更新
車中泊は意味も目的もスタイルも人それぞれ
キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です
目次
車中泊とは何か。あらためて整理してみよう!
車中泊の人気が高まり車中泊人口が増えたせいか、残念ながらマナーやモラルの問題が取り沙汰されることも多くなった。
実際には認知度が今より低かった頃の方が、そういったマナーやモラル違反は度を越したものが多く、むしろ現在の方が大人しくなっているように私は思うのだが、車中泊人口が増えればそれに相応にトラブルの件数は増えることになり、世間からの注目の度合いが高くなれば話題として取り上げられる機会も増えるということなのだと思う。
ところが、そういった関連の記事や、SNSの車中泊関連のコミュニティなどで繰り広げられている議論を見ていると、何か釈然としないものを感じることがある。
ピントが合っていないとか、話が噛み合っていないと感じることが少なくないのだ。
その原因が何かと考えてみたら、そもそも車中泊という言葉の意味が曖昧で、言葉の解釈の仕方が人によって大きく異なっているからなのではということに思い至った。
言葉の解釈が違っていたら、話が噛み合わないのは当然で、やって良いこと悪いことの認識にもずれが生じ、誤解や偏見も生み出してしまう。
そんな状態で、単純に「マナーやモラル守りましょう!」と叫んだだけでは効果は低く、噛み合わない議論がこの先もずっと展開されてしまうことであろうと思う。
そこで、この記事では今一度車中泊という言葉の意味について考えてみたいと思う。
但し、「車中泊とはこういうことだ!」と定義をしようなどとおこがましいことを考えているわけではない。
互いの認識や解釈の違いを理解することで、トラブルが少しでも減れば良いと思い、言葉の整理をしてみることにした。
車中泊をする目的と理由について
まずは、なぜ車中泊をするのか。
そもそもここに結構大きな違いがあると思う。
大きく分ければ、車中泊を手段と考える人と目的と考える人の2種類が存在する。
例えば私の場合は、遠くまでクルマで行く際に、時間も経費も節約するために眠くなったらそのまま朝まで車内で休息をとった(睡眠)とか、早朝から山に登るために麓の駐車場まで夜のうちに行き、クルマの中で寝て朝が来るのを待ったとか、早朝から海に出るために海岸近くに停めたクルマの中で寝たなどといったことが車中泊の始まりだった。
その後、せっかくなら車内の環境が快適な方が良いとか、より便利にしたい、或いは単純に何かを作ることも好きなどの理由でクルマの内装に手を加えるようにもなったが、基本的には今でも車中泊をする理由や目的はその頃と大きく変わってはいない。
それが今でも続いている一番大きな理由は、宿を予約したり、予めきっちり予定を立ててその通りに行動したりするのが面倒くさいのと、自分のやりたいことや行動パターンには時間に縛られないことがとにかく好都合だからだ。
要するに、大変便利な手段として車中泊をしているのであって、例えばいろいろなホテルを巡ること自体が趣味の人のように、クルマの中で過ごすこと自体を目的として何処かへ出かけるといったようなことはない。
一方、ブームで車中泊という言葉も定着したせいなのか、クルマの中で寝泊まりすること自体を楽しむというか、それ自体をレジャーと捉えて「車中泊を始める」人もいるようだ。
例えば、SNSの車中泊関連のコミュニティで、どこそこへ行こうと思うのですが、その近辺で車中泊に適した場所を紹介してほしいといったような投稿を見かけることがある一方、「〇〇辺りに住んでいる車中泊初心者です。この近くで良い車中泊スポットを教えてください」とか「家の近所の道の駅で車中泊の練習をしてきました」のような投稿を見かけることがある。
前者の場合はどこそこへ行くという目的があるから、車中泊は夜を過ごすための手段だ。
しかし、後者は車中泊をすること自体が目的だ。
用があってホテルに宿泊するのではなく、ホテルに泊まること自体が好きでホテル巡りを趣味にしている人と同じタイプだ。
