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なぜ消えた?かつてスポーツカーに搭載された“リトラクタブルヘッドライト”の真実
昔は多くのモデルに採用されていたにもかかわらず、現代では搭載されなくなった装備や機構の数は少なくありません。
かつてスポーツカーなどの多くのモデルに採用されていた格納式ヘッドライト、いわゆる「リトラクタブルヘッドライト」もそのひとつです。
スイッチ操作に応じ、ヘッドライトがボンネットからせり出すギミックは、当時の自動車デザインに斬新さと未来的な印象を与えていました。
しかし、近年の新型車ではすっかり姿を消しており、現在はクラシックカーや往年の名車でしか見ることができません。
いったいなぜ、リトラクタブルヘッドライトは姿を消すことになったのでしょうか。
リトラクタブルヘッドライトの成立背景となくなった理由

そして、「リトラクタブルヘッドライト」もそのうちのひとつです。
リトラクタブルヘッドライトは、使用しないときは車体内部に格納される機構です。
かつてはスポーツカーを中心に多くのモデルへ採用され、特徴的なデザインとして人気を集めました。
この仕組みは、低いボンネット高を実現しつつ当時定められていたヘッドライトの最低地上高規制を満たすための工夫として誕生したとされています。
また、リトラクタブルヘッドライトの登場により、スタイリングの自由度が広がっただけでなく、特徴的な自動車デザインのひとつとしても注目を集めたようです。
では、いったいなぜリトラクタブルヘッドライトは現代の車には採用されなくなったのでしょうか。
そもそも、リトラクタブルヘッドライトには、歩行者との衝突時に突出したヘッドライトが被害を拡大させるリスクや、可動部品が多いことによるコスト増などの課題を抱えていました。
そして、これらの課題を抱えたリトラクタブルヘッドライトに、二つの事情がとどめを刺したといいます。
まず、照明技術の進化によって高性能なヘッドランプが普及しました。
これにともない、配光技術の進歩でヘッドライトの前面レンズが垂直である必要がなくなったようです。
さらに、北米で最低地上高に関する制約が緩和されたことで、リトラクタブルヘッドライトを採用する必要がなくなりました。
こうした事情から、現在の新車でリトラクタブルヘッドライトの姿を目にすることはほとんどなくなっています。
リトラクタブルヘッドライトは今でも合法で、車検にも通る

新車では見かけなくなったものの、現行の保安基準にはいまも「格納式(収納式)」の灯火が定義されています。
つまり、要件を満たせば、リトラクタブルヘッドライトは車検に適合するというわけです。
具体的な要件には、故障時は工具なしで使用位置に保持・復帰できること、単一操作で展開と点灯がおこなえること、展開前に点灯しないこと、点灯操作開始から3秒以内に使用位置へ達することなどが挙げられています。
くわえて、通常の前照灯と同様に、ロービーム下縁500mm以上・上縁1200mm以下への取り付けや、幾何学的視認性を確保し、照射方向の初期傾斜や光軸調整といった基準に適合しなければいけません。
そして、格納・展開機構が適正に作動し、光軸や配光・取付位置などの技術基準を満たす状態に保つことも、車検通過の要件とされています。
リトラクタブルヘッドライトの車に合法的に乗りたい場合は、これらの要件を満たしましょう。
まとめ
リトラクタブルヘッドライトは、かつてスポーツカーを中心に数多くのモデルに採用され、特徴的なデザインとして注目を集めてきました。
しかし、照明技術の進歩や安全基準の見直し、歩行者保護の意識が高まったことなどを背景に、次第にその役割を終えていきました。
現在では新車に搭載されることはなくなりましたが、往年の名車に残されたリトラクタブルは、時代を映す自動車技術のひとつとして記憶に刻まれています。
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