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「松本民芸家具 工房見学」編 – マツダCX-30 価値体験型取材会#4
マツダがメディア向けに開催した「マツダ CX-30 価値体験取材会」のレポート。“松本の家具”として有名な民芸。一般公開されていないを特別取材。マツダは木工民芸からどうCX-30の価値を伝えたかったのか?どうぞご覧ください。
前回の記事:「松本市の夜散歩」編 – マツダCX-30 価値体験型取材会#3
「ウィンザーチェア」を代表とする松本民芸家具。これまでにロックフェラー三世から再三注文を受け、自動車評論家の巨匠、故徳大寺有恒氏も愛した松本の家具。その歴史は現在の株式会社松本民芸家具の前身である中央構材工業株式会社が設立された昭和19年までに遡ります。
取材時に受けた説明から、特に注目したいのが、この工房でつくられる家具は「工芸品」であり、工業製品ではないことが強調されたこと。
まずは材料からして一般の家具とは異なります。主要な材木は「ミズメザクラ」、カバノキ科の落葉高木で「梓(あずさ)」とも呼ばれる樹木。松本市を流れる河川は「梓皮」、東京上野から松本へ向かう特急は「あずさ号」。あの「特急あずさ2号」の梓。ミズメザクラの他は、欅(けやき)、楢(ナラ)、栓(セン)、栃(トチ)、楓(かえで)などすべて国産の落葉高木を使用しているとのこと。
また、ミズメザクラは植林ができず、自生する樹木からしか伐採できないとのこと。それも群生せず、伐採できるとしたら、たまたまの道路工事や開発などで伐採されるミズメザクラを全国からかき集めるそう。
さらに、製材された材料は野外で天然乾燥、最低で1年、長いものでは5年、10年と野積することも珍しくないそう。
取材のとき、工房に入る前の材木置場だけでも膨大な情報量。非常に興味深い。筆者の工房見学は撮影した画像でみなさまへご共有。
ここで注目したいのは「鉋(かんな)」
無数にありますが、実はかんなも職人自らの手作り。ミズメザクラはとても固く、普通のかんなでは刃が立たず、さらに曲面や細かい仕上げに合わせたかんなを自作する必要があるとのこと。
職人の修行の内、親方のかんなの刃を研ぐことがあるという。親方から道具を借りたら、刃を研いで返すという礼儀でもあるとのことだが、これがなかなか難しく、丸一日かけて刃を研いだことも珍しくなかったと語っていました。
また、刃も使っているうちに減っていき、調整が難しいとのこと。交換する刃はなく、もし使えなくなったらイチから道具を作ることから始まるという。
「ラッシチェア」と呼ばれる乾燥させた草を編み込んだ座面をつくっている。
材料は沼などに生える「ガマ」の長い茎を使用。自社で栽培しているとのことだが、生産量が少なく貴重なイスとなる。
以上、松本民芸家具工房見学のレポートでした。
やはり、モノ作りの経緯、裏側を知るとそのモノの良さが特に身に染みてよくわかります。そして欲しくなります。普段の生活では兎角完成品を見るばかり。クルマもそうですね。完成品が街中にたくさん走っていますが、クルマが街を走るまでにもそれぞれのストーリーがあるはず。
マツダは自社の製品の開発工程を我々に細かく共有してくれる自動車メーカー。新型車1車種あたりの取材会、試乗会の開催回数はマツダが最多となるでしょう。また、今回の松本民芸家具工房見学も、CX-30の開発主査、佐賀氏をはじめとした開発担当者が一緒で、モノ作りの悲喜こもごもを共感したり語りあったりしました。
クルマを買うというのは滅多にない大きな買い物ですし、日常生活に密着したものですから、つくり手の顔と背景が見えるクルマを買う、というのもひとつの選択肢かと。
コインパーキングに戻るとずらりとCX-30が並んでいました。別に予約したわけではないのでたまたまですが。
さて、マツダCX-30価値体験型取材会は終盤になりました。松本民芸家具工房の後は、諏訪湖の畔のレストランまでドライブしてランチ、CX-30開発関係者と意見交換。その後は自由行動で横浜へ帰るという工程。自由行動ではマツダのおすすめコース、ヴィーナスラインをドライブしていきました。このドライブのレポートは次の記事でお伝えします。
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...