「試乗はその砂利のトコで、自分で動かしてください。」
伝説の旧車を、まるで普通の車のように
ヒィエ~ッ!レクチャーもほとんどなしで、いきなり自走しろですって?(一応コスモスポーツは「2,000回転以下に下げないでね」とは言われた)
どうしよう、エンストしてプラグをカブらせたら、それを怖がってフカしたらいきなりホイルスピンさせたり…と悪い想像にビビって固まるメンバーの中から、どうにか前に出た2名がコスモスポーツとS800を移動させます。
どうもこの施設、旧車に対する扱いが並ではないというか、普通に扱いすぎでかえって圧倒されました。
いざ出陣!吠えろ10Aロータリー!(震)
座るだけでも感じるドキドキ感
40年以上前、初めて実家にマイカーが来た時には、「指紋がつくから素手で余計なところを触るな!」と怒られて育った筆者。触るだけでもドキドキして冷や汗モノなコスモスポーツの運転席に座るなど、もう昇天モノです。
以前座らせてもらったアルピーヌ・ルノーA110ほどではなかったものの、運転席は狭く、ペダル配置も余裕があるとは言えません。
タコメーターは意外にも7,000回転からがレッドゾーンで、昔のロータリーと言ってもそんなものかと思いましたが、6,500回転からのイエローゾーンが若干タダモノではない感じ。
走り出しは意外にも普通?
ストロークの短いシフトレバーをローに入れアクセルを吹かすも、意外に針がビンッ!とは跳ね上がらず、走らせだしても軽快というより重厚。ロータリーらしく震動は少ないので、乗り味は古い1980年代あたりのセダンを思い出します。
試乗コースは、砂利の広くて長方形な敷地の四隅に置かれた赤いパイロン(三角コーン)の外周を1周するだけなので、直線ではとにかく2速で思い切りアクセルを踏んでみました。
「ヴィー!」(過回転警告ブザー)
低回転ではモタモタしていたのに、高回転になるといつの間にか吹け上がった10Aロータリーが、7,000回転を超えたと警告。これが「モーターのようだ」と言われたロータリーフィーリング?!
高速高回転域で試したいクルマ
慌てて3速へシフトアップ。いやコースの角を示すパイロンが迫ったのですぐ2速へシフトダウンし、ブレーキ…が効きませんッ?!
「ロータリーはエンジンブレーキが弱く、アクセルを緩めても加速するような錯覚を起こす」という、確かファミリア・ロータリークーペのインプレッションが頭に浮かび、単にブレーキサーボの効きが弱いのかも?と思い切りブレーキを踏むと、ようやく減速しました。
そこからはハンドリングなど乗り味をメインに確かめましたが、短時間の砂利道走行インプレッションでは「低速だとトルク感も動きも全体的に鈍く、高速高回転域なら楽しいであろうクルマ」という印象を持ちました。
降りたくない!いつまでも走っていたい!楽しすぎるエスハチ
ホントはヨタハチかエスロクがよかったと思いつつ
続いてはホンダ S800。幻のS360に始まるホンダ黎明期のSシリーズFRスポーツ最終モデルで、通称”エスハチ”。チェーンドライブからドライブシャフトを介する普通のシャフトドライブとなった後期型オープン仕様です。
個人的には、敬愛する故・浮谷 東次郎選手が駆ったヨタハチ(トヨタ スポーツ800)や、浮谷選手と激しいバトルを繰り広げた生沢 徹選手も駆ったホンダ S600(エスロク)なら最高だなァ…と思っていたのですが、このさい贅沢を言うものではありません。
コスモスポーツよりさらに狭いものの、何となく収まりがよく、オープンゆえの開放感もあってか、気合が入ります。
やる気にさせたホンダ・ツインカム!
