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「今さら聞けない」昔の車は軽かった?軽自動車もSUVも重くなっている理由は?
安全性と環境性能の両立が重くのしかかる
なぜ、車は重くなっているのでしょうか。実はその理由こそが、この十数年、自動車メーカーを悩ませてきたものだったのです。
環境性能と同時に、近年のクルマに求められ続けてきたのが安全性の向上でした。各メーカーは安全自動ブレーキに始まり、車両の挙動安定装置、自動追尾式のオートクルーズコントロールなど、様々な安全装置を開発・装備してきました。
こうした安全装置は、エンジン、車輪回転数、車速、Gなど、様々な車両の状態の感知が基本であり、各センサーからのデータをコンピュータ(ECU)が計算し、それを基に多様な電子デバイスを作動させるのです。
このデータのやり取りは、ハーネスと呼ばれるコードによって行われます。こうしたやり取りは、安全性能だけでなく、環境性能のためのエンジン制御にも必要になります。
各センサーは1秒間に100〜1000回も車両状態を感知し、それをECUに送ります。そしてECUは秒間25回、それを計算してデータ判断し、異常がある場合は電子デバイスに作動指令を送ります。
データを高速で送るために、ハーネスは膨大な量となり、1台の乗用車で約200kgの配線が必要となるのです。
加えて、事故時のライフスペースを確保するため、サイドドアビームやボディ補強なども、旧来のクルマより増加しています。
EVバッテリーの軽量化も今後大きな課題になる
このような部分で、車の重量が増加している分、メーカーも溶接を減らして専用接着材に切り替えたり、ハーネスを銅線からアルミ線に替えるなどして軽量化を図っています。しかし、200kg近くのハーネスの重さを減らすには至っていないようです。
ただ、将来の技術として採用が近いものもあります。世界的な自動車電装メーカーであるマレリは、電気自動車のバッテリーと制御システム間のハーネスを廃して、通信によるコントロールシステムを実現。これにより、ハーネスの90%を削減することができるといいます。
内燃機関の電子制御は、ある意味で電気自動車よりも複雑なため、ハーネスがより必要であることということが言えます。EVのバッテリーが小型・軽量化されれば、すべてのカテゴリーのクルマが、従来よりも軽くなるかもしれません。
いずれにせよ、自動車メーカーのエンジニアは、安全性向上と環境性能向上という2つの相反するベクトルの中で、ベストな答えを導き出すべく努力しているのです。
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- 執筆者プロフィール
- 山崎 友貴
- 1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...