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自衛隊車両はパンク知らず?銃撃戦に耐えうる「コンバットタイヤ」がスゴイ

自衛隊車両や軍用車両の防弾車であっても、タイヤに穴が開けばパンクをしてしまいます。それでは任務どころではありません。では、戦地で銃撃されたらどうするのでしょうか。

銃撃されても走れるコンバットタイヤ

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タイヤはいわば車のアキレス腱。空気入りタイヤを装着する車はパンクをしてしまえば走行できなくなります。一般の車であればスペアタイアに交換するなり、JAFを呼ぶなりできますが、戦地や不整地での迅速な任務遂行が求められる自衛隊車両や軍用車両ではそうはいきません。

かといって、パンクしないようにタイヤのすべてをゴムだけでつくると非常に重くなり、乗り心地や運動性能、燃費が犠牲になります。戦車のように金属製のベルトを用いた無限軌道は銃撃を防げるものの、道路や履帯への負担が大きく一般道の走行が問題です。

そのため自衛隊車両を含む軍用車両にはコンバットタイヤと呼ばれる特殊なタイヤが装着されています。「戦闘・闘争」を意味する「コンバット」の名前どおり、コンバットタイヤとはいわば「戦闘用タイヤ」。

コンバットタイヤは、マッドテレーン(オフロード)タイヤのように不整地でもスタックせずに進める悪路走破性を備えつつ、金属片を踏み抜いても、タイヤが銃撃されても走行できる軍用車両御用達のタイヤです。

構造はランフラットタイヤと同じ

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コンバットタイヤの構造は、近年高級車やスポーツカーに装着されるパンクしても一定距離を走行可能なランフラットタイヤと同じ構造です。

そもそもランフラットタイヤは、現金輸送車や物資輸送車両の銃を用いた強盗対策として開発されたものでした。その後、第一次世界大戦ころから軍用車にも装着されるようになり、現在のように一般車両向けの耐パンクタイヤとして実用化されるに至りました。

ただし現在の一般車両向けランフラットタイヤは、側面で車重を支えるサイドウォール強化タイプが主流であるのに対し、コンバットタイヤはタイヤ空洞内に備わる構造体によって車重を支える中子タイプと呼ばれる形式です。

タイヤとしての性能を求めるならサイドウォール強化タイプの方が優れます。しかし、パンクするのを前提とした使用であれば中子タイプの方が信頼性が高いタイヤといえるでしょう。

タイヤが支える荷重が多くなる大型車や防弾仕様車も一般的に中子タイプのランフラットタイヤが装着されます。また、モノレールや地下鉄車両のタイヤも乗客の安全が確保できるように中子タイプのタイヤが装着されています。

空気が抜けても走行できる中子タイプのコンバットタイヤなら、たとえ戦地でタイヤに2、3発の銃弾を受けたとしても任務遂行に支障はありません。

性能と整備性とコストを並立

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自衛隊車両のコンバットタイヤはホイール側に金属製の中子が装着されており、タイヤ自体は特殊サイズであるものの一般的なオフロードタイヤと同様です。

側面でのみ車重を支えるサイドウォール強化タイプのタイヤでは、側面から銃弾で撃ち抜かれるとランフラットタイヤとしての性能が著しく低下してしまいます。また、定期交換が必要なタイヤが特殊であると価格の上昇や整備性の低下を招いてしまううえ、非常時の物品調達が滞る恐れがあります。

コンバットタイヤが、ホイールに中子構造を備えた旧来の構造を用いるのはパンク時の信頼性を高めるだけでなく、入手しやすい一般的なオフロードタイヤを中子付きホイールに組み合わせることで性能と整備性とコストを並立させるためです。

メガクルーザーをベースとする高機動車など、ほとんどの自衛隊車両は中子タイプのコンバットタイヤを装着しています。

ただし、すべての自衛隊車両が中子タイプのコンバットタイヤを装着しているわけではなく、82式指揮通信車や87式偵察警戒車などが履くのはサイドウォール強化タイプのコンバットタイヤです。

もちろんコンバットタイヤではない、ごく一般的なタイヤを履く車両もあります。自衛隊では車両の用途に応じてタイヤを柔軟に使い分けています。

コンバットタイヤに変わる空気要らずのエアレスタイヤがもうすぐ実現

しかし、いくらコンバットタイヤやランフラットタイヤであっても、パンクした状態では制限なしに走行できるわけではありません。

ランフラットタイヤは、ISO(国際標準化機構)規格で80km/hで約80kmを走行できる性能が付与されているものの、走行可能距離は100km程度が限界です。コンバットタイヤやランフラットタイヤはあくまでパンクの事後対処にすぎません。

そこで現在注目を集めているのは、そもそも空気を必要としないエアレスタイヤです。タイヤの構造体のみで車体を支え、柔軟な幾何学構造のホイールスポークで衝撃を吸収するよう設計されたタイヤがエアレスタイヤであり、現在各タイヤメーカーが自動車用や自転車用に開発を進めています。

これまでも一輪車や自転車向けのノーパンクタイヤや、悪路を走行するラリーカーなどに装着されるムースタイヤなどが存在したものの、重かったり衝撃吸収性が悪かったりするなどの問題がありました。タイヤメーカーの悲願であった実用的なパンクレスタイヤは、エアレスタイヤとして実現しつつあります。

実用化秒読み段階のエアレスタイヤとは

エアレスタイヤは空気入りタイヤより重いものの、パンクは起こりえないことからランフラットタイヤやコンバットタイヤの代替となる可能性があります。事実、アメリカ陸軍は軍用車両ハンヴィーでテストを行っており、良好な評価を得ているようです。

また、フランスの自動車メーカーミシュランでは、すでに小型重機用にエアレスタイヤ「トゥイール」を販売しており、岩場のような凸凹道での車両安定性と走破性が空気入りタイヤより向上する模様です。

戦地におけるエアレスタイヤの耐弾性については定かではありません。しかしパンクをせず、空気入りタイヤよりも柔軟なエアレスタイヤは、瓦礫の上や岩場などの走破性能向上が期待できます。

それは、車両性能を高めることなく活動範囲が広げられるということであり、もしエアレスタイヤが自衛隊車両に導入されれば、災害救助の場でも大活躍することでしょう。

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執筆者プロフィール
伊藤友春
伊藤友春
1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...

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