一見似た内容の投稿とも思えるが、全く似て非なるものだ。
どちらが良いとか正しいなどと言いたいのではない。
この中間的な人もいると思うが、大きく分けると完全にベクトルの方向性が違う2タイプがあることをまずは抑えておいてほしい。
車中泊という言葉の解釈の違い
辞書(スマホアプリの大辞林)で「車中泊」と引くと、「自動車や列車の中で寝泊まりすること。車内泊。」とあった。
言い換えれば「車とつくものの中で寝る」だけの意味で、細かな定義などは何もないようだ。
また、こうして改めて確認してみると、私がクルマを宿やテントの代わりとして利用し始めた頃は、「車中泊」はどちらかといえば夜行列車や寝台車の中で夜を明かすことを指していたように思う。
しかし、いつの間にか「車中泊」は移動中の列車やバスの中で寝るという意味より、駐車した車両の中で寝泊まりする意味として使われることの方が多くなったようだ。
そして、その駐車場所として、道の駅の駐車場や高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)などを利用する人は多い。
これらは半ば商業施設のための駐車場のような趣もあるが、元々は安全運転のために運転者が休憩や休息を取るために設けられた場だ。
だが、これらの場所で仮眠や休憩は良いが車中泊はダメであるといった意見や、車中泊での利用はグレーなどといったような見解もある。
では、休憩・休息・仮眠・寝泊まりなどの意味について、また辞書で調べてみた。
「休息は仕事などをひとまず終えて短時間または長時間休む意を表し、休憩は仕事や運動などの途中で少しの間休む意」となっていた。
何だか非常に曖昧ではあるが、どうやら休憩より休息の方がより本格的な「お休み」とでも言いたいのであろう。
寝泊まりなんて、「そこに寝て夜を過ごすこと」としか書いていないし、仮眠は「短時間の浅い眠り」だった。
では短時間はどうかと言えば「短い時間」としか書いていなくて全く具体性がない。
長時間も同様の説明。
全てが曖昧でバカバカしくも思えるような説明でしかないが、眠ってしまったら休息の意味から外れてしまうなどといったこともどこにも書かれていなかった。
十分な休息を取ろうと思ったら就寝することもある。
曖昧な表現ばかりだが、これらを総合して、十分な休息を取るためにクルマの中で寝たらどういう意味なるかと言えば、それは車中泊したことになる。
そして、安全運転のために適切な場で就寝して十分な休息をとることは運転者の義務でもあるから、道の駅・SA・PAの駐車場などで車中泊をすることはグレーでも何でもなく正当性のある行為ということになる。
しかし、勘違いしないでいただきたいのは、ここで「道の駅・SA・PAの駐車場では車中泊をする権利がある!」などと声高に主張しようというのではないことだ。
先程、車中泊が手段の人と目的の人がいると書いたが、車中泊をすることを目的にそこに向かったのであれば、休息することが目的で立ち寄ったのとはまるで意味が違ってくる。
車中泊を休息の手段ではなく、目的としか考えてない人からしたら、道の駅・SA・PAの駐車場を車中泊に利用することは「本来の目的外の利用方法」との解釈になってしまうのだと思う。
一理ある。
SNSの車中泊関連のコミュニティで、権利の主張派と自粛警察のような人達との間で大バトルが繰り広げられているのを目にしたことがあるが、大きな原因はこうした解釈の違いにあると思う。
しかし、プロのドライバーを含め、車中泊が本当に運転の途中の休息(仕事などをひとまず終えて短時間または長時間休む意)である人が大勢いるのも事実で、その人達からすれば、「道の駅・SA・PAの駐車場での車中泊禁止」はお門違いな攻撃でしかない。
また、逆に過剰に権利を主張する人達が、本当に休息をとるためだけに駐車場を利用しているのかといった疑問も湧いてくる。
これとは別に、自分の目で確かめたわけではないので真偽は定かではないが、施設側で車中泊禁止を謳っている道の駅もあると聞く。
しかし、それが本当なら国土交通省の考える趣旨に反してしまうことにもなる。
では何故そうなってしまったのか?
