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キャンピングカーのベース車にはなぜトヨタが多いのか?
キャンピングカー情報をはじめとして、キャンプや車中泊、バンライフなど、アウトドア&車旅の情報を配信しているWEBマガジン・DRIMOから、実際に車中泊やキャンピングカーを楽しんでいるライターによる記事をMOBYがご紹介します。※以降の記事内容および記事タイトルはDRIMOからの引用・参照です
国産キャンピングカーのベース車は、バンコン、キャブコン、バスコンすべてのカテゴリーでトヨタ車が圧倒的に多い。
年間生産台数「世界一」を誇る自動車メーカーだけあって当たり前といえば当たり前かもしれないが、単なる市場シェアだけの問題ではない。
そこには選ばれるだけの理由があるのだ。
TOYOTA車が選ばれる理由
バリエーションの豊富さ
キャンピングカーの多くはトラックやバンなどの「商用車」をベースにしている。
以前はどの自動車メーカーも独自にさまざまなタイプの商用車を開発・販売していたものだが、最近は様々な理由から、かなりの整理・再編が進んでしまった。
どこの会社もOEM(=他社の車を自社ブランド商品として販売するケース)が増えている。
OEMにすれば、開発費も生産設備を整える費用も必要なくなる。
乗用車と違って、商用車はデザイン性や乗り心地よりも性能が肝心。
つまり、積載性・耐久性・経済性が重視される。当然、選ぶ側(運送会社やこうした車を使う事業者)は「ニーズに合うならどのメーカーの車でもいい」と考える。
このような事情の中、トヨタは一部にOEMもあるものの、軽バンからマイクロバス、トラックまで、ベース車となりうる車種を全て網羅。
それほど豊富な車種をラインナップしているのだ。
専用ベース車がある
車種のラインナップが豊富である上に「専用ベース車(グレード)」があることも重要なポイントだろう。
だが、なぜトヨタは商用車のほかに「キャンピングカー専用ベース車」を持っているのか。
それには理由がある。
キャンピングカー専用ベース車がある理由1:商用車は「人を乗せるようにはできていない」から
繰り返しになるが、キャンピングカーのベース車両の多くは商用車だ。
そして商用車はコストや頑丈さが優先。
どうしても内装や装備は質素だし、サスペンションも乗り心地より積載性重視に設定される(なにしろ荷物は乗り心地が悪くても文句は言わないし、壊れさえしなければ荷物をおもてなしする必要もない)。
しかし、キャンピングカーの利用者はあくまで人間である。
通常荷物を積み込む部分にも、人が乗ることになる。
そんなとき、貨物車に詰め込まれたような内装だったり、ゴツゴツした乗り心地だったらどうだろう。
楽しいはずの旅が、なんだか物悲しくはならないか。
キャンピングカー専用ベース車がある理由2:商用車のままでは無駄が多いから
キャンピングカービルダーは、ベース車両を改造してキャンピングカーに作り上げる。
その際、ベース車に取り付けられている後席シートやトラックの荷台は、キャンピングカーに架装する上では不要になることがある。
不要なシートや荷台を取り外し、流用できるならまだしも廃棄することにもなる。
それだけ手間が増えるし、新品の廃材を処分する費用だってかかる。
ならば最初から「キャンピングカー専用車」として、不要な部材を取り払ったものを仕入れた方が経済的だ。
これらの理由はどれも「キャンピングカー」独自の事情だ。そしてトヨタはこうした事情に合わせた車=「キャンピングカーベース専用車」を用意した(ほかにいすゞも同様の車種を出してはいる)
つまり、
・乗り心地を改善=サスペンションを専用のものに変更
・内装をやや豪華に=商用トラックの上級グレードに相当する装備
・不要なパーツを除外=キャンピングカーでは使わないシートなどを撤去したモデルをキャンピングカー専用車両としたのだ。
ではなぜ、日産は、マツダは、こうした専用ベース車を作らないのか。
実はどの自動車メーカーにもできそうで、できないものなのだ。
いくらキャンピングカーが人気で、年々販売台数を伸ばしているとはいえ、商用車全体の市場からすれば微々たるもの。
少量の特別仕様を用意することができるのは、企業として体力のあるトヨタだからこそと言えるだろう。
クラス別の状況は?
では、キャンピングカーのクラス別に採用されている車種についてみてみよう。
軽キャンパー
軽キャンパーへのトヨタ車の採用例は少ない。
そもそも、軽自動車に関しては商用車、乗用車ともにダイハツからのOEMである。
逆に、最近フルモデルチェンジを果たしたダイハツ・ハイゼットカーゴや、アトレーへの注目度は高い。
コンパクトバンコン
普段使いと兼用しやすいサイズ感で人気のコンパクトバンコン。
以前はマツダ・ボンゴもあったがが、マツダが商用車の開発から撤退しボンゴがOEM車となり、トヨタ・タウンエース バンと日産・NV200の一騎打ちの状況だ。
走行性能や内装の質感などでNV200にアドバンテージがあるが、一番重要な室内空間の広さではタウンエースが非常に有利といえる。
バンコン
こちらも、コンパクトバンコン同様、トヨタ・ハイエースと日産・キャラバンの一騎打ち。
ただしハイエースが圧倒的に強い。
なにしろ、標準幅・標準ルーフからワイドボディ・スーパーハイルーフまでボディだけで5種類のバリエーションがあり(日産・キャラバンは3種類)、エンジンや駆動方式もバリエーション豊富。
さらに、あまり知られていないが、ハイエースの中にもキャンピングカー専用ベースがある(※)。カタログにも記載されていないのでご存知ない方もいるだろう。
それだけハイエースのほうがアドバンテージが多いのは確かだ。しかもハイエースはキャンピングカー以外でも人気が高く、アフタマーケットパーツも充実している。
当面、このハイエースの強さは揺るがないだろう。
※全サイズ対象だが、排気量や駆動形式の組み合わせには限りがある。
コンパクトキャブコン
長い間このクラスのベストセラーだったマツダ・ボンゴがモデルチェンジしトヨタ・タウンエースのOEM車となったことで、現時点ではタウンエース トラックが唯一のベース車である。
ただし、ボンゴは1t積だったがタウンエースは800kg積(4WDは750kg)なので、車格はワンクラスダウンしている。
キャブコン
ハイエース同様、トヨタが専用ベース車を用意しているのがこのカテゴリーだ。
前述した通りいすゞにもBeCamという専用ベース車があるが、採用しているのは日本特種ボディー社1社のみ。
国産キャブコンはトヨタ・カムロードがほぼ独占状態といえる。
今年のモデルチェンジでリアがダブルタイヤ(以前はシングルタイヤだった)になるなど、従来の弱点も克服した。
こちらもしばらくは盤石の体制だろう。
バスコン
日産・シビリアンが生産終了し、バスコンのベースとなるマイクロバスはトヨタ・コースターと三菱・ローザの二種類になってしまった。
ローザには4WDがあり雪国などでの需要があるにはあるが、現行モデルのデビューは1997年。いかんせん基本設計が古い。
しかもトヨタ・コースターにはビッグバンという、専用ベース車ではないもののキャンピングカーに架装するにはうってつけのモデルがある(※)
※定員10人で後部にはシートなし。普通免許で運転できるマイクロバス、という設定でカタログにも載っている。
まとめ
国産自動車メーカー各社とも、商用車の自社開発終了やジャンルからの撤退が続き「結局トヨタしか残っていない」という事情がお分かりいただけただろうか。
これが生産台数世界一の実力、とも言える。
品質の高さに加え、全国津々浦々にサービス拠点があることなどを考えても、国産キャンピングカーファンにとって心強い存在であることは間違いないだろう。
ライター:渡部 竜生
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- 執筆者プロフィール
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