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【BMW M1】永久欠番か?復活か?Mの由来となったミッドシップスポーツ
目次
70・80年代のBMWとモータースポーツ
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![BMW 3.0 CSL](https://cdn.car-moby.jp/wp-content/uploads/2019/06/BMW-3.0CSL-2.jpg)
BMWのモータースポーツを語るのに忘れてはならない存在に「BMWモータースポーツ社(現:BMW M社)」があります。同社の創業は1972年。モータースポーツに特化した車両の研究・開発・生産などのために設立されました。35名のスペシャリストを率いたのはヨッヘン・ニーアパッシュ氏。ドイツ・ミュンヘンの広大な敷地に、エンジン組み立て部門・ワークショップ・工具制作部門・エンジンテストベンチで構成される万全の体制が用意されました。
創業からわずか1年の1973年、BMW M社初となるレーシングモデル3.0CSLが誕生。3.0CSLはいきなりヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)で優勝に輝き、その後もワークスチーム・プライベーターを交え7年連続となるETCの王座に君臨。BMWは他車を圧倒的な強さで圧倒したのです。
ETCで敵無しとなったBMWの次のターゲットは、世界選手権であるグループ4、グループ5(通称:シルエット・フォーミュラー)。このカテゴリーでの勝利をめざし開発されたレースカーこそが、今回紹介する「BMW M1」です。プロジェクトコードはE-26。残念ながらプロジェクトは万全の生産体制が整わずグループ5での活躍にはいたりませんでしたが、BMWは「M1 プロカーレース」を開催。プロカーレースとはM1のみを用いたレースで、現在活況のワンメイクレースの先駆けと言われています。
BMW M1ボディはジウジアーロ、シャシーはダラーラの最強タッグ
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当時、グループ4・グループ5の世界選手権で圧倒的強さを誇ったポルシェ934・935を打倒し、王座を奪還するために開発されたといっても過言ではないBMW M1は、プロジェクトコード「E-26」の名で1976年に開発がスタート。ボディデザインはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタル・デザインが担当し、エンジンはミッドシップレイアウト(前後車軸の間にエンジンを搭載する方式)に決定しました。
しかし、当時のBMWはMRレイアウトの開発経験は無く、E-26の開発・製造をランボルギーニ社に委託することに。シャシーデザインはフォーミュラーカー設計で現在でも著名なジャンパウロ・ダラーラが担当し、強靭な剛性をもつ角型鋼管セミスペースフレーム、外板は軽量のFRP製が採用されました。そんななか、委託先のランボルギーニが経営悪化に陥り生産が捗らない事態となります。
一時、BMWはランボルギーニの買収も視野に入れますが、ランボルギーニ側が拒否。そのため、バウア社に委託先が変更されフレーム製造を同社で、ボディメイクは急遽設立されたイタルエンジニアリングが担当することとなります。E-26はドイツ・バウア社で製造されたフレームを、イタリアにあるイタルエンジニアリングで外装組付け・塗装を行い、ドイツ・BMW M社で最終的なセッティングを行う壮大な大陸横断モデルとなりました。
公道仕様・グループ4・グループ5 3つのスペックバリエーション
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BMW M1のエンジンにはETC用に開発された3.0CSLのM-88型をベースとし、3.5L 直列6気筒DOHCにクーゲルフィッシャー製機械式インジェクション(燃料噴射装置)が組み合わされミッドシップに。また、イグニッションにはマレッリ製トランジスタ式が採用され、高回転域でも高い点火特性としています。
潤滑系ではドライサンプ方式を採用することで、エンジン搭載位置を下げ低重心に。空力を考慮したウェッジシェイプ(くさび型)とともにストレート・コーナリングを問わずあらゆる路面状況に対応できるよう仕上げられました。これにより、公道仕様のM1では最高出力は277PS/6,500rpmを達成。さらにグループ4仕様では最高出力は470PS/9,000rpm、グループ5仕様では850PS/9,000rpmまで高められたのです。(ドライサンプとは、オイルをポンプで強制的に吸引し別体のタンクに回収する方式。オイルパンを小さくすることで低重心で走行安定性が保たれる)
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生産台数が思うように捗らないなか打倒ポルシェを掲げ、まずはグループ4のホモロゲーション(規格認定)である12ヶ月途切れない状態で生産台数400台以上をなんとかクリアしたM1でしたが、FIAが大幅なカテゴリー刷新でグループ4・グループ5は消滅。その悲運をプロカーレース開催で晴らすこととなったのです。
永久欠番それとも復活?悲運な稀少車M1の価格は高め
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世界選手権グループ4のホモロゲーションを目指し、生産台数477台としたBMW M1はMの称号をもつ元祖であり、その悲運ともいえる歴史・スタイル・性能の高さから未だに世界中から注目されているため、取引価格は非常に高額となっています。その個体の状態にもよりますが、価格は5,000万~6,400万円ほどとなるようです。今後のMシリーズにおいて「M1」の名前は永久欠番なのか、はたまた復活はあるのか、ファンの間ではこれからも話題には事欠かない名車だと言えるでしょう。
BMW M1のスペック表
下記のスペック表の内容は、公道仕様のM1モデルとしています。
エンジン | 直列6気筒DOHC |
---|---|
最高出力 | 277PS/6,500rpm |
最大トルク | 33.6kgm/5,000rpm |
ボディサイズ | 全長:4,360mm 全幅:1,824mm 全高:1,140mm ホイールベース:2,560mm |
車両重量 | 1,300kg |
トランスミッション | 5速MT |
駆動方式 | MR |
乗車定員 | 2人 |
新車時車両価格 | – |
撮影:宇野 智(MOBY編集部)
2019年6月23日に富士スピードウェイで開催された「BMWモータースポーツフェスティバル2019」にて
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...