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「とにかくアレがデカい」オーストラリアを代表する栄光の1台・ホールデン ハリケーンコンセプト【推し車】

オーストラリア自動車史を代表する栄光の1台

現在は自動車の生産をしなくなって全量輸入に頼っているオーストラリアですが、かつてはいくつかのメーカーが現地工場を持ち、GM系のホールデンというメーカーもありました。

このホールデン、右ハンドル圏で日本国内では大型となるアメ車メーカーという事もあり、1970年代にはマツダ(ロードペーサーのベースとなった「プレミア」)やいすゞ(ステーツマン・デ・ビル)へ車両を供給しており、実は日本とも意外に縁のあるメーカー。

GM系車両の現地生産以外に自社開発も手掛け、アッサリした見かけとは裏腹にV8エンジンを積むパワフルな「コモドア」など、興味深いモデルもいくつかあります。

そんなホールデンが1969年に作ったかっこいいコンセプトカーが「ハリケーン」で、スタイツのみならずキャノピー開閉方法にも特徴がある、実に未来的なクルマでした。

1969年のメルボルンへ降臨したスーパーカー

flickr.com Author:Cars Down Under CC BY-SA 2.0

19世紀に馬具メーカーとして創業、第1次世界大戦を機にフォードやGMの現地生産メーカーとなり、第2次世界大戦前には買収されてGMグループへ組み込まれた、オーストラリアの「ホールデン」。

オーストラリアはもともとイギリスの植民地(もっと言えば「流刑地」)、現在もイギリス連邦の一員というお国柄もあって右ハンドル圏ですが、自動車文化としては地理的に近いアメリカの影響が大きく、それでいてアメ車としては少々小さいクルマが好まれます。

要するに日本で言う3ナンバー車のちょっと大きめ程度なクルマにV8エンジンをドロドロさせるのがオーストラリア車、それも地場メーカーであるホールデン車の特徴で、ヨーロッパ車、アメリカ車、日本車を足して3で割ったような興味深いクルマを作っていました。

もっとも現在では人件費高騰その他の理由で、最後まで残っていたトヨタやフォードともどもホールデンもオーストラリア国内生産をやめてしまいましたが、かつての栄光を象徴するようなコンセプトカーが、「ハリケーン」です。

1969年のメルボルンモーターショーで発表されたハリケーンは、1960年代末~1970年代前半あたりのスーパーカーによく見られた、部分的には先進的ですらあったクルマで、ハリボテではなく実際に走行可能。

2011年には5年かけたレストアが完了して再び走行する姿が公開されています。

空力を追求したデザインに未来的装備を満載

ハリケーンのデザインは典型的なウェッジシェイプ(クサビ型)で、当時の未来的なデザインとしてコンセプトカーやスーパーカーで多用されたもの。

ただし後輪をスッポリ覆う空力追求型のリアフェンダーや、フロントフード上に飛び出すと見せて実はカバーが沈み、奥のヘッドライトが照らすタイプの変わった格納式ヘッドライトを採用するなど、単に当時の流行を追っただけではない独自性もあります。

262馬力を発揮する253キュービック・インチ(4,143cc)のV8エンジンはリアミッドにマウントされ、リアカウルがガバっと開いてエンジンへアクセスするあたりは当時のスーパーカーの文法に沿っており、0-400m加速は13秒台だそうです。

アレコレと計器類が並ぶコクピットのブラウン管モニターは時代を感じさせますが、これはいかにも悪そうな後方視界を補うバックモニター用で、さらに路面に埋設された磁気マーカーを使う原始的なナビゲーションシステムまであったのは、ちょっとコンセプトカー的。

テスト走行を精力的にこなす当時の記録映像が残っているなど、機会あらば市販したかもしれませんが、1970年代に入るとマスキー法による厳しい排ガス規制や、第1次オイルショックによるガソリン価格高騰が待っていたので、実現は難しかったでしょう。

最大の特徴はガバッと開く「キャノピー」

ただし、ハリケーンでもっとも特徴的なのはスーパーカースタイルや未来的な電子装備ではなく乗降システムで、なんと通常のドアではなく、ルーフやフロントウィンドウごとガバッと前上方へ開く…というよりせり上がる巨大な一体型キャノピー。

フォルクスワーゲン ビートルのフロアフレームへ同じようなキャノピー開閉式カウルを載せた「スターリング ノバ」という1970年代発売のキットカーがあったのを思い出しますが、それより早く発表されたハリケーンの影響があるかもしれません。

何しろフロントガラスごと一体式ですからAピラーなどなく前方・側方視界は非常に良さそうで、後方視界もバックモニターで補えますから、荷物を入れるスペースが見当たらないのを除けば意外に実用性は高そうです。

開閉は電動操作式の油圧シリンダーらしく、横転した場合の脱出にはおそらくガラスを叩き割るハンマーを装備したのでしょう。

他にも着座すると自動でロックされるシートベルト、安全タンクで乗員の安全を確保し、火災警報装置も完備していたと言いますから、万が一の時にも素早く脱出に動けますし、当時の流行だった安全性向上もしっかり抑えていました。

市販されたらかなり面白そうでしたが、現在はオーストラリア自動車史に名を残す1台として動態保存されるのみとなっています。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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