想像でしかないが、駐車場にオーニングやテーブルや椅子や調理器具などを広げてしまう、洗面所を炊事場代わりに使用して汚していく、盗電、連泊(休息に時間の定義はないが、さすがに連泊をドライブ中の休息と呼ぶには無理がある)、トレーラーを切り離して駐車したままどこかへ出掛けてしまうなどの行為があり、困り果てた挙句の措置といったところではないかと思う。
これは想像でしかないが、だとしたら 苦肉の策であり、本当に気の毒に思う。
しかし、「車中泊すなわちこうした行為」ではないのだから、「車中泊禁止」には合点がいかない。
こういったモラルやマナー以前の非常識な迷惑行為をする連中が全面的に悪いわけではあるが、面倒でも一つ一つの迷惑行為を禁止にすべきであって、善人が連帯責任を取るような形となってしまうのもおかしなことだと思う。
商業施設のための専用駐車場ではないのだから。
他にもある車中泊の解釈や認識の違いによるズレや誤解の実例
車中泊のベテランという人が「夏の暑さの回避方法」に対する質問で、「標高の高い涼しいところへ行く」と答えていたのを以前目にしたことがある。
これは先程2タイプに分けた後の方、車中泊をすること自体が目的の人に対しては的確で良いアドバイスだと思う。
しかし、車中泊が手段の人は行きたいところがあって車中泊をしているわけで、例えば海岸近くで車中泊する際の何か良い暑さ対策はないかと探していたのなら、これは何の解決策にもならない回答だ。
この回答者は「車中泊をすること自体が目的」しか頭になかったのであろう。
以前仕事でキャンプ場を利用した際にこんなこともあった。
そこは夏期の限られた期間のみ有料のキャンプ場として営業する公営の施設なのだが、[ 車両の駐車料金 + テント一張の料金 + 人一名分の料金 x 人数 ]で算出する料金設定となっていた。
それで私は、「クルマで寝るからテントは張らなくていいかな」と言ったところ、管理人のおじさんから「クルマで寝るなら〇〇円だよ」と言われたのだが、その金額が奇妙なことに駐車料金 + テント一張分と同額だったか、むしろ高かったのだ。
因みに車中泊なら外部電源が使えるなどのサービスが付加されることもない。
「じゃあテント泊にするか」と言ったら、管理人のおじさん達皆が「そうだよ。そうした方が良いよ」となったので、車両一台とテント一張分の料金を払うことにした(うろ覚えだが、やはり同額ではなくテントを張らないほうが高額だったのだと思う)。
しかし、占有面積が少なくて済む方が(しかもその時乗って行ったクルマはバモスだったから軽自動車)料金が高いとは、なんとも理不尽な話だ。
それで、なぜこんなことになるのか理由を考えてみたのだが、多分役所の中にいて現場には来ない人達は、「寝るためのクルマ」=大きなキャブコンやバスコンと想定(車両が大きいだけでなく、大きなオーニングとかもある姿も想像したのではないかと思う)し、占有面積が乗用車一台 + テント一張分より大きくなることが前提でこの料金設定を考えたのではないかと思う。
そう考えると合点がいかなくもない。
そして、現場にいるおじさん達はその設定に従うだけで特に何も考えることもなく、クルマで寝る = キャンピングカーの料金としていただけなのではないかと想像した。
管理人のおじさん達に何も罪はないし、私はゴネたりしなかったが、これを不服と思う人も少なからずいそうだ。
それで管理人のおじさん達が嫌な目にでも遭ったりしたら、知識不足と雑な認識が招いた悲劇としか言いようがない。
車中泊は意味も目的もスタイルも人それぞれ
他にも、例えばキャンプ場の人の意見として「テントを張らずに車内で寝るような人は初心者だからマナーを知らない」とか、RVパークの運営者が「キャンピングカーの人はマナーを守るが、ミニバンなどで道の駅で車中泊をするような人達が評判を落としている」などと書かれた記事を目にしたことがある。
他人の書いた記事なので、これらが本当のことなのか作り話なのかは不明だ。
しかし、こんな一方的な思い込みや偏見に満ちた考え方があると考えただけで非常に残念に思えてしまう。
持ち物や社会的地位などで人を評価したり、括ってしまったりするのは良くないことだ。
立場は色々あり、考え方や楽しみ方、目的も色々ある。
それを一つの方向からしか考えないことが、不要なトラブルや争いを招いているような気がする。
そんな考え方もあったのかと、別の立場になって考えてみる方が、「守りましょう!」や「禁止!」より効果があり、皆が楽しくやって行けるのではと思うのだが、いかがだろうか?
ライター:笠原 サタン
キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信!
- 執筆者プロフィール
- 車旅情報Webマガジン「DRIMO」
- キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジンです(https://news.drimo.jp/)。実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるラ...