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「スズキの技術を括目せよ」20年前に開発された燃料電池車「ワゴンR-FCV」とは【推し車】

スズキ歴史館に展示されている時代の生き証人

スズキ歴史館のワゴンR-FCV

国産FCV(燃料電池車)といえばMIRAIのトヨタ、既に販売していないもののクラリティFuel-CELLのホンダというイメージは強いものの、案外どのメーカーも何がしか研究開発はしているもので、2輪やシニアカーのFCVを作ったスズキもそのひとつ。

もちろん4輪乗用車のFCV実験車も作っており、今回は2003年にMRワゴン-FCVとともに公道走行試験が許可され、現在はスズキ歴史館に展示されている「ワゴンR-FCV」を紹介します。

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ワゴンR-FCVのベースとなったのは2代目ワゴンR

途中から全車に右後席ドアもついて、総5ドア化された2代目ワゴンRがベース

スズキ歴史館に展示されているワゴンR-FCVとなったのは、1998年10月に軽自動車が現在の「新規格」に移行したのと同時にモデルチェンジした、2代目ワゴンRです。

1993年、それまで単にルーフの一部または全てを高くするだけでシートの着座位置はそのまま、室内高こそ余裕なものの、乗車時の頭上空間が無駄だった軽トールワゴンに対し、ボンネットが短くキャビンが広い完全新設計のボディと、着座位置の高い初代ワゴンR誕生。

これが広いだけでなく、アイポイントが高く視界が広い、整えられた専用デザインもカッコイイと評判になり大ヒット、後によりハイルーフでスライドドアを備えた軽スーパーハイトワゴンも含む、ハイト系の軽自動車が日本の主流となる大革命モデルでした。

当然、各社ともワゴンRへ追従するモデルを発売してきますが、先行車の余裕で新規格移行と同時に徹底改良、基本的にはデザイン含めキープコンセプトながら、「ワゴンRブランド」の力もあって、2代目も引き続き軽自動車No.1のヒット作となります。

「ワゴンR RR(ダブルアール)」というカスタム系モデルを初設定したほか、初代から特徴だった、右後席ドアのない2+1+テールゲートの変則4ドアを途中で廃止して総5ドア化、リアシートスライド機構追加など、現在まで続くコンセプトはこの2代目で完成しました。

2003年9月には3代目へとモデルチェンジされたので、国土交通省から公道走行の認可を受けた同年10月には型落ちになっていましたが、ワゴンR-FCVを開発していた頃は、これが最新モデルだったのです。

GMと提携したスズキのFCV技術

外から見る限り、かつてのセルボ水素エンジン車(武蔵2号)のような、いかにも実験車らしいゴテゴテした機器は見当たらない

国産車メーカー各社が、次世代自動車向けに開発していたあらゆる技術の中にFCV(燃料電池車)用の燃料電池があり、スズキも当初は独自開発していましたが、当時の軽自動車No.1メーカーといえども規模の小さい同社単独では限界があります。

そこで2001年、1980年代から提携関係にある、低価格小型車の開発をスズキに任せていたGMとの共同開発に切り替え、GMの燃料電池を搭載したのが2代目ワゴンRベースの「ワゴンR-FCV」と、初代MRワゴンベースの「MRワゴン-FCV」でした。

燃料タンクに代えて水素タンクを搭載し、2次電池を介さず、燃料電池で発電した電力で直接モーターを駆動するという、トヨタやホンダが実用化したFCHV(充電可能な2次電池またはキャパシタを持つ、燃料電池とのハイブリッド車)とは異なる方式。

シンプルながら十分な性能を発揮する燃料電池システムにより、通常のガソリン車並の車内空間を確保して使い勝手も遜色ない点は評価されました。

まだまだ実験車レベルだったワゴンR-FCV

中にギッシリと詰まったパワーユニット冷却に必要と思われる巨大なフロントグリルも、実験車らしさを感じるポイント

ただ、一般にお披露目された際は、ツギハギの目立つ下回りや内装、燃料電池へ水素燃料を注入する際のポンプ駆動音が激しく快適性に難があり、2次電池を持たないため水素切れでそのまま立ち往生するなど、「いかにも実験車らしい」エピソードがあったようです。

一応は最高速度110km/h、満充填時の航続距離130kmというスペックで国土交通省から公道走行の実験許可も受けてはいたものの、2010年代に実用化されたFCVと異なり、2000年代のFCV実験車ならその程度、ということだったのでしょう。

なお、スズキはワゴンR-FCVやMRワゴン-FCVの経験を活かしてその後もFCVの研究開発を続け、ホンダ同様に2次電池としてキャパシタを使ったFCHV方式の「SX4-FCV(2008年)」を開発。

さらにイギリス企業の開発した空冷燃料電池を搭載する2輪スクーターやシニアカーも開発、同じ電池を使う軽FCVも2020年代はじめに発売すると言われましたが、トヨタやホンダと異なる水素充填方式のためか、発売されていません。

現状ではトヨタ陣営の一員として軽商用BEVの実用化に向けた実証実験が最優先と思われますから、スズキのFCVが実用化・市販されるとしても、だいぶ先の話になりそうです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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