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安全運転義務違反とは?違反行為の内容・点数・罰金について解説
安全運転義務違反とは
安全運転義務違反とは、道路交通法第70条で明文化されている「安全運転の義務」に違反した運転行為のことです。
【第七十条】
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
(罰則 第百十七条の二第一項第四号、第百十七条の二の二第一項第八号チ、第百十九条第一項第十四号、同条第三項)
ハンドルやブレーキの操作を誤ったり、相手への注意や状況判断が十分でなかったりしたことで事故が起きた場合、安全運転義務違反となります。
この法令が対象となるのは車両等の運転者です。「安全運転義務違反」は自動車やバイクだけではなく自転車などのその他車両にも適用され、罰則を受けることになります。
「安全操作義務」と「安全状態確認義務」
道路交通法第70条では「安全操作義務」と「安全状態確認義務」の2つが明示されています。
「安全操作義務」とは、車両等のハンドルやブレーキなど運転に必要な装置を確実に操作する義務のことです。
ハンドルやブレーキはあくまで例です。アクセルやシフトレバー、ウインカーやライトなど、車両等の運転に必要な装置のすべてが「安全操作義務」に含まれます。
「安全状態確認義務」とは、道路や他の交通、車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する義務のことです。
道路の状況や他の交通の状況には、道路の広さや形状、見通しの悪さ、交通量などのほかに路面状況も含まれます。
車両等の状況には、車両等の大きさや幅、乗客や積載物の有無などが挙げられます。
安全運転義務違反は最も多い事故
安全運転義務違反は、全国で発生する人身事故のなかで最も多い事故で、ドライバーの違反の大半を占める違反行為です。
内閣府が発表している「令和4年度交通安全白書」によると、令和3年中の交通死亡事故発生件数の法令違反別(第1当事者)では、安全運転義務違反が 53.6%を占めています。
安全運転義務違反のなかでも多いのが、漫然運転で13.7%です。次に、運転操作不適で12.9%、安全不確認が11.5%、脇見運転が9%となっています。
公益財団法人交通事故総合分析センターがまとめた統計によると、法令違反別事故件数では安全運転義務違反が約74%と最も多くなっています。
安全運転義務違反は、運転者が十分に注意を払って運転していれば違反することのない行為です。
普段の運転が次章で解説する安全運転義務違反に該当するケースに当てはまっていないか、ぜひ確認してみてください。
安全運転義務違反に該当する6つのケース
安全運転義務違反は交通事故の原因の多くを占める危険な行為で、死亡事故の原因にもなりやすい違反行為だということが分かりました。
では、どのような運転が安全運転義務違反になるのでしょうか。
- 操作不適
- 前方不注意
- 安全不確認
- 安全速度違反
- 動静不注意
- 予測不適
安全運転義務違反は、運転者の具体的な行動などに基づいた以上6つのケースと、6つのどれにもあてはまらないケースに区別されます。それぞれのケースを詳しく解説します。
操作不適
操作不適は、ハンドル操作不適のケースとブレーキ操作不適のケースに大別されます。
ハンドル操作不適とは、危険な(または危険のおそれがある)状態を認識し、回避するためにハンドル操作をしたが、その操作が不適切、遅れたなどで事故の決定的な原因となるケースのことです。
ブレーキ操作不適とは、ブレーキを操作して危険を回避することに失敗したことが事故の決定的な原因となるケースのことです。
ブレーキ操作不適となる具体的なケースにはブレーキの踏み間違えがあります。また、ウィンカーの不使用や片手運転なども操作不適に当てはまります。
前方不注意
前方不注意は、漫然運転とわき見運転のケースに大別されます。
漫然運転とは「考え事などでぼんやりしていた」といった運転操作以外の動作を伴わない前方への不注意が事故の決定的な原因となるケースのことです。
わき見運転は「タバコを吸っていた」「助手席に置いてある荷物に目をやった」といった運転操作以外の動作を伴う前方への不注意が事故の決定的な原因となるケースのことです。
令和3年中の法令違反別交通死亡事故発生件数のうちの安全運転義務違反の内訳は、漫然運転が13.7%と最も高い割合となっています。
安全不確認
安全不確認は、前方、左右、後方の不確認で他車や歩行者等を見落としたことが事故の決定的な原因となるケースのことです。
「前方・左右不確認」と「後方不確認」の2つに細分化されています。
減速や一時停止をしたにもかかわらず、前方、左右、後方の不確認で相手を見落としたり、その発見が遅れたりして事故を起こすと「安全不確認」となります。
前出の安全運転義務違反の内訳のうち、安全不確認は3番目に高い割合となっています。
安全速度違反
安全速度違反とは、制限速度内であったが、その場の交通状況に即した速度(安全速度)でなかったことが事故の決定的な原因となるケースのことです。
