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下り坂でブレーキが効かなくなる《フェード現象》とは?運転中に発生したらどうする?
目次
ブレーキの熱が原因で発生する「フェード現象」とは?
車を減速・停止させるために、当たり前に使用するフットブレーキ。これが突然効かなくなったら、運転中にパニックになることは必至です。
ブレーキが効きにくい環境というと、凍った路面を走っているときや、ブレーキ系統のそもそもの故障などを考えると思いますが、運転方法次第では、乾いた路面で直前までブレーキが正常に作動している状況でも発生します。
その一つであるフェード現象は、長い下り坂でフットブレーキを多用しすぎると発生する現象です。
下り坂での減速中、ブレーキパッドとブレーキディスクローターが摩擦し続けることで、ブレーキパッドが通常よりも高い熱を帯びます。熱がブレーキパッドの許容量を超えると、摩擦係数が低下してブレーキ系統は正常に動いているのにも関わらず、ブレーキが効かないという現象が起きるのです。
フェード現象が発生した状態で、さらにブレーキを踏み続けるとどうなる?
ブレーキというのは油圧で動いています。ドライバーが軽い力でブレーキペダルを踏み込み、大きな制動力を得られるのも、この油圧のおかげです。大きな力(油圧)を発生させるために必要な「油」の部分ですが、ブレーキの場合はブレーキフルードがこの役割を果たします。
フェード現象が発生した状態で、さらにブレーキを踏み続けると、ブレーキパッドに入っていた熱が、ブレーキフルードにまで伝わり、ブレーキフルードが沸騰する現象が発生します。これをベーパーロックと言います。
ブレーキフルードの沸騰によって、ブレーキフルードを通しているホースの中に気泡が発生すると、ブレーキペダルを踏んで作られた圧力が、フルード内の気泡を潰すことに使われてしまい、ブレーキ自体が動かなくなってしまうのです。
こうなってしまうと、ブレーキに頼った制動はできなくなります。
フェード現象で車を制動できなくなったらどうする?
ブレーキペダルに踏みごたえがなくなってしまった、踏んでも減速しないという状況になったら、まずは落ち着いて周囲を確認しましょう。
前に走る車、後ろを走る車はいるのか。車寄せや緊急退避所があるのかを確認。ハザードランプを点灯し、周囲に異常を知らせます。
まずはエンジンブレーキを使った減速を試みましょう。また、ゆっくりとパーキングブレーキを踏み込む(電動の場合にはパーキングブレーキスイッチを上げる)動作を行います。これで減速し、停止まで持っていければ停止してしまいます。
これでも止まらない場合は、緊急退避所へ突っ込むか、ガードレールなどに車をこすりつけてでも車を止める方法を実行するほかありません。
制御不能になった車を運転し続けることの方が危険です。止まれなくなったら、いかなる方法を使ってでも車を停止させることを念頭に入れ、慌てずに運転操作を続けていきましょう。
一般道で起きると危険!大事故になりかねない
筆者もサーキットでのスポーツ走行中にフェード現象に襲われたことがあります。コーナー直前でブレーキをかけようとペダルを踏んだら、床までスコンと抜けてしまうような状況でした。
路面は平坦路だったので、徐々に減速を行い、すぐにピットインして事なきを得ましたが、一般道の下り坂でこれが発生していたら、事故無く車を制御し止めるのは至難の業でしょう。
実際、2022年に静岡で発生した観光バスの横転事故、2013年にも大分で大型バスが事故を起こしていますが、いずれも長い下り坂でフットブレーキを多用したことによるフェード現象が事故原因と言われています。
フットブレーキの使い過ぎがフェード現象を引き起こします。長い下り坂では、エンジンブレーキを使うように注意喚起する看板がありますが、それはその場所でフェード現象が発生し事故が多発しているからとも読み取れるものです。
ブレーキの性能は年々高まっていますが、それでもフェード現象は起こる可能性があります。車の様々なブレーキをうまく使いながら、フェード現象を発生させないように注意して運転することが、安全への近道です。
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- 執筆者プロフィール
- Red29
- 1980年代生まれ。国産ディーラーでの営業職として働き、自動車関連の執筆者として独立。ユーザー目線に立った執筆を心掛けています。愛車はトヨタプリウス。ホットハッチに代表される、小規模小パワーのクルマが...