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高齢ドライバーの悲惨な事故はどう防ぐ?75歳以上の免許更新にある「問題点」とは
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75歳以上の免許更新、検査や講習の制度が複雑…
高齢ドライバーによる事故が増えていると言われて久しい昨今。行政による対策も強化されていますが、運転時の正確な判断や操作は個人差がかなり影響しています。
75歳以上になって免許の更新時期が近づいた人は、必ず認知症のおそれがないかの検査を受けなければいけません。認知症のおそれがなければ、「高齢者講習」を受講し免許を更新するという流れになります。
しかし、71歳以上の高齢者の免許の有効期限は3年です。つまり、認知症のおそれがないとして免許を無事に更新できたとしても、3年も経過すれば変化が現れる可能性は十分にあります。年代を問わず、運動機能が徐々に変化することは想定できますが、高齢者ともなればその可能性はより高まると考えていいでしょう。
高齢者講習は、内容や手続きが複雑かつ煩雑なため、一般的にどのような手順で行われるのかあまり知られていません。そこで今回は、高齢者講習はどのような流れで行われるのか解説します。
ちなみに、講習の具体的な内容にまで触れるとかなりのボリュームになるので、ここでは全体の流れがつかめるように、東京都の実施内容と、講習の概要に絞って解説します。
まず「認知機能検査」を受けて、認知症のおそれがないかをチェック
運転免許の更新が近づいた高齢ドライバーは、まず「認知機能検査」を受けます。この検査は、紙に書かれた枠を塗りつぶしたり、時計の絵を書いたりするなど、誰にでもできる基本的な日常の動作をチェックする検査です。そこで認知症のおそれがあるかどうかを客観的に判断します。
この認知機能検査は、指定の教習所や運転免許試験場で受けることができます。
ただしこの検査を受けた人に対して、教習所や運転免許試験場は、医療機関ではないため「認知症です」とは断定できません。もちろん「認知症ではない」とも言い切れません。
そのため、教習所や運転免許試験場では、「認知症のおそれがあるかもしれません」という言い方にとどめ、当該ドライバーに医師の診断を受けるよう促します。その上で、医学的に「認知症ではない」と診断された人だけが免許を更新できるという流れです。
筆者がかつて勤務していた教習所でも、「前回の更新は問題なかったが、今回の更新では『認知症のおそれあり』と言われた」という高齢者がたくさん来所していました。
では、認知症のおそれあり・なしによってどのように検査内容が異なるのか見ていきましょう。
認知症のおそれあり・なしで検査内容は異なる?
認知機能検査によって、認知症のおそれがないと判断された場合、別の日に2時間の「高齢者講習」を指定された自動車教習所で受けます。
高齢者講習では「運転適性検査(30分)」「講義(30分)」「実車指導(60分)」を行います。
運転適性検査では視力検査などを実施し、講義では安全運転に関する説明を受けたりビデオを視聴したりします。
さらに、実車指導では、指導員同乗のもと、教習所内のコースを一定時間走行し、車庫入れや一時停止、交差点の走り方などの指導を受けます。
講習が無事に終了すると、修了証が交付されるので、それを持って警察署などで免許の更新手続きが可能となります。
対して認知機能検査によって、認知症のおそれがあると判断された場合は、「臨時適性検査」を受験します。このとき、認知症ではないという医師の診断書があればこの検査は免除され、免許の更新が可能となります。
臨時適性検査では、運転シミュレーターなどの装置を使い適正な操作・判断ができるかどうかをチェックします。(都道府県によって、所持免許の種類によって内容に若干の違いがあることがわかっています)
その結果、やはり認知症のおそれがあると判断された場合には、医師による診断書の提出が必要となり、認知症であると診断されれば免許は更新できず、免許取り消しなどの措置が取られることになります。
前述の通り、医師の診断によって認知症のおそれがないと判断された場合には、教習所での高齢者講習(2時間)を受講し、その後、警察署で免許の更新手続きを行います。
いずれにせよ、いわゆる「高齢者講習」は、認知機能検査のあとに、自動車教習所(都内43箇所)で受けることになります。
- 執筆者プロフィール
- 室井大和
- 1982年生まれ。ライター歴6年、自動車業界9年。合わせて約15年。雑誌編集、記者、指定自動車教習所員資格保有。愛車はスズキスイフトスポーツ(33型)、BMW323i(E90型)、ジムニー(JB23型)。車はセダンではじ...