「安全速度」の目安となるのは法定・規制速度です。しかし、その場の道路状況や他車(他者)との関係で安全速度は変化するため、状況に応じたスピードコントロールを意識した運転を心掛けましょう。
スピードコントロールの基本的なポイントとして「スピードメーターで確認しているか」「路面状況を考慮しているか」「他者の動向を考慮しているか」「暗がりに潜む危険を考慮しているか」などがあります。
参考:安全運転を確かなものにするために【交通の方法に関する教則】準拠
動静不注視
動静不注意とは、他車や歩行者等を認識していたが、その相手の動静への注意を怠ったことが事故の決定的な原因となるケースのことです。
具体的には、人がいることと人の動きは認識はできているがぶつかってしまった、前車への認識が甘かった、足りなかったなどのケースが動静不注視に当てはまります。
思い込みは禁物です。他車や歩行者等の動静に注視し、事故防止に努める必要があります。
予測不適
予測不適とは、自分の速度や車幅、車間距離、相手の速度や行動などに対して判断を誤ったことが事故の決定的な原因になるケースのことです。
「譲ってくれるだろう」と思い右折したら、譲ってくれたわけではなく事故となった場合は判断を誤っているため予測不適となります。
動静不注視と同様に「だろう運転」ではなく「対向車は譲ってくれないかもしれない」という「かもしれない運転」を意識するのをおすすめします。
安全運転義務違反の点数と罰金
安全運転義務違反の違反点数と罰金は以下の表の通りです。
違反点数:2点 | ||||
反則金 | 小型特殊・原付 | 二輪車 | 普通車 | 大型車 |
6,000円 | 7,000円 | 9,000円 | 12,000円 |
安全運転義務違反の交通違反点数は2点です。
反則金は、小型特殊・原付が6,000円、二輪車が7,000円、普通自動車が9,000円、大型車が12,000円となっています。
安全運転義務違反は自転車も対象!
道路交通法第70条の安全運転義務違反は、自動車やバイクと同様に自転車にも適用されます。
自転車は車のなかま(軽車両)です。平成27年6月1日からは、自転車に対しての取り締まりが強化され、罰則も取り入れられました。
内容としては、交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為(危険行為)を反復して行った自転車の運転者に対して「自転車運転者講習」を実施しています。
自転車における安全運転義務違反
自転車関連事故の全交通事故に占める構成比は、平成28年以降増加傾向にあります。
自転車対自動車の事故で最も多いのは、出会い頭衝突による事故です。
引用:第3節 歩行者及び自転車の交通事故の傾向|令和3年交通安全白書
さらに「令和3年度交通安全白書」によると、自転車対自動車の出会い頭事故での自転車側の法令違反の状況は、安全運転義務違反が30%(令和2年)と最も高い割合を占めています。
自転車における安全運転義務とは、自動車同様にハンドルやブレーキ等をしっかり操作し、
他人に害が及ばない速度と方法で運転することです。
自転車の安全運転義務違反による事故は「安全不確認」や「動静不注意」が多くなっているため、他車や歩行者等に常に注意して運転することが大切です。
自転車で交通違反した場合の罰則
自転車乗車中に信号無視等の危険行為を行い、交通違反として取り締まりを受けるか交通事故を起こして送致された人は「自転車運転者講習」を受ける必要があります。
ただし、対象となるのは3年以内に違反・事故を合わせて2回以上繰り返した場合です。
危険行為は安全運転義務違反を含む15種類あります。
- 信号無視【道交法第7条】
- 通行禁止違反【道交法第8条第1項】
- 歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)【道交法第9条】
- 通行区分違反【道交法第17条第1項、第4項又は第6項】
- 路側帯通行時の歩行者の通行妨害【道交法第17条の2第2項】
- 遮断踏切立入り【道交法第33条第2項】
- 交差点安全進行義務違反等【道交法第36条】
- 交差点優先車妨害等【道交法第37条】
- 環状交差点安全進行義務違反等【道交法第37条の2】
- 指定場所一時不停止等【道交法第43条】
- 歩道通行時の通行方法違反【道交法第63条の4第2項】
- 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転【道交法63条の9第1項】
- 酒酔い運転【道交法第65条第1項】
- 安全運転義務違反【道交法第70条】
- 妨害運転(交通の危険のおそれ、著しい交通の危険)【道交法第117条の2の2第11号、第117条の2第6号】
交通の危険防止のため、都道府県公安委員会が自転車運転者に受講命令を出します。その命令に従わなければ5万円以下の罰金を支払うことになります。
自転車運転者講習の罰則はあくまで刑事上の責任とは別の罰則です。取締りを受けた際や事故の際には道交法の罰則が適用されます。
自転車も道交法が適用される意識を持ち、交通ルールを守って乗るようにしましょう。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...