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富士自動車「フジキャビン」とは?生産台数85台!歴史に消えた幻の車
富士自動車「フジキャビン」
「フジキャビン」は、富士自動車(現・小松製作所)が1956年から1957年まで生産していた、二人乗りの超小型車です。
戦後の物不足の時代、少ない資材で生産できる安価な乗用車として開発されました。
サイズやエンジンスペック
【サイズ】
全長 :2950mm
全幅 :1270mm
全高 :1250mm
車両質量:150kg
ホイールベース:2000mm
【エンジンスペック】
エンジン形式:空冷単気筒2サイクル
総排気量 :Total Displacement 121cm3
最高出力 :5/hp、3.7/kw、5000/min-1
画期的な設計
「フジキャビン」の設計は、「ダットサン」「フライングフェザー」をデザインした工業デザイナー「富谷龍一」が行いました。
ボディは当時としては画期的なFRP(繊維強化プラスチック)の一体成型で作られていて、軽量かつ一定の強度をもつことに成功しています。
エンジンは自社で生産していたオートバイ用エンジン(当時のバイクでは主流だった122㏄のもの)を流用していて、カタログスペックでは60km/hを出すことができるとしています。
馬力はなんと5.5馬力という今の常識で考えたら考えられない数字ですが、130~150㎏という車体の軽さが幸いし走行は問題ありませんでした。
最高速度は時速60km
フジキャビンは空冷単気筒2サイクルエンジンを採用し、重さ130kg最高速度60kmの車です。
中はそこまで広くはないがそこを生かした車内、独特なデザインなど奮闘したが、FRPの製作技術がこの仕様に合わずわずか85台しか製作されませんでした。
富谷龍一(とみや りゅういち)とは?
富谷龍一さんは日本の自動車工学に創始者ともいわれる存在でした。千葉大工学部を卒業した後、自動車製造株式会社(後の日産自動車)に1934年に入社しダットサンなど多くの車の設計に携わりました。
その後、トヨタ自動車の技術顧問に任命され、日本の自動車技術の歴史には外せないような人でした。
販売不振と早すぎる終わり
発売当時23万5千円という他社の二人乗り自動車と比較しても廉価であり、当時のスクーターの2台分程度という安価な価格設定がされた「フジキャビン」でしたが、操縦性・居住性・生産性が悪いという問題を抱えていました。
極力ボディを軽くしたものの、エンジンパワー不足でうまく動かせない操縦性でした。
換気が悪いので夏は暑い、冬はヒータが無くて寒いという居住性で、FRP生産技術が未熟だったために量産体制に入れなかった生産性でした。
このため売り上げが振るわず、わずか2年で生産を終了しました。
魅力ある車「フジキャビン」
あっという間に姿を消した「フジキャビン」でしたが、先進的なFRP一体成型の特徴的ボディは大きな印象を残しました。
現在日本国内では、愛知県のトヨタ博物館と石川県の日本自動車博物館で実物を見ることができます。商業的成果はともかく、魅力的な車であることに間違いないので、興味を持った人は一度見に行ってみることをおすすめします。
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...