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空冷エンジンの魅力は性能だけでは語れない?水冷との違いやオーバーヒート対策は?
目次
空冷エンジンとは?
空冷エンジンとは、外気を使って冷却をおこなうエンジンのことです。
エンジンに設けられた冷却フィンから熱を外気を放出にすることで、故障や性能の低下を防ぎます。
冷却フィンへ外気をどのように当てるかで「自然空冷式」と「強制空冷式」の2つに分かれます。
自然空冷式
冷えた空気は、熱せられると上昇気流となって上へ排出されます。この原理を使って空気を入れ替えるのが「自然空冷式」です。
熱せられたエンジンの冷却フィンが走行風などの外気に当たることで、十分に冷却できると見込まれる際に採用されます。
部品点数が少なくなるため重量が軽く構造も簡単になっていることから、オートバイなどのエンジンに使われることが多いです。
強制空冷式
強制空冷式とは、冷却ファンを用いて外部の空気を積極的に取り入れ、冷却フィンに常時外気を当てて強制的にエンジンを冷やす方式のことを指します。
自然空冷式に比べると複雑な構造になっていますが、その場に置いて使う発電機や周囲を鉄板などで覆われる自動車などでも、効率的な冷却が可能です。
現在はスクーターに多く使われており、自動車ではほとんどの車両で採用されていません。
水冷エンジンとの違いは?
空冷エンジンと水冷エンジンとの違いについて説明する前に、まずは水冷エンジンについて説明します。
水冷エンジンとは、水や冷却液を使用して、エンジン内で発生した熱を冷却するエンジンです。
水冷エンジンにはウォータージャケットと呼ばれる水路が設けられており、冷却水がそのウォータージャケットを通ることでエンジンを冷やす仕組みになっています。
水冷エンジンのメリット
水冷エンジンは空気よりも温まりにくい水を使ってエンジンを冷却するため、空冷エンジンよりも高い冷却性能をもっています。
自動車などで採用される水冷エンジンは、熱せられた冷却水を「ラジエーター」と呼ばれる装置で冷まして再び冷却水として使うため、安定した冷却が可能です。
また、冷却水がエンジンから発せられる音を遮音するため、空冷エンジンと比べると比較的静かになるメリットもあります。
水冷エンジンのデメリット
デメリットとしては、冷却水の通り道となる配管が必要になるため空冷エンジンよりも部品点数が遥かに多くなります。また、冷却水自体も車体に用意しなければなりません
そのため、空冷エンジンの車両よりも水冷エンジンの車両のほうが車重は重くなります。
また、冷却水を使うことが前提となっているため、冷却水が漏れてしまったりなどで少なくなってしまうと故障するリスクが高いという危険性があります。
空冷エンジンのメリット・デメリット
空冷エンジンのメリット
空冷エンジンのメリットは、水冷エンジンに比べて構造がシンプルなので軽量かつメンテナンスにも手間がかからないことです。
冷却水が通る配管も不要なので部品点数が少なくすみますし、ラジエーターや冷却水も不要なので車両を軽くすることができます。
製造はもちろん、維持にかかるコストも抑えることが可能です。
そのほかにも、空冷エンジン特有のエンジンサウンドや、エンジン本体に設けられた冷却フィンなどの造形美を楽しめるなど、性能以外の面で魅力を感じている愛好家は少なくありません。
空冷エンジンのデメリット
空冷エンジンのデメリットは、水冷エンジンに比べて冷却能力が低いことです。
夏などの気温が高い時期や渋滞などで走行風を得られないときなどは、エンジンを充分に冷やすことができず、性能の低下を招くほか、故障リスクも上がってしまいます。
そのほか、エンジンオイルの管理がシビアになったり、エンジン内部が歪みやすかったり、性能低下によって燃費が悪くなるなどのデメリットがあります。
公害問題も?
空冷エンジンの最大の問題は、公害問題です。
空冷エンジンは水冷エンジンと違い、エンジン本体の温度が安定しません。そのため、ガソリンを燃焼する温度にもブレが発生します。
燃焼温度が低すぎると炭化水素を大量に排出し、逆に高すぎると窒素炭化物(NOx)が排出されてしまいます。
どちらも排出ガス規制で指定されている有毒物質で、空冷エンジンはその排出を規制値内に収めることが難しいのです。
空冷エンジンのオーバーヒートについて
空冷エンジンは外気を使って冷却するため、新鮮な空気をエンジンに供給することが非常に重要です。
そのため、渋滞などでノロノロ走行を続けたり、長時間アイドリングを続けるなどで充分にエンジンへ新鮮な空気を送ることができないと、「オーバーヒート」が発生します。
オーバーヒートとは、エンジンの冷却が追いつかず、温度が異常に上昇する現象です。
カリカリという異音が聞こえたり、エンジンの回転数が安定しなかったり、アイドリングできなくなったり、エンジンが重大なダメージを受けたりといった様々な不具合の原因になります。
そのため、空冷エンジンではオーバーヒートを起こさないように、対策をしなければならないのです。
オーバーヒートは防げる?
空冷エンジンのオーバーヒートを防ぐためには、エンジンオイルの管理が非常に重要となってきます。
エンジン内部には潤滑のためにエンジンオイルが循環していますが、このエンジンオイルは水冷エンジンの冷却水のように、冷却の役割ももっています。
長期間使用したなどで劣化したエンジンオイルは、冷却効果が薄れてしまうだけでなく、潤滑効果も薄れて摩擦熱が発生し、さらにエンジン温度を上昇させます。
そのため、こまめなエンジンオイル交換や、冷却性能に優れたエンジンオイルを選ぶといった対策をおこなうことが必要です。
しかし、エンジンオイルをしっかり管理していてもオーバーヒートを完全に防ぐことは難しいです。
渋滞を避ける、長時間アイドリングさせないなど、車ではなく運転の仕方で対策をするしかありません。
もっとも効果的なのは、エンジンの冷却が間に合わないと感じたら、車を安全な場所に駐車して、エンジンも停止することです。
空冷エンジンに水を掛けるのはトラブルのもと?
水冷エンジンが水を使って冷やしているように、空冷エンジンも熱くなったら水をかければ良いと思う人は多いかもしれません。
しかし、熱くなった空冷エンジンに水をかけると、かえって故障を招く事態になりえます。
熱くなったエンジンは、見た目にはわからなくても熱膨張で体積が増えています。そこに水をかけると、水がかかった箇所は収縮、水がかかっていない箇所は膨らんだままに。
その結果、熱い箇所が冷たい箇所に引っ張られ、ヒビが入ってしまい、最悪の場合、エンジンに修復不可能なダメージを与えてしまいます。
そのほかにも、電気系統のショートを招いたり、吸気口からエンジン内部に水が入ってしまったりといったトラブルの原因にもなり得ますので、エンジンが熱くなったからといって水をかけるのは避けましょう。
- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...