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最近の新車は高すぎる…?その理由と価格上昇によって成し遂げた「悲願」とは
1980年代〜1990年代には、予算200万円で購入可能な新車は少なくありませんでした。
例えば、トヨタ「カローラ レビン/トレノ(AE86)」やユーノス「ロードスター」、日産「シルビア」といった車は、200万円でもじゅうぶん購入可能でしたし、300万円まで予算を増やせばトヨタ「スープラ」や日産「スカイライン」なども狙うことができました。
一方、いまでは200万円で買える新車はそれほど多くありません。軽自動車やコンパクトカーが現実的な選択肢となりますが、グレードやオプションによっては200万円を超えることも珍しくありません。
なぜ、これほどまでに新車価格は上昇しているのでしょうか?
新車価格が上昇した2つの理由
新車価格の上昇については、大きく分けて「ラインナップにおける立ち位置の変化」と「求められる装備や機能の向上」という2つの理由が挙げられます。
インフレが進行することによる物価の上昇に比べて、国民の給与所得が上昇しないという経済一般の話は、ここでは別と考えます。
ラインナップにおける立ち位置が変化したから
これについては、スカイラインがわかりやすい例でしょう。
1990年ごろは300万円程度で購入することが可能であったスカイラインですが、2021年現在では、435万3800万円〜616万円と、大きく上昇していることがわかります。
この背景には、かつて日産の最高級車として一斉を風靡した「シーマ」の存在があります。1990年頃には、日産の高級車を求める消費者には、シーマという選択肢がありました。
しかし、2021年現在、シーマは新車販売こそ行われているものの、フルモデルチェンジからかなりの年月が経過しており、月間販売台数は数台という状態です。
そのため、現在ではスカイラインが事実上の日産の最高級車となっており、かつてに比べて、より上質なものが求められるようになりました。
高級車に対するニーズを満たすために、結果として価格が上昇したと言えます。
求められる装備や機能が向上したから
一方で、すべてのモデルが、かつてと比べて立ち位置が変わったわけではありません。
それにもかかわらず、ほとんどのモデルの価格が上昇している背景には「求められる装備や機能の向上」があります。
ここでいう「求められる」には、もちろん消費者のニーズという意味合いも含まれていますが、より切実なものとして「法律上などの理由で必要なものが増えた」ということもあります。
例えば、2021年11月以降販売される新車には、いわゆる「自動ブレーキ」の搭載が義務付けられています。1990年頃には当然自動ブレーキは存在しないため、そのコストが価格に上乗せされることになります。
また、現在新車で販売されている車のほぼすべてに運転席・助手席エアバッグが搭載されていますが、かつては一部の車にしか搭載されていませんでした。
エアバッグの搭載は、厳密に言えば義務ではありませんが、販売前に行われる衝突安全基準テストに合格するためにエアバッグは欠かせないため、事実上義務化されているといえます。
加えて、安全基準も年々厳格化されており、かつてのようなボディ構造では基準を満たすことができなくなっています。強化されたボディ構造にはより多くの金属を使用する必要があるため、結果としてコストが上昇します。
さらに、排ガス規制に代表される環境規制も価格上昇には大きな影響を与えています。例えば、1990年時点と2021年現在では、排気ガス中に含まれる二酸化炭素の規制値がおよそ3倍に強化されています。
そのため、自動車メーカー各社はそれを達成するために電子制御燃料噴射装置や、可変バルブタイミング機構を備えたエンジンを開発したり、ハイブリッドシステムを開発したりする必要がありました。当然、これらの開発費や部品代も新車価格に転嫁されることとなります。
それ以外にも、カーナビに代表されるインフォテインメントシステムや、オートエアコン、シートヒーターなどの快適装備も一部車種には標準装備となっており、新車価格の上昇へとつながっています。
新車を買う時代は終わった?
価格面だけを見れば、新車は割高になったように見られるかもしれません。しかし、だからといって新車を買うべきでないというわけではありません。
上述したように、新車価格が上昇した理由の大部分は、おもに安全基準の強化に代表される装備の向上にありますが、その成果は確実に現れています。
1990年に1万1452人と過去最高を記録した交通事故死者数ですが、2020年には2839人にまで減少しています。交通事故死者数はほぼ毎年減少傾向にあり、自動車安全技術の進化とは無縁ではありません。
当然のことではありますが、命はお金では買えないものです。新車価格が上昇したのは事実ですが、それに応じたメリットも決して少なくありません。安全を考えるのであれば、最新の新車はまずはじめに検討すべき選択肢と言えます。
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- 執筆者プロフィール
- 清水 圭太
- 1995年生まれ。自動車やファッション、高級時計などのライターとして執筆活動中。現在の愛車はランドローバー、輸入車が好き。週末はSUVで旅行に行くのが楽しみになっている。