コクッと心地よいシフトレバーを1速に入れアクセルを踏むと、「ドウッ!」というエキゾースト・ノート(排気音)と、跳ね上がるタコメーターの針がヤル気を引き出し、これがスポーツカーかと心が燃えてきます。
ロータリー派の方には申し訳ないのですが、やはり筆者は普通の内燃機関、レシプロ(ピストンエンジン)が大好きです。
車が走ろうぜ!と呼びかけてくるように感じて飛び出し、軽く最初のパイロンをクリアするやシフトアップ。次のパイロンまで加速しヒール&トゥでシフトダウン。
ノーズが少しインを向いたらアクセルON。パワーで曲げ、オツリが出るのはご愛嬌と流れたテールはカウンターで抑えつつ加速を続け、2速、3速、楽しい!
すばらしき人馬一体感でホンダに惚れそうになる
外周の後半では余裕が出て、敷地の外からビデオカメラを回していた家族連れに挨拶とばかりに軽くパワースライド、笑いが止まりません。
ステアリング特性は素直の一言。アクセルレスポンスは鋭く、ブレーキもしっかりで意のままに操れ軽快そのもの。以前乗ったユーノス(NAロードスター)でもここまでの感覚はありません。
筆者は24年ほど前、ミラTR-XXへ乗り換えてからダイハツ一筋で愛し続けてきましたが、宗旨変えしたくなるほど惚れ込んでしまいました。ホンダファンがなぜホンダ車を愛するのか、その原点のひとつに触れてよく理解しました。
クルマ好きを増やしたければ、これ1台あれば解決?!
もし日本でクルマ好きを増やしたいなら話は簡単。教習所でも免許センターでもいいからこういうクルマを一台置いてみてはいかがでしょう?MTの操作ができるようになったら1~2周走らせればいいのです。
きっと楽しくてもっと走りたくなるはずですが、「続きは免許を取って、自分で車を買ってからね」とやるのがミソでしょう。
他にも、KYOWAならではの展示車に大興奮!
まだまだお楽しみは終わらない
あまりの楽しさに、いやー楽しかった、今日はありがとうございました!と本気で帰りかけましたが、中の展示車がまた面白すぎて、さらに深みにハマってしまいます。
ここKYOWAクラシックカー&ライフステーションは、もともとFRPなど自動車関連部品の金型設計・製造を手掛けてきた共和工業株式会社が運営している、旧社屋の一部を転用したクラシックカーなどの展示施設。
元々、事業がらみで車を集めて展示しており、以前は「どこの博物館やイベントでもありそうな名車」もあったそうです。しかし、今のメインはファミリーカーなど大衆車や、ライトバン、軽トラックやオート三輪など、かつて共和工業でも使っていた実用車です。
幻のようなくろがね ベビーにも出会う
戦後日本自動車史に興味がある方なら、むしろヨダレが出そうなほど出会えて嬉しい車の数々で、筆者の実家マイカー第1号・2代目コロナマークII(2代目X10系セダン)があるかと思えば、ついこないだまで使っていたのを引き取ったらしいバモスホンダも。
東急くろがね工業(現・日産工機)が1960年に発売した、リアエンジン後輪駆動の軽1BOX車「くろがね ベビー」など、実物は初めて見るような車もところ狭しと並んでいます。
他にも自転車や原付自転車、オートバイ、機械好きにはたまらない昔の工作機械や電化製品もあり、一度見たら二度、三度見に行きたくなる展示に、心はすっかりメロメロでした。
見学や試乗は予約制、超オススメです!
何ならここに住み込みで管理人をしたいほど魅力的だった「KYOWAクラシックカー&ライフステーション」。
一応営業時間は10時~16時ですが不定休となっています。展示の見学や旧車試乗は完全予約制ということですが、感染対策もお忘れなく!
今回は運よく2台に試乗できましたが、修理中の場合もあるため、存分に楽しみたい方は予約の際に確認するのがおすすめです。
日産との深い因縁?マツダロータリー軍団たち
クラシックカーフェスティバルを取材!
マツダのクラシックカーや注目を集めた車をご紹介!